スナップバックとは メリット・デメリットも解説
2020年8月20日テニスにおけるスナップバックとは何かご存知でしょうか?簡単に言えば、スピンをかけるためのストリングの動きです。
スナップバックは、ずれてからのストリングの戻る現象を示し、スナップバックが強ければ、スピンがかかりやすくなります。逆にスナップバック量が大きくなりすぎると、デメリットの方が大きくなります。
このページではスナップバックのの詳しい解説をしていきます。
スナップバックとは
スナップバックとは、ボールを打った時、縦糸(ストリング)が動きますが、それが戻るときの動きです。
こちらが、スナップバックが起きているときの動画(ナイロンストリングにミラフィットという潤滑剤を塗ったもの)ですが、ボールがストリングを押し下げているのが分かると思います。下がったところで、ストリングとボールの反発力によりスピンがかかります。ただ、この動画は、ボールがストリングの上を滑っていることや、ラケットを振り上げているように見えるため、スナップバック量は少なめだと思われます。
ストリングのテンションが緩い場合・ラケットのフェイス面が大きい場合、ラケットのストリング本数が少ない場合、ストリングの目が広い場合、ストリング自体の摩擦が少ないためスナップバック量が大きくなります。
スナップバックのメリット
スナップバックの一番のメリットは、スピン量が増えることです。スナップバックはトランポリンのようにエネルギーを効率よく溜めこみ放出する効果があります。ただ、スピン量を増やすのはスナップバック「力」であってスナップバック量ではありません。
2番目のメリットは、ボールの軌道を上げやすいことです。低いボールでもスナップバックの影響でボールがストリングに引っかかり、ボールが持ちあがります。また、スピン量も多いので、低く浅いボールでも、ボールスピードがそれなりでも相手のコートにしっかり返ります。
スナップバックのデメリット
スナップバックが起きることの一番のデメリットは、面の安定性です。特にハードヒッターがフラットドライブを打った時に顕著に出ます。
スナップバックが起きるということは、ボールがストリングとの初期の接触点から少し下側にずれます(トップスピンのストロークの場合)。こちらに向かってくるボールの勢いを殺せてないうちに下側にずれると、フェイス面の下側が押され、面が下向きに動いてしまいます。そうなると当然ですがネットしてしまいます。
上の動画では、約1.5マス分動いてしまっています。ただし、前述した通りスイング軌道の関係やボールが滑っていることから、少なめのスナップバック量だと推測できます。ハードヒッターがしっかり打ったら、スナップバック量が倍にもなるかもしれません。もちろん、ストリングの種類(同じ材質でも)やテンション、ラケットでも変わります。
スナップバックにより面が下向きに動く現象は、かなりシビアで上手い人なら“ある程度”コントロールできますが、ネットギリギリではなく、ある程度上側を通さないといけません。常にスピン系で打っていればそこまで大きな影響は出ません。しかしそうすると、伸びのあるフラットドライブ系のストロークが打てなくなります。
プロが、縦にナチュラルを使っている理由の一つが、ナチュラルの強烈な弾きにより、スナップバック量は小さいけれどスピンが多くかけられるからです。面安定性が高く、ナチュラルとボール間の摩擦力が高く、高スピンとフラットドライブを両立できます。ティエム(元ブラスト系)もマレー(元横ナチュラル)も縦ナチュラルになりました。
スナップバックといえば「動きの量」がフォーカスされがちですが、量ではなく現象であって、動きが大きければコントロールが悪くなります。「スピンをかけなければコートに収まらない」という方がいますが、スピンをかければかけるほど、フラットドライブのボールは、伸びがなく軽く返されます。もちろん安定性を出すために適度なスピンは必要です。また、スピンを求めている(スピン信者)方の面安定性低い場合が多く、余計にスピンに頼るという悪循環に陥ります。
理想のスナップバック
ラケットによる違い
「ラケットが大きい」・「ストリング本数が少ない」・「ストリング間隔が広い」(ピュアドラなど)・「グロメットホールが大きい」この3つの項目が当てはまるほど、スナップバックが多くスピンがかかりやすい反面、面の安定性が低いです。
ナダルはピュアアエロ(100インチ・16×19)を使っていますがRPMブラスト1.35ゲージ(ゲージが太くなれば面圧が高くなり安定する)を55lbで張るという、普通の人からすれば、鉄板に思えるようなセッティングで安定性を出しています。
ストリングによる違い
理想は縦にナチュラル・横に固めのポリです。
まずスピン量は、ポリ×ポリより、ナイロン×ポリやナチュラル×ポリの方がかかるというデータがあります。これは、ポリ×ポリの場合ストリングの上をボールが滑ってしまうからだと推測できます。ナチュラル×ナチュラルの場合スナップバックの抵抗が大きい上、一瞬で弾いてしまうのでスピンがかかりにくいです。そのため、横にポリを入れます。
面安定性は、縦をナチュラルにすることによって、ナチュラルの弾きによりスナップバック量を最小限にできるため高いです。
打感は、ナチュラル×ナチュラルの場合、弾きすぎてしまいます。そこで固め(ポリは弾きが比較的少ない)のポリを入れることにより、弾き感を抑えコントロールしやすくなります。
つまり、ナチュラルの弾きによりスナップバック量を最小にすることで、面安定性・スピン量の両立ができます。
逆に柔らかめのスピンストリングを使っている場合、スナップバック量が大きく面の安定性が低く、伸びのあるフラットドライブは打ちにくいです。また、軌道の高さのコントロールが苦手なため、滑ってくるようなスライス・ボレーを打つことが難しいです。
人による違い
当然スイングスピードが速くなれば、同じセッティングのラケットを使った場合、スナップバック量は増えるので、面の安定性は低下します。20代でも50代でも50lb程度でストリングを張っている人がいますが、当然スイングスピードは違うわけで、その時のその人に合わせた、セッティングにする必要があります。
まとめ
確かに16×19のラケットを使って、ストリングのテンションを緩めに張った方が、飛ぶし回転もかかるしで、かなり楽です。ただ、「楽=攻撃力のあるショットが打てる」かは、また別の話です。
理想は、スピンとフラットドライブの両立です。縦ナチュラルに横アルパワーなどのポリにすることで、フラットドライブと、高スピンショットの両立ができます。ただナチュラルは価格が高く張るのが厳しい人がほとんどだと思います。
そこでおすすめは、エックスワンバイフェイズというナイロンマルチストリングです。ポリストリングほど低摩擦ではなく、ナイロンモノほど高摩擦ではありません。したがって、ストリング(スナップバック)が動きすぎず・動かな過ぎずで、フラットドライブも安定感を出すためのスピンショットも安定します。
再度になりますが、スナップバックが大きくなりやすい多角形のスピン系ストリングを張るのは、フラットドライブの攻撃力がなくなるため、エッグボールを多用する人以外はお勧めしません。基本的に攻撃力が欲しいなら、ナダルのようなスピン系やティエムやズベレフのようなフラット系のどちらかに特化したほうが攻撃力は強いです。