1ページで完璧!ストリング(ガット)の適正テンション
2020年8月24日テニスラケットを張るとき、「適正なテンションはいくつなのか」分かりませんよね?正直に言って絶対的な正解はありません。そこでこのページでは、1ページ読むだけで、「ストリングの適正テンションの決め方」が完全に分かるように解説していきたいと思います。
高スピンかフラットドライブか
基本的に、ストリングを緩く張れば、反発とスピン量が増します。逆に硬く張ると、反発とスピン量は減りますがコントロール性と安定性が上がります。
ストリングのテンションの決め方で一番大事なのは、プレースタイルです。プレースタイルと言っても、スピンが多いほうがいいから、スピン量が多いセッティングにするのは、安易すぎます。しのぐストロークがあれば、攻めるストロークもあります。ボレーもあればスマッシュもあります。
単純に言えば、スピン量が多いセッティングの場合、フラットドライブ系の安定性の低下や伸びのなさが出てきます。逆にスピンが少ない場合、2rdのサーブの難しさ、スピンボールの攻撃力の少なさが出てきます。
では、詳しく解説していきます。
出せるボールスピード
反発力は、ローテンションで張るほど、上がります。一方高テンションで張ると下がります。
ただ、出せるボールスピードは、反発力の通りになりません。ローテンションで張ると以下で述べますが、コントロール性と安定性が低くなるため、スイングに多くの余力が必要です。逆に高テンションの場合は、コントロール性と・安定性が高くなるため、スイングの余力は少なくても問題ないです。したがって、単純に言うと出せるボールスピードはほぼほぼ変わりません。
MAXのボールスピードや、少し厳しいボールに対しては、高テンションで張ったほうが、出せます。
コントロール
スナップバック
まずスナップバックです。スピン量を決めるのは、スナップバックの力・ボールとストリング間に働く摩擦量です。スナップバックは移動量ではありません。
柔らかいストリングを柔らかいテンションで張った場合、スナップバックの量が大きいです。そのため、ボールとストリングの最初の接触点から、反発するまでに少し下側に滑り込みます。上の画像で言うと「slide」分ボールが下側に行くわけです。そうするとラケットの下側が押され、面が下向きになり、ボールがネットに直行します。ど真ん中で打った(最初の接触時)としてもスナップバックによりラケットの下側が押されるため、ネットになりやすいです。
つまり、スナップバックは、スピンをかけるのに必要ですが、同時にコントロールの乱れも生じさせるのです。したがって、高テンションで張ったほうがショットのばらつきが少ないため、繊細なコントロール(ラインぎりぎりだとか)がしやすいです。もちろん、ローテンションでも丁寧に打つことで、コントロール性&安定性のカバーはできますが、自身に余裕がない時だとか、相手からのボールスピードが速い&変化量が多い場合は、高テンションの方がミスが少なくなりますし、ボールスピードも出せます。
逆に、ストロークのドロップやアングルのパッシングショットなど、強打しない時はローテンションの方がホールド時間が長いため、コントロールしやすかったりします。
WTA(女子)選手が細ゲージ(1.25㎜)を60lbなど高テンションで張っている割合がコントロール性の証拠にもなると思います。ATP選手が比較的ローテンションなのは、100インチのラケットの使用率の低さや、ショットのネットとのクリアランスを高くし安定感を出しているためだと思います。
攻撃力
伸びのあるストロークは2種類あります。高スピンのエッグボールと回転が少なめのフラットドライブです。逆に伸びのないストロークは、スピン量が多めのフラットドライブ系ショットです。原理は上記のリンク先に記載してあります。
スピンによる攻撃力が欲しいなら、スピンセッティングにすれば良いと思いますが、相手が走れる人で上級者なら、まあまあ返されます。浅くなると絶好のチャンスボールになってしまいます。また、フラットドライブでも攻めていきたいですが、スピンセッティングの場合、スナップバックが大きいことから、フラットドライブの安定度が低いため攻撃力に欠けます。
したがって、ナダルはピュアアエロに、RPMブラスト(1.35㎜)[レビューを見る]を55lb程度と、テンション自体は60lbとかではありませんが、1.35㎜とかなり硬く(スナップバックが小さい)張って安定性を出しています。(スピンはラケットの振り抜きやすさ(垂直方向のみ)でかけています)
逆にフラットドライブの場合、少し高テンションで張ることで面ブレを起こすスナップバックが小さくなるため伸びのあるボールはバンバン打てます。スピンをかけないことでバウンド時の減速量が少ないため、バウンド後の水平方向のボールスピードが速いので「伸び」を感じます。
※スピン量の少ない「エクセル(1.35㎜)」を高めのテンションで張ってもらえば分かると思います。
しかしやりすぎると、2rdサーブやエッグボール(ミスしたくない時に使う)など回転が欲しいところで、回転量が足りなくなってしまいます。
つまり、どちらかに極端にはできず、ある程度の妥協が必要です。この妥協点は、プレースタイルや求めるものによって変わります。
縦ナチュラル・横アルパワー[レビューを見る]なら、スピンとパワーとコントロール性が、高次元で両立できるので理想です。逆に縦アルパワー・横ナチュラルにすることで、ナチュラルの摩擦の影響でスナップバック力&量が減るため、スピン量は減りますが、フラットドライブの安定性は高いです。
