シグナムプロ ハイペリオン 辛口インプレ フラットが安定するガット
2021年6月23日ピュアドライブVSにシグナムプロの「ハイペリオン(1.24㎜)」(Signum pro Hyperion)を50lbで張ってみました。
ハイペリオンは、ポリガットなのにスピン量は少ないですが、その分ドフラットに近いフラットドライブが安定しやすいと感じました。
フラットドライブのコントロール性を求めている方に対しおすすめのストリングです。
スペック
ハイペリオンは、シグナムプロから発売されている丸型のポリストリングです。
シグナムプロのストリングは、他社と比べてかなり価格が安いです。このハイペリオンは通販でロール(200m)を買えば、一張り500円以下になることも多いです。12mのものでも、1000円とかで買うことができます。金欠の学生にも優しいです。
色は、ブラックのみです。
太さは、1.18・1.24・1.30㎜の3種類です。
伸び量(とは?)は、0.725㎝です。(伸び量は多いですが伸びの特性的にそこまでたわみません。以下参照。)
インプレ
打感
フラットショット時のたわみ量は、[3.5/5]です。
スピンショット時の最大伸び量は、[5/5]です。
衝撃吸収性は、[4/5]点と高めです。
まず、衝撃吸収性については、高めだと思います。したがって、打感は柔らかめです。あまり衝撃吸収性が良くない、ピュアドライブVS・ピュアアエロVS・プレステージPROやMID・プロスタッフRF97(315gは違う)などのラケットでも、テニス肘になりにくいと思います。
次にドフラットで打った時ですが、「気持ち球離れが速いかな?」という感じです。ただ、ほんの少しなので分からない方も多いと思います。気にする必要はなく、これがコントロールの面でメリットにもなります。ガットのたわみ量ですが、ストリングマシンで引張ったときの伸び量の多さの割には撓まず、RPMブラストに近いような伸び量です。
次に思いっきり振り上げた時ですが、結構スナップバック量が多いです。気持ち球離れが速いのでヘッドのリンクスまでは行かないけど、かなり動きます。スペックのところにも書いてありますが1本の伸び量で言えばトップクラスで、ナイロンと同等クラスです。ただナイロンは摩擦コートしてるので、スナップバック量などは少なめです。
簡単に言ってしまうと、RPMブラストみたいな感じの特性です。こちらの方が最大の伸び量は多いですが。ストリングマシンで引張ると、一気に伸びた後にじりじりとゆっくり伸びます。
※伸び量の参考・・・ハイパーG=0.380、リンクス=0.690、RPMブラスト(1.20㎜)=0.550、エックスワンバイフェイズ(1.30)=0.750㎝(伸びの特性があるので、ストリングのたわみ量と一致はしません)
反発[3.5/5点]
平均より少し反発は強めです。
結構「高反発」という評価が多いですが、スピン量が少なく飛距離が伸びているからかもしれません。また、ドフラットで打てれば、同じスイングスピード(斜め上方向)でも水平方向のボールスピードが出るので。
スピン[1.5/5点]
スピンは、ナイロンの標準か少し少なめというとこですかね。ポリとしては結構少なめです。
スピンがかからないのはデメリットのように思えますが、このスピンのかからなさがフラットドライブの安定性を生んでいるのだと思います。
あんまりかからないのは確かですが、少しスイートスポットを外して下側で打つ(右利きフォアストロークの場合ラケットの3時側(トップを12時とした時))ことで多くかけることができるガットでもあります。
コントロール[4/5点]
コントロールは、4点としましたが、ドフラット近い感じで打った時は5点でも良いと思います。ただ逆にスピンをかけてアングルで落としたいとかになると、3点です。
どちらかというと繊細なコントロールというより、ボールの滑ってくるような伸びを出すタイプのガットです。
詳しく説明すると、フラットで打てば打つほど横のガットの弾きが強い(球離れが速い)ため、縦のガットの動き量が少ないため、安定します。逆に、縦方向に振れば振るほど、球離れが早くなくなるためガットのスナップバック量が極端に大きくなります。(伸びの特性的にこうなります。ブラストもです。)スナップバック量が多くなるとコントロールがしにくくなるので、スピンかけてアングルショットとかは少し丁寧に打つ必要があります。
コントロールは、良い点とそこまでよくない点がありますが、ここまでフラットのコントロール性が高いガットはあんまり多くないので、使ってみる価値はあると思います。何といっても安いですし。
ボールの伸び
滑ってくるようなボールの伸びは、フラットドライブが安定することから、出やすいと思います。
日本では、ボールの伸びは「スピン量だ」とかなってますが、高スピンの場合跳ねて打ちにくさはあるけど、滑ってくるようなボールの伸びはありません(2バウンドするまでの飛距離は長いが水平方向のボールスピードは遅い)。それだったらプロ選手は全員ピュアアエロ+ハイパーGを使うでしょうし。クレーだったら攻撃力が高いのでしょうけど、オムニだと少しでも浅くなればチャンスボールにしかなりません。また、ナダルが3000rpm後半の回転数(1分当たり3000回転以上)なのに対し、マレーは2000rpmとかです。
