ヘッドのスピードとグラビティ どちらを買うべきか比較
2021年4月27日同じヘッドの「スピード」と「グラビティ」、フェイスサイズが両方とも100インチで、MP系モデルはフレーム厚も1㎜しか変わりません。しかし、ストリングパターンがスピードが16×19本、グラビティが16×20本な上、フレックスが違います。
このページでは、コントロールモデルのPROを含めたスピードとグラビティの違いを解説いたします。
スペック
モデル | スピード MP | グラビ ティ MP | スピード MP LITE | グラビ ティ MP LITE | スピード PRO | グラビ ティ PRO | グラビ ティ TOUR |
---|---|---|---|---|---|---|---|
フェイス面積 | 100in | 100in | 100in | 100in | 100in | 100in | 100in |
フレーム厚 | 23-23-23㎜ | 22-22-22mm | 23-23-23㎜ | 22-22-22㎜ | 23-23-23㎜ | 20-20-20㎜ | 22-22-22mm |
重量 | 300g | 295g | 270g | 280g | 310g | 315g | 305g |
バランス | 320㎜ | 325mm | 330㎜ | 325㎜ | 315㎜ | 315mm | 320mm |
重量× バランス | 96000 | 95875 | 89100 | 91000 | 97650 | 99225 | 97600 |
スイング ウェイト | 328 | 323 | 313 | ? | 329 | 332 | 325 |
ストリング パターン | 16×19 | 16×20 | 16×19 | 16×20 | 18×20 | 18×20 | 18×20 |
フレックス (しなり) | 64 | 62 | 64 | 62 | 62 | 62 | 61 |
※スイングウェイト・フレックスは、tennis warehouseさんの実測値
スピードとグラビティの根本的な違い
スピードとグラビティの一番の根本的違いは、フレームの形です。フレームの形と言っても一般的に言われる断面形状ではなく、ガットが張ってあるところの形です。
スピードは、一般的な形をしたラケットに対し、グラビティは、逆さのタマゴのような形です。グラビティは他社を含めたラケットの中でもトップクラスに横幅が広いです。また、フェイスの一番広い部分が一般的な3時-9時の位置ではなく、少し上側です。
横長の理由
ではなぜグラビティは横長なのでしょうか?
テニスでは、スイート”スポット”の一点で打てなかった時、オフセンターショットと言い、「ストロークの時に上側で打ってしまった場合ラケットフェイスの向きが上に向いてしまう(ボールがアウトになる)。&下で打ってしまった時ラケットフェイスが下に向いてしまう(ボールがネットになる)。」という現象が起きます。この現象が顕著になればなるほどコントロールができないラケットになります。
そこで、ラケットの3時&9時側に荷重があることで、慣性モーメント(スイングウェイトと同様でラケットの加速・減速のしにくさを示す)によりラケットのブレやねじれを抑制します。この荷重は、「重量×距離^2」で表すことができます(簡易的には)。重量が同じ場合、距離が1.2倍になれば、慣性モーメントは1.4倍になります。
グラビティは横長にすることで、3時9時側の荷重の位置が遠くなります。また、縦のストリングも横の間隔を広げてあげることでストリングの荷重が外側に行き、慣性モーメントが一般的なラケットより多くなります(特にPRO)。したがって、グラビティは、オフセンターショットをしても、コントロールが乱れにくくなっています。
ただ、「振り抜きが悪くなる」というデメリットもあります。空気抵抗は速度の2乗(1.2倍なら空気抵抗は1.4倍)になります。ラケットは先端に行けばいく程速度が速くなります。そのため、ラケット先端の方にフレーム量が多いグラビティは振り抜きが良くありません。スピードの方が振り抜きは良いです。
インスティンクトやウルトラツアー95などは縦長で、エクストリームなどは横長です。エクストリームはストリングの動きが大きく、横長の割にはコントロール性は良くないです(スピン系ラケットのデメリット)。縦長にしてしまうとコントロールできなくなります。面が小さいラケットもフェイスの横幅が狭くなるため、ストリングの目を狭くしたり重量を増やしたりしてコントロール性を補っています。
