ピュアアエロがトッププロ選手に選ばれる絶対的な理由
2021年2月2日シングルスの使用割合(男子)が多いラケットは、ウィルソンの「ブレード」ですが、ダブルスは、バボラの「ピュアアエロ」が圧倒的なシェアを占めています。
ではなぜ、ピュアアエロが選ばれるのでしょうか?それは、ピュアアエロにしかない圧倒的なアドバンテージがあるからです。「スピン量が多い」ことも良い点ですが、スピンを生む原理にはデメリットもあり、単にスピン量が多ければ良いというものではありません。
ピュアアエロは、ブラアン兄弟が使っていたプリンスのプロストックを除けばダブルスの最強ラケットだと個人的に思っています。
ピュアアエロのスペック
まず、軽くスペックだけおさらいしておきましょう。
ベースのモデルが重量が300g・バランスポイントが320㎜・ストリング本数が16×19本・フレックスが71(メーカー公表値(テニスウェアハウス調べだと67))です。
ピュアアエロのアドバンテージ
三角形のシャフトによるスピン
ピュアアエロの圧倒的アドバンテージは、シャフト(スロート)が三角形のところにあります。スロートを三角形にすることによって、縦振りの時のスイングスピードが上がります。
通常スピンを多くかけたい時、「縦方向のスイングスピードを上げる」・「ストリングを緩く張る」・「回転がかかるストリングにする」という3つの選択肢があります。
「回転がかかるストリングにする」のは、簡単に言えばハイパーG等の多角形ストリングにすれば良いのです。しかし、多角形ストリングは、回転がかかる反面、フラットドライブなど低軌道のショットを打ちたい時、意図しない引っかかりが出てしまいアウトミス(ボールが上に飛んで行く)などが数多くでてします。回転をしっかりかければ安定しますが、ループ状に飛んで行くボールの場合、ボールの実速度は速くても、水平方向の速度は速くなく、対戦相手に拾われやすくなります。※特にシングルス
次に「ストリングを緩く張る」ですが、これも多角形ストリングと同じような理由です。緩く張ることでスナップバックが大きくなり、意図しない引っかかりが出やすくなります。
「回転のかかるストリング」・「緩く張る」の2つが駄目で、残りは「縦方向のスイングスピードを上げる」です。
プロスタッフのようにフレーム厚を薄くしたり、プレステージMidのようにフェイス面積を小さくすれば、スイングスピードは上がります。
しかし、ワイパースイングなどを使い縦振りの速さでスピンをかける場合、ラケットヘッドスピードが速い上、ボールの軌道と垂直に近い軌道で振る必要があり、スイートエリアを外すことが、フラット打ちよりかなり多くなります。したがって、フレーム厚が薄くなると、スイートエリアを外した時にボテボテのボールになりますし、フェイス面積が小さければ、スイートエリアが小さい上、縦振りした時フレームの内側に当たることも多くなってしまいます。
したがって、ある程度のフェイス面積・フレーム厚が必要になります。ただ、当然ですがフレーム厚が厚くなればなるほど、振り抜きが悪くなります。そこで、シャフトを三角形にし空気抵抗を軽減することで、ストリングが生み出す回転量が少なくても(フラットドライブの安定性が高いセッティングでも)縦振りの速さでスピンを多くかけられるのです。
三角形のシャフトによる安定性
縦振りの速さでスピンをより多くかけられるの言いましたが、ワイパースイングなどを利用して、縦振りを早くするほど、スイート“スポット”(エリアではなく)を外しやすくなります。テニスラケットはボールとの接触位置がスイートスポットから遠ければ遠いほど飛ばなくなります。この現象はフレーム(特にシャフト)が柔らかい(しなる)ほど顕著です。
したがって、スピンを思いっきりかけても(スイートスポットを外しても)、安定して飛んで行くように、シャフトを剛性の高い三角形にしています。
RA67だと柔らかいように感じますが、シャフトは間違いなく硬い(ほぼしならない)です。逆にラケット先端で打ってしまった時の硬さを軽減するため、ラケット先端は柔らかくなっています。
ピュアドライブはRA71(テニスウェアハウス調べ)ですが、全体的(シャフト&フープ部)にしなるようになっています。ピュアアエロよりフェイス面の安定性が高く、最強反発と呼ばれる反発になっています。
ストリング間隔
ピュアアエロのストリング間隔は、中心とフレーム側のストリングの幅が、だいたい等間隔に配置されています。それにより、縦のスイングスピードを上げてスイートエリアを外してしまった場合でも、中心と同じくらいの引っかかり量になり、安定してエッグボール(スピン量が多い低めのロブ)が打てるようになっています。
フレーム側が若干広いのは、等間隔に配置してしまうと、ストリング自体のたわみ量が少ない影響で、引っかかり量が少なくなってしまうからです。
逆にピュアストライク18×20やヘッドのスピードMPなどは、中心付近のストリングの間隔が狭く、フレーム側のストリングの間隔が広くなっています。したがって、意図的に少し端側で打つとスピン量は増やせますし、中心の安定性は高いですが、意図しない引っかかりも生まれやすいです。
反発
スピンをかけるために縦振をしたいのですが、基本的に縦振りをすればするほど水平方向のスイングスピードが落ちます。したがって、ある程度の反発力のあるラケットが必要になります。ある程度の反発力があることで、水平方向のボール速度を確保することができます。
ピュアアエロのショット別メリット・デメリット
ストローク
ピュアアエロは回転に特化しているため、回転を多くかけ、高く跳ねて取りにくいボールを打つことが容易です。これはハードコートやクレーコートで大きなアドバンテージになります。また、左利きプレイヤーが使うと圧倒的なメリットになります。また、エッグボールを深く打つことで、「相手をコートから追い出し、自分たちが前に詰めて、仕留める」という戦法がダブルスでは非常に効果的です。
ただ、フラットドライブの安定性が低く、一発の攻撃力は、比較的少ないため、ラリーが長く続くことが多いです。また、斜め上に振るとき、上側のスロートが平面で空気を切り裂いていくため、取り回しはよくないです。
ここに詳しく書いてありますが、ボールが滑ってくるような伸びは、スピン量が多いと出せません。オムニコートだと逆に減速量が多い上、少し跳ねてくれるため、「ボールが軽く」なりやすいです。もちろんボールスピードが速ければ、コート内を移動している間の総回転量は少なく、伸びを感じることができます。
したがって、フラットドライブで打つより、縦振りしてエッグボールを打った方が攻撃力は高いです。
ボレー
シャフトの剛性から、相手が打ってからの時間が少なくスイートエリアを外しやすいボレーでも、比較的安定します。また、反発も飛びすぎず飛ばな過ぎずです。
サーブ
フラットサーブの精度は、18×20本などストリング間隔の狭い方が良いですが、パワーもそこそこあり回転量も多いラケットなので、スピンやスライスサーブなどの攻撃力が高いです。
その他
ピュアアエロは、ストリングが動きやすいラケットのため、ストリングを適当に選ぶと、意図しない引っかかりが出やすくフラットドライブが安定しずらくなります。
したがって、硬い(伸び量が少ない)けどホールド時間が長いストリングがベストです。スポンサー上の都合もありますが、ナダルはRPMブラスト【インプレを見る】の1.35㎜と極太ゲージを使っています。一時期ルキシロンの「オリジナル(1.30㎜)【インプレを見る】」を使っていたがスポンサーの都合上NGだったみたいです。一応ブラストは、打ちごたえはありますが少し柔らかめ(※競技としては)で、コントロール性能は平均的です。
まとめ
ピュアアエロは、スロートを三角形にすることで、安定性を出しつつ、スピン量が多くなっています。
ダブルスで多く使われている理由は、シングルスより走って打つことが少なく、ブレード18×20等の安定性より、ボレーの安定性と足元に落としたい時のスピン量を求めているからだと考察できます。
ただフラットドライブの安定性は、コントロールモデルと呼ばれるモデルより低いため、コントロール性の高いストリングを使ったり、エッグボールなどの攻撃力の高いショットを身に付けることで、ピュアアエロのアドバンテージを活かすことができます。