テニスのグリップが厚い・薄いの違いと選び方 ストローク編
2020年6月9日皆さん、テニスでのグリップを握るとき、厚い握りですか?薄い握りですか?また、厚い握りと薄い握りの特徴を理解していますか?正直、「これ」といった絶対的な正解が無く、多くの初心者の方々は悩んでいると思います。
そこで、このページでは、ストロークにおいて、グリップの握り方を薄く(主にコンチネンタルグリップ)した時のメリット・デメリット、グリップの握り方を厚く(主にウエスタングリップ)した時のメリット・デメリットを紹介し、どう握れば自分の一番適しているグリップの握りになるのかを、紹介していきます。また、上級者のための応用も紹介します。
グリップ握り方の種類
グリップの握り方の種類として主に、
・包丁のように持つ、「コンチネンタルグリップ」
・コンチネンタルグリップから、ラケットを30度ほど左(反時計)に回転させた「イースタングリップ」
・さらに30度左に回転させた「セミウエスタングリップ」
・ラケットを地面に置いて真上から持った「ウエスタングリップ」
の4つがあります。グリップの写真
※あくまでグリップの握りは分かりやすいように(主に)4種類に分けているだけです。したがって、イースタングリップとセミウエスタングリップの中間・若干イースタングリップ寄りのコンチネンタルグリップなど、無限の握り方があります。
グリップの厚いと薄いによる特徴
薄く握る(コンチネンタルグリップ寄り)
グリップを薄く握ると以下のようなデメリット・メリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
ボールスピードが速い | スピンがかかりにくい |
リーチが長い | 安定しにくい |
省エネ | 力強いボールに負けやすい |
低い打点が楽 | 高い打点が大変 |
グリップチェンジ量が少ない |
メリット
まず一番のメリットは、ボールスピードが速いことです。ボールを打つとき体の中心を軸として打ちますが、薄いグリップの方が回転軸(体の)から離れているため、厚グリとスイングスピードは同じでも、ボールの当たる位置のスピードが上がります。(角速度の原理(回転運動は同じ回転量の場合、距離が2倍になれば先端の速度も2倍になる))その結果ボールスピードも上がります。
二番目のメリットは、リーチが長いことです。走るのが速くなくても、ボールに追いついて打つことができます。
三番目のメリットは、省エネです。リーチが長いことで走る量も少なくなりますし、厚いグリップの場合体をしっかり回さないと打てませんが、薄ければ手のスイングだけでも打てます。体力の消耗が少し少なくなります。
他にも、持ち方的に低いボールを打ちやすかったり、グリップチェンジ量が少ないため一瞬でグリップチェンジができるなどのメリットがあります。
デメリット
逆にデメリットは、安定性の問題一番大きいです。打つ方向に対し手首が動きやすいため、よく言えばスナップを使って打てるのですが、スナップの角度をほんの少しずれるだけで、左右や上下にボールが乱れます。また、オフセンターショットなどしたときも、手首の固定力(筋力)が少ないので、面ブレを起こしやすいです。
また、手首ひねってで擦るように打つ(ワイパースイング)ことができないため、スピン量は多くしずらいです。スイングスピードが速い人がハードヒットした場合のおさまりが悪いと感じるかもしれません。ただ逆に、スピン量が少ない分ボールの伸び(滑ってくるような伸び)が良かったりします。
他には、強いボールが来た場合手首が持ってかれますし、高い打点だと力が入りにくいです。
薄グリップの特徴をまとめると、
「省エネでパワーが出るが、コントロール性・安定性が難点」
となります。丁寧に打ちたい人向けです。
厚く握る(ウエスタングリップ寄り)
厚く握った場合のメリット・デメリットは、薄く握った場合のメリットとデメリットの反対になります。
メリット | デメリット |
---|---|
スピンをかけやすい | ボールスピードが出にくい |
安定しやすい | リーチが短い |
力強いボールに負けにくい | 非省エネ |
高い打点が楽 | 低い打点が大変 |