スピンが少ない方が摩擦による減速が少なく、2バウンドまでの飛距離は短くなるけれど、水平方向のボールスピードが速いです。女性のサーブが初速は遅く感じたのに、ボールが滑ってくるような伸びを感じるのが一つの証拠です。ナイロンガットの方がボールが伸びる(滑ってくるような)のもその証拠です。
テンション維持
テンション維持に関しては、長期(1カ月)のコントロール面で言うと、良い方です。ただ最初の一週間で打感が少し多く変化します。
まあポリガットなんて、一週間経てばだいぶコントロール落ちますからね。RPMブラスト(長期はあんまりよくない)なんて1週間ちょっとで伸び切ってしまって(ノッチも深くはない)コントロールするの難しそうなハードヒッターがいましたし。
そう考えると、学生は毎日使って一カ月は持たないと思うので、安いので一週間で張り替えるのも良いのではないでしょうか。部室とかにストリングマシンがあればですが。電動の安いのを買っても元は取れると思います。
ショット別インプレ
ストローク[4/5点]
何といってもフラットドライブのコントロール性の高さがあります。ハイパーGのようにスピンがかかりすぎてボールが伸びないということもありません。
欲を言えば引っかけて打ってしまった時にスナップバック量が多いことくらいですかね。メリットでもありデメリットでもあります。
ボレー[3/5点]
少し飛んでくれるのでよりコントロールを意識できアングルボレーとかは少しやりやすいのですが、それ以外は特筆することなしです。
サーブ[3.5/5点]
少し飛んでくれて、スピンサーブもスイートスポットで打ってしまうとかかりにくいけど、少し下側で打つことによってある程度は掛けられるので、3.5点です。
比較インプレ
シグナムプロ ポリメガフォース
【反発3点・コントロール4.5点・スピン2点】ポリメガフォースの方が伸び量の少なさがあるため、フラットドライブが安定します。特にポリメガフォースはフラットドライブがトップクラスに打ちやすいです。衝撃吸収性も悪くないのでおすすめです。
まとめ
シグナムプロの「ハイペリオン」は、フラットドライブのコントロール性に特化したガットです。
安いですしここまでフラットドライブのコントロール性が高いのガットは数少ないです。したがってかなりおすすめです。海外のサイトでも、数百ある中のポリガットから、人気順で11位に選ばれたガットでもあります。
一応、スピンは、「失点しないためにネットとボールのクリアランスを多く取るため」という目的があります。ただ、滑ってくるようなボールの伸びを出すのは、スピンが少ない方が良いです。ATP選手でも、メドベージェフがレーザーコード(アイスコードの噂もあったが)、チチパスが4G、ティエムがRPMパワーなどとスピンが少ないガットを使っていますし、横ナチュラルの、ズベレフ・ルブレフ・マレー(過去)らもナチュラルの摩擦で、縦ガットが少し動きにくくなっておりスピンは多くないです。ジョコビッチやフェデラーは縦ナチュラルでスピンがかけやすいと思いきや60lb前後とスナップバック量が少ないセッティングです。
おすすめな人
間違いなく「フラットドライブのコントロール性・伸びを求めている人」におすすめします。
逆に未経験や初心者が、スピンのかかりにくいラケット(特にピュアドライブ2021)では、少し安定感(ミスをしないという意味の)に欠けてしまうのかな?と思います。それ以外の方なら、試してみる価値はあると思います。結構酷評を書いてますが、これはお勧めできるガットです。
セッティング
一般的なラケットなら、1.24㎜を50lbとかでいいと思います。少しスピン量が欲しければ、メイン(縦)の方を2~3lb程度上げるか、クロスを下げれば大丈夫です。硬く張らない場合は同テンションの方がボールの伸びは出しやすいと思います。最大の伸び量が多いガットな上、フラットドライブのコントロール性が高いガットなのであまりローテンションはおすすめしません。
ピュアドライブ(2021)・インスティンクト(歴代)・プロスタッフRF97(V13)・ブレードシリーズ(V7)・ストリングが18×20本のラケットなどは、スピンが多くならないラケットなので、縦に対し横を少し下げる方が扱いやすいかもしれません。
ピュアアエロでフラットドライブのコントロール性に苦しんでいる方は、1.30㎜を50lbで張るのがいいかもしれません。
プロスタッフ97(315g)は、スピン量が割とかかるために、フラットドライブが安定しやすい唯一無二のラケットなのでかなりパフォーマンスが高くなるかもしれません。
類似ガット | +反発 | |
---|---|---|
+コントロール | ||
+スピン | RPMブラスト | |
+柔らかさ | アイスコード |
※アイキャッチ画像は、「テニスデポット」様より引用