プロがアルパワー×ナチュラルのハイブリッドを使う理由

プロがアルパワー×ナチュラルのハイブリッドを使う理由

2021年2月3日 0 投稿者: gura

 世界のトッププロ選手の、ジョコビッチ、フェデラー、チリッチなどが縦にナチュラル・横にアルパワー(※フェデラーはラフモデル)、デル・ポトロ、ロペス、シュワルツマンアンディー・マレー、が、縦にアルパワー・横にナチュラルを張っています。

ではなぜ、ナチュラル&アルパワーがが多いのか?これには明確な理由があります。





 ナチュラルガットの特性

 まず、ナチュラルガットの特性です。
・弾きが強い
・高反発
・コントロール性が高い
ポリより摩擦が多い
・しっかりとホールドする(柔らかいナイロンみたいな感じでは無いです)
・柔らかい
・衝撃吸収&振動減衰が良い
だいたい以上の特性になります。

打感的には、最初は柔らかいけど、力を加えていくにつれて一気に硬くなっていくイメージです。ガット全体のたわみ量が少ない“割には”乗ってくれる時間が長いです。また衝撃吸収・振動減衰も良く、体に負担がかかりにくいです。逆にポリは最初から硬い傾向があります。

 打球に関して、反発性能は、ポリ・ナイロンと比べるとトップクラスに位置します。スピン量はガットの摩擦があるためナイロンのようなかかりになります。コントロール性は、少し球離れが速くスピン量が少ないですが、フィーリングやガットの暴れなさがあるため高めです。


 縦:ナチュラル&横:アルパワー

 ジョコビッチやフェデラー、マレーなどグランドスラムを制した選手が使っている「縦:ナチュラル&横:アルパワー」。このハイブリットは、1+1=5とかにするセッティングです。

 スピン

 まず、スナップバックを理解しなければなりません。

 ここに、詳しく書いてありますが、スナップバックはスピン量を増やす半面、意図しない引っかかりや面ブレなどコントロールが乱れる原因の一つにもなります。ティエムや日本のピュアドライブを使っている選手が摩擦の多いRPMパワーに変えた理由がこれです。

 理想は小さいスナップバックにしてホールド時間でスピンをかけることです。ただ、ナチュラルの単張りだと摩擦も多い(スナップバックが小さすぎ)上、弾きが強いため、スピンがかかりにくいです。


 そこで、摩擦の少ないポリストリングと摩擦の多いナチュラルストリングをかけ合わせることで、小さいスナップバックになります。また、縦を摩擦の多いナチュラルにすることで、スナップバックが小さくてもナチュラルガットとボールの摩擦係数が高いため、ハイパーGまでは行かなくても、ブラストとかの回転量まで上げられるわけです。(※少し高テンションにする必要があります)

※「ナイロンはスピンがかからない」と言われますが、一部モデルでスナップバックが起きなく引っかかり感がないからであって、スナップバックが起きてなくても、しっかりとは言いませんが、表面の摩擦で回転はかかっています。

 コントロール性

 もともと、アルパワーとナチュラルガットは、ストリングのたわみ量やスナップバック量が少ないのに、ホールド時間もそれなりにあるため、コントロール性能は4くらい(それぞれ)(このサイトのストリングインプレ基準)です。


 多角形のソリンコの「ハイパーGソフト」やシグナムプロの「ポリプラズマ ヘキストリームピュア」は、満点の5です。では何が違うのか。それはスピン量です。スピン量が多いストリングはスピンを無理やりかけなくて良いため、丁寧にアングルショットが打てます。逆にスピンがかからないストリングは、無理やりスピンをかけないといけないため、コントロールが乱れます。また、低いボールの持ち上げやすさも高スピンの方が良いです。

 じゃあ、「ハイパーGソフトなどを使えばいいのじゃないか」と思う方がいらっしゃると思いますが、それもまた違います。多角形のスピン系ストリングは基本的に、スナップバックが大きくフラットドライブが安定しにくいです。また意図しない引っかかりが生まれやすいです。したがって、ボールが滑ってくるような伸びが出がある球を打つのは難しいです。スピンをしっかりかければ安定するけど、スピン量が少ないと安定しにくいのです。

 逆に摩擦が多いRPMパワーをピュアストライク18×20に張れば、ネットの白帯を連続で当てれるだけの軌道のコントロール性がありますし、ボールの伸びも出ます。


 縦ナチュラル&横アルパワーにすることによって、スナップバックが小さいくても、スピンもナチュラルの弾きの強さと摩擦でかけられるため、フラットドライブの安定性も高くなり、アングルショットのコントロール性も高くなります。

 反発

 アルパワーの反発はかなり高めな上、ナチュラルはトップクラスの反発です。一般的に飛ばないというラケット(ストリングが暴れにくいラケット)は、反発が控えめですが、ストリングの反発で補うことができます。

 打感

 アルパワーとナチュラルは、たわみ量の少なさの割にはホールド時間が長いです。

 たわみ量が少ないおかげで、ストリングのたわみによるコントロールの乱れが少なくなります。

 また、ナチュラルはアルパワーの硬さや振動を軽減してくれるため、体への負担が少ないです。


 縦:アルパワー&横:ナチュラル

 では逆に、縦アルパワー&横ナチュラルの場合はどうなのでしょうか?

 基本的に縦ナチュラルの場合、いくらスナップバックが小さいからと言っても摩擦が大きい影響でほんの少し引っかかりが生まれてしまいます。また、回転量も多くなってしまいます。

 縦をアルパワーにすることで意図しない引っかかりをほぼ無くすことができます。横ナチュラルにすることでホールド時間と反発が上がり若干スピン量が下がるはず(アルパワー単張りより)のため、縦ナチュラルと比べれば、ボールの伸び重視です。過去のマレーが縦アルパワーでしたが、試合動画を見ると、ボールの伸びが常に出ているように感じます。



 例外

 例外は数多く存在しますが、大多数はスポンサーの影響が強制されてないにしろ大きいと思います。

 ズベレフ(縦ホークタッチ)はヘッド契約ですし、ツォンガ(RPM縦ブラスト)もバボラ契約です。ディミトロフ(横4G)は、テンション維持か飛ばなさを選んだのではないでしょうか。ブライアン兄弟はダブルス主体なので飛びが控えめなハイパーG(横)にすることでボレーのコントロール性(特にドロップ)を求めたのかもしれません。

 錦織は使っているラケットがウルトラツアー95という縦長のラケットなため、横が硬いアルパワーでは弾きすぎてしまうのか、腕の怪我の影響ではないでしょうか。





 まとめ

 縦:ナチュラル&横:アルパワーにすることで、スピン量・反発・コントロール性・打感の柔らかさが、高次元で両立できます。

 逆に、縦:アルパワー&横:ナチュラルにすることによって、スナップバック量を減らし、引っかかりも少ないことで、伸びのあるボールを安定して打って行けます。

 絶対的なコントロール・安定性は、縦がナチュラルです。

 逆にボールの滑ってくるような伸びは、縦がアルパワーです。

 デメリットもあり価格の他に、テンション維持の悪いアルパワーと、テンション維持の良いナチュラルなので、バランスが崩れるのが速いです。切断耐久的には、ナイロンマルチよりかなり高いです。

 最安値で、だいたいナチュラルが5000円、アルパワーが1400円位なので、一張り当たり3200円になります。ポイントが多ければ、もっと価格が下がります。アルパワーは200mで買えば1200円くらいになります。