グリップチェンジ量が多い |
また、ウエスタングリップ限定ですが、グリップチェンジした時のわずかなグリップのずれが、他の握りと比べて少なくなります。
厚めのグリップは、ワイパースイングといって、手首を使ってスピン量を増やすことができます。フラット系の伸びのあるボールは、スピン量を落とす必要があります。そこで、ラケットとストリングのセッティングを、コントロールより(スピンがかかりにくい)にし、スピンをかけたい時はワイパースイングや振り上げるようなスイングを使うことができます。つまり、フラット系とスピン系の使い分けが楽にできます。
厚グリップの特徴を簡単にまとめると、
「体力とスイングスピードが多く必要だが、安定性が高く、強いボールにも打ち負けない」
です。 まとめ
薄く握るのと、厚く握るのの特徴を紹介しました。イースタングリップの場合は、薄く握り要素が67%・厚く握る要素が33%かけ合わせた感じになります。セミウエスタングリップは逆で、薄く握る要素が33%・厚く握る要素が67%になります。
グリップの握り方の選び方
フォアハンド
では、グリップの握り方の選び方(フォアストローク)の紹介をしていきます。
・速く走れるか
・体力があるか
・スイングスピードが速いか
主にこの3つが、グリップの握り方選びの基準になります。
この3つの条件を全部満たしているならば、ウエスタングリップかセミウエスタングリップ、逆に全部満たしていなければ、イースタングリップが一般的には良いです。なぜコンチネンタルではないかというと、コンチネンタルの場合打ったときの衝撃で手首が動きやすすぎて、コントロールが乱れやすいからです。相手のボールスピードが速い場合も、グリップを厚く握ったほうが良いです。
さらに場合分けしていきます。
男性の場合、~35歳程度ならウエスタングリップorセミウエスタングリップ、40歳~50歳程度ならセミウエスタングリップ、60歳~ならイースタングリップで問題はないと思います。
次に女性の場合、~35歳程度ならセミウエスタングリップ、40歳~ならイースタングリップで問題ないと思います。
一般的というだけで絶対ではありません。また条件として、上記は平均的な運動能力の場合の握り方で、テニスの経験年数が長い場合や運動能力によって握り方は変わります。該当しない年齢の場合、どちらでも構わないです。さらに、相手のパワーレベルによっても適正は変わります。
また、コートの種類でも変わり、
オムニコート(砂入り人工芝)の場合は球速も速くなく、バウンドも低すぎず高すぎずなので、セミウエスタンぐらいが楽だと思います。少し筋力がない方はイースタングリップで。
逆にクレー(土)の場合は、球速は遅いですがバウンドが高い(跳ねる)ので、ウエスタンやフルウエスタンなどと、少し厚め方が楽です。
ハードコートは、オムニとクレーの間位です。
カーペットコートや天然芝の場合は、バウンドがかなり低く(球速はかなり速い)、フルウエスタンなどの厚すぎるグリップは少し窮屈なので、球速が速くても負けないセミウエスタンが良いと思います。
上記は参考です。20代の男性がイースタングリップを使ってはいけないかということはなく、自身の能力や求めるもの(上記のメリット・デメリットを参照)に合わせて選んでください。また、ラケットとストリングのセッティングでも変わってくるので、知識がある方に相談していただけると良いと思います。また、自分から少し打っていきたい場合、少し厚めのグリップが良いです。
ジュニアの場合、どうしても身長に対してボールのバウンド後の高さが高い(グリーンボールなどではなく一般球を使う場合)ので、ウエスタンよりもっと厚い「フルウエスタン」など、高い打点に対応できるようなグリップが良いと思います。薄いイースタングリップなどの場合、高いボールに対してトップスピンをかけるのが非常に難しくなります。
※プロの場合男性はウエスタングリップ前後、女性はセミウエスタングリップ前後が多いです。プロと一般人ではパワーが違うと思いますが、技術力も体力もあります。パワーとコントロール能力、体力などのバランスが取れているのが、その握り方だと考えられます。年齢が同じくらいなら、同じ握り方、年齢が高ければ薄い握り方が、おすすめです。(あくまで多いだけであって、ガスケがイースタン(後ろから打ち抜くタイプなので薄め)だったり、女子選手もウエスタンより厚いフルウエスタンの選手もいます)