※あくまで「一般的なラケットと比べて」であり、軽くなればなるほど反発性やコントロール性・安定性は落ちます。
スピードとグラビティの性能差
様々なラケットを試打しているtennis warehouseさんのスコアを参考にさせていただきます。
総合=総合スコア・スト=グランドストローク・ボレ=ボレー・サー=サーブ・リタ=リターン・反発=反発・制球=コントロール・操作=操作性・安定=・安定性・打柔=打感の柔らかさ・打感=フィーリング・上回=トップスピン・下回=スライス
ラケット | 総合 | スト | ボレ | サー | リタ | 反発 | 制球 | 操作 | 安定 | 打柔 | 打感 | 上回 | 下回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スピードMP | 87 | 88 | 85 | 84 | 88 | 87 | 85 | 85 | 85 | 84 | 86 | 88 | 86 |
スピードPRO | 86 | 85 | 85 | 83 | 83 | 80 | 87 | 82 | 84 | 83 | 83 | 80 | 84 |
グラビティMP | 83 | 85 | 83 | 82 | 83 | 79 | 82 | 87 | 79 | 82 | 84 | 86 | 81 |
グラビティPRO | 87 | 87 | 86 | 84 | 85 | 81 | 90 | 78 | 88 | 89 | 87 | 86 | 88 |
スコアの大体の平均ですが、飛ぶ黄金スペックと言われるものの反発が、87~88(ピュアドラ2021は93)・飛ぶ黄金スペックのコントロール性が80前後・打球感の柔らかさは、16×19の中で85以上行くのはレアです。80下回れば個人的には気になります。逆に90超えれば、衝撃的です。
エクストリームツアーは、操作性は良いですが反発性は77と、スピードやグラビティの方が飛ぶみたいです。実際こういうことも多くあります。原因としては、スイングウェイトが軽すぎだったり、スナップバック量が多く中心でとらえてもオフセンターショットになってしまいフレームのよじれで飛ばなくなったりなどです。
一般的にストリングが18×20のラケットは「飛ばない」とされていますが、16×19のラケットの方が飛ばないことも多々あります。100インチより98インチの方が飛ぶラケットもあります。さらに言えば、ボールスピードを出せるのは、反発性はもちろんですがコントロール・安定感・振り抜きなど様々な要因が必要です。したがって、反発性が良くてもコントロール性等が低ければ、より余力を残して打つ必要があります。逆に反発性が良くなくてもコントロール性等が良ければ、余力が少なくても大丈夫なので、ボールスピードはそこまで変わりません。その証拠にWTAやATPのツアー優勝者のラケットは様々ですし、ATPのシュワルツマンがラジカル(特注)を1インチロング加工して使っています。「筋力がないから飛ぶラケット」は通用しません。もちろん重くなればなるほど振り抜きが悪くなるので、操作性とプレースタイルに相談する必要があります。
どのラケットを選ぶか
スピードMP
個人的にはチートラケットの一つと思っているラケットです。ピュアドライブの2018年モデルより飛ぶという人も複数いましたし、コントロールもストリングが16×19の中ではかなり高い方です。振り抜きもピュアドライブ2021と同じ85点です。確かにスイングウェイト分ラケットの加速のしなさはあるのですが、フレームが薄い分空気抵抗による加速のしにくさは少ないので相殺されている感じです。
主婦層の女性も複数人使っていますが、中上級男性にも打ち負けないパフォーマンスが出ています。後に他のラケット(16×19の中のコントロール系と言われるもの)を買って、がっかりしてるくらいです。
デメリットを上げるとすれば、「スイングウェイトの重さ」と、「高反発なため低いボレーとかで当てただけで結構飛んで行ってしまうので飛ばさない努力が必要」ということくらいです。コントロール性は良いので使いこなせればパンチのあるボレーを打てます。
中級以上の女性(初中級でも大きく振れればOK)や、