ストリングによる違い
ゲージによる違い
ストリングのゲージが、1.20・1.15・1.10㎜などと細くなればなるほど、反発性とスピン量が上がります。打感的には、細いゲージは、一気にたわんで、一気に弾きだす感じです。特にポリですが、ストリングの摩擦が少ない(接触圧力が少ないため)ため衝撃吸収性は低めです。
逆に1.30・1.35㎜などと太くなればスナップバック量が少なくなるため(ストリングの伸び量が少なくなる)、コントロールが良くなります。ホールド時間はストリング同士の摩擦の影響で、伸び量の”割”には少し長くなります。弾き感も控えめになります。
掴んで弾くというフィーリング的には細ゲージですが、衝撃吸収性は太ゲージです。
基本的にアルパワー[レビューを見る]やハイパーG[レビューを見る]など(伸び量の少ないもの)以外で、高反発ラケットなどストリング間隔が粗いラケットの場合は、高テンションで張らない限りは、1.30㎜を張ったほうが、コントロールがしやすいと思います。ボールスピードも出し易いでしょうし。
ストリングそのものの違い
ナイロンは全体的に、ホールドして弾きだす感じです。また、スピン量は多くありません。スナップバックが起きにくいことから、面ブレしにくいです(ポリより)。スピン量も少ないので少しテンションを上げて安定性を出す人が多いです。
逆にポリは、ナイロンと比べ打感がしっかりして(打ちごたえがある)います。スピンが多くかかるストリングがある反面、面ブレが起きやすく、ボールスピードが出せなかったり、ボールの伸びが出せなかったりしやすいです。
ナイロンは、他メーカーでも割と均一な性能ですが、ポリは、「柔らかい・硬い」、「弾く・弾かない」、「スピン量が多い・少ない」「スピンがかってにかかってしまう(打ち分けにくい)・フラットとスピンを打ち分けられる」など、非常に個性が豊富で、張ってみなければ適正テンションはわかりません。好き嫌いもはっきり分かれます。口コミを頼りに張ってみても、自分では全く違う感想になることもあります。
ハイパーGなどは、伸び量が少なくコントロール性が高いため、40lbで張っても打てます。逆にブラックコード(1.24㎜)など伸び量が多いのは、50lb(目が粗いピュアドライブVSを使ったのが悪いのですが)でも使えませんでした(面ブレのオンパレード)。60lbでもコントロールが難しそうです。
適正テンション
適正テンションは、使うプレイヤーが求める「スピン量」「コントロール」「反発」などでも変わりますし、ストリング自体の「スピン量」「コントロール」「反発」で変わります。したがって、調節が必要です。
テンションの目安
最初の基準として、男性50lb・女性45lb基準としてみてください。
そこから以下の条件で変動させています。
年齢・筋力
学生並の筋力の場合+5lb、50代以上の筋力の場合は-5lb。
ラケット
ストリング間隔が粗い、ピュアアエロ・エクストリーム・VCORE・バーン・ピュアドライブなどの場合は、+3lb。
ストリングの太さ
1.25㎜を基準に、0.05㎜太くなれば-3lb・細くなれば+3lb。
ストリングの硬さ
ナイロンの場合、ストリングの摩擦が多くスピンがかかりにくいためフラットドライブになるため、ポリよりは少しテンションを上げる(コントロールを上げる)のが一般的です。逆にポリは打感が硬いため少し下げます。したがってポリの場合-3lbしてください。
ハイパーGやアルパワーなどかなり伸び量(打感の柔らかさではなく)が控えめなストリングの場合-5lb、逆にブラックコードやリンクスなど伸び量が多いストリングは、+5lb。
特にポリは、非常に個性が豊かなため、個々で調整するしかありません。
ローテンションのデメリット
巷では、「ローテンションがトレンド」だとか言われていますが、ローテンションにすることによるデメリットがあるため、運動ならいいですが、競技者なら、コントロール性の高いストリングを使うか、硬めに張ることをおすすめします。
プロがローテンションにするのは何かを補うために意図的にテンションを変えているだけで、デメリットもあります。
ローテンションは、ストリングの安定性が低く(ものにもよる)、走って打つショットなどの余裕がないショットや、高い打点のショットなどが、安定しにくくなります。その証拠に、ミクロスーパーなど高摩擦ストリング(スナップバックしにくい)を使ってみれば分かりますが、フラットドライブの滑ってくるようなボールの伸びや、低軌道の滑ってくるようなボールの伸びのあるスライスの安定性が高いです。逆に柔らかい多角形を使うと難しいと思います。
なら「高摩擦ストリングを高テンションで張れば良いの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これも違います。テニスにはネットがあるため、安定感を出すにはスピンが必要ですし、サーブもスピンがかかることで2rdの攻撃力を出せます。
したがって、高テンションで張ることのコントロール性と、ローテンション(スピンがかかる)による安定性のバランスをとることが大切なのです。
ATPでグランドスラムを優勝している、ジョコビッチ・フェデラー(97使ってから)・マレー・ワウリンカ・デルポトロは60lb前後です。ナダルも現行モデルのピュアアエロより目が細かい2005年モデルを使っていますが、1.35㎜を55lb前後です。ティエムも55lbですが、高摩擦コーティングされたポリなので少し特殊です。
まとめ
どのくらいのスピン量・パワー・コントロール性が欲しいのかで、適正テンションが変わります。