バックハンド
両手バックハンドの場合、右手はコンチネンタル、左手はイースタンかセミウエスタン (左利きは逆) がおすすめです。
基本的にバックハンドは、フォアハンドよりパワーが出にくいです。そのため、少し薄めの握りが良いです。そうすることで手首のスナップ(しなり)を使えパワーが出ます。コントロール性については、右手のアシストがあるため大きくは乱れません。
基本的に左手はイースタンをお勧めしています(特にオムニコート(砂入り人人工芝))。その後スピン量や安定感が欲しければ飛びは弱くなりますが、セミウエスタンをお勧めしています。
ハードやクレーコートの場合、バウンドの高さが高く必然的に高い打点で打つことが多くなるため、セミウエスタングリップもお勧めしてます。
片手バックハンドの場合、一番のおすすめはイースタンとセミウエスタンの中間位です。
片手バックはパワーがあることが多く、スピン量も求められます。
イースタンより薄すぎると、スピン量が少なくなってしまいますし、ブレも出やすく(打ち負ける)なります。高い打点も力が入りにくくなります。
逆に、ウエスタンになってしまうと、打点が前すぎて振り遅れやすくなったり、低いボールの処理が難しかったりします。
プロもウエスタンより厚い人や、イースタンより薄い人は少ないです。セミウエスタン~イースタンの間がほとんどです。もっと簡単に言うと、ラケットを刀のように左手で左腰(左利きは右腰)につけ(面の向きは左右)、抜刀するかのように握った持ち方が一番です。
グリップの握り方の応用
上記では一般的な人向けのグリップの握り方について紹介しましたが、ここからは初心者にも上級者にも使える応用編です。
まず、上記ではグリップの握り方分かりやすいように4つ紹介しましたが、イースタングリップとセミウエスタングリップの間や、セミウエスタングリップとウエスタングリップの間などなど、握り方は無段階にあります。
コントロール性を高めたい場合、ほんの気持ち厚めに、パワーが欲しければほんの少し薄めに、変えて打つこともできます。
ネットミスが多い場合、薄い握りにすることで、同じスイングでもボールが上に飛んで行きミスが減ります。逆にアウトミスが多い場合、厚い握りにすることで、ボールが上に飛んで行かなくなり、ミスが減ります。
スピン量が多すぎてベースライン(コートの奥)まで届かない場合、スピン量を抑えるために薄く握り、逆に、ネットやアウトのミスが多い場合、厚く握りスピン量を増やすということもできます。
上級者向けですが、テニスボールは、メーカーや気温により飛びが違います。飛ぶ場合スピン量を増やすため厚く、飛ばない場合威力を出すために薄くと、その場面・状況に合わせることもできます。
また高反発系ラケットは、手首を思いっきり使いワイパースイングをしてしまうと、スナップバック量が非常に多く面ブレを大きく起こしやすいです。さらにコントロール性が良くない(飛びとは別)ため、しっかりタイミングを取って丁寧に打つ必要があります。したがって、手首の可動域を抑える(ワイパースイングの)ためと、しっかりタイミングを取るために薄めのグリップを選択するという考え方もあります(薄いグリップは打点が後ろになるため打たないといけないときまでの時間が長い)。
まとめ
基本的には、握りが薄くなるほどパワーは出ますがスピン量が落ちます。逆に握りが厚くなれば、パワーは出にくいですがスピン量が多くなります。
フォアハンドの場合、フェデラーはイースタングリップ・ナダルはセミウエスタングリップ・ジョコビッチはウエスタングリップ・錦織はフルウエスタングリップ程度です。また、クレーが強い選手は少し厚めのグリップで、天然芝が強い選手は、薄めのグリップが多いです。
単順に、球速・コントロール性・安定性を出したい場合は、グリップテープにこだわったほうが良いです。巻きたてと摩耗しきっているのグリップテープでショットを比べると、明らかに質が違います(プロオーバーグリップは初期の摩擦が非常に強いためおすすめです)。