同じストリングパターンでも間隔が違えば別物のラケットになる理由

同じストリングパターンでも間隔が違えば別物のラケットになる理由

2020年6月11日 0 投稿者: gura

 テニスラケットのストリング(ガット)パターンは同じ(例:16本(縦)×19本(横))だとしても、ラケットの種類やメーカーが違えば、打球感や打った後のボールの質が大きく異なります。これは中心と端部分のストリングの目の粗さ細かさの違いが大きく影響しているからです。


 このページではストリング間隔の違いにより、何がどう変わるのかを解説してまいります。





 ストリングの目の粗さによる特徴

目が細かい 目が粗い
反発
弱い
強い
コントロール性
良い
悪い
スピン性能
少ない
多い
打球感
しっかり
やわらかい
ホールド感
少ない
多い
ボールの持ち上がり
上がりにくい
上がりやすい

 他にも、目が細かい場合(()内は目が粗い場合)、相手のスピンの影響を受けにくい(影響を受けやすい)、空気抵抗が大きい(小さい)等がありますが、影響は少ないので割愛させていただきます。

 ・反発は、目が粗い方がストリング同士のの抵抗が少なくしっかり伸びるため、高いです。
 ・コントロール性は、目が細かいほうがストリング全体で撓んでくれるためボールが乱れにくいです。またスナップバックが小さく、スナップバックによる面ブレが少ないです。そのためネットすれすれを通すことができます。(以下のリンク先に記載)
 ・スピン性能は、目が粗いほうが抵抗が少なくスナップバック現象が働くため、スピンがかかりやすくなります。
 ・打球感は、目が粗いほうが柔らかくなります。
 ・ホールド感は、目が粗いほうが長くしっかり感じ取れます。
※出せるボールスピードは、反発・コントロール性・安定性で決まります。

 
 基本的にこれらの特徴は、二面性です。スピンがかかりすぎてボールが短くなる場合や、フラット系のボールの伸びが欲しい場合は、かかりにくいストリングパターンにしすることで解決します。打球感が柔らかすぎる上ホールド時間が長すぎるなら、目の細かいストリングパターンにすれば改善されます。コントロール性を失ってもパワーやスピンが欲しければ、目の粗いものにすれば良いです。

 基本的に、スピンをかけて打つ人は粗め、伸びのあるフラットドライブ系を打つ人・安定感が欲しい人は細かめを選ぶ傾向が多いです。



 ストリング本数による違い

 一般的なストリング本数は、16本(縦)×19本(横)です。少しコントロール性能を上げた16本×20本や、かなりコントロール性能を上げた18本×20本、ウィルソンのスピンモデルの18本×16本、パワーを求めた14本×16本などもメジャーでは無いですが、発売されています。

 
 当然ストリングの本数が増えれば増える程、目が細かくなりコントロール寄りになっていきます。逆に少なくなれば少なくなるほど、目が粗くなりパワーやスピン寄りになっていきます。

 ただ、「ストリング本数が多い=コントロール性が高い=良い」とは必ずしもなりません。基本的にストリングの目が細かいほど、ボールの軌道の精密さを出すことができます。ただ、一定量のスピン性がなければネットとのクリアランスを多くとることができず、安定性が低くなります。そこでストリングの目を細かくする代わりに、フレームのしなりを出すことでホールド時間を長くし、スピン量を増やしています。



 フェイスサイズによる違い

 ストリングの本数が同じ(縦16本×横19本など)の場合、フェイスサイズ(ストリングが張ってあるところの面積)が大きければ大きい(120平方インチなど)ほど、ストリングの目が大きくなりパワー・スピン寄りになります。

 逆に小さければ小さいほど(90平方インチなど)フラットでコントロールよりになります。


 条件

 上記の特徴について条件があります。それはラケット自体の様々な性能です。

 フェイス・スロート部分のねじれや、フレームの縦(包丁持ちした時の上下)のしなり、順フレックスと呼ばれる打球方向のしなり、グロメットホールの形状など様々な要素があり、それによって、柔らかさはもちろんですが、パワーやスピン量など様々な要素が変わってきます。

 バボラのピュアアエロなどのスピン系ラケットは、ストリングは柔らかいのですがフレームが硬いため、打感が少しだけ硬く(メリットを出したがゆえの副作用)感じます。




 各種ラケットによる違い

ヘッドHPより引用

 上のラケットは、ヘッドのエクストリームMP(左)、スピードMP(中)、インスティンクトMP(右)です。一例としてこの3本をピックアップさせていただきました。すべてフェイスサイズが100インチのラケットで、エクストリーム・インスティンクトはフレーム最大厚が26㎜、スピードが23㎜です。

 まず、ストリング間隔が、エクストリームは全体的に広く、スピードは中心が狭く端が広い、インスティンクトは全体的に狭いことが画像より見て取れると思います。

 エクストリームは、他のラケットと比べ、中心のストリング間隔が広く、フレーム側のストリング間隔は、狭いです。中心付近ではスナップバックが起きやすいため、スピンがかかりやすいです。また、スイングが縦振りのことが多く、スイートエリアを外しやすいため、端側の間隔を狭くし、スナップバックによる引っかかりのムラ軽減しています。フレームは硬めに設計されていますがストリングのたわみが大きいため、柔らかい打感(スピン系なので少しだけ固め(しっかりした))・パワー・スピンを求める方に最適です。

 スピードは、中心の間隔が細かく、端の間隔が広いです。したがって、中心でとらえられた時のコントロール性が高く、フラットドライブでネットギリギリを狙っていけます。端に当たってしまった時は、打感が柔らかい上飛んでくれる(ストリングの目が粗いため)のですが、スナップバックによる乱れが生じやすいです。わざと端に当ててスピン量を増やすこともできます。また、スピンサーブやスライスサーブをフェイスの端側で打つと、かなりの回転がかかります。

 インスティンクトは、全体的にストリングが中心に寄っています。このことにより、少し外して打っても、(スピードよりは飛びが控えめですが)コントロール性からしっかり返球できます。スナップバック量も少ないためコントロールの乱れが少ないです。したがって、フラットドライブのコントロール性が非常に高いです。ストリングの目が細かい(フレームのしなりも多い)とパワーは落ちるのは確かですが、エクストリームよりコントロール性が高いため、水平スイングができます。つまり、水平方向のボール速度は変わりにくいです。

 
 テニスラケットは、「飛びすぎるから飛ばないラケットを選ぶ」ではありません。コントロール性を高めた(ストリング間隔を細かくした)結果が、飛ばなくなってしまっているだけです。コントロール系のラケットは、コントロール&フィーリングを残したまま、高反発になるように日々研究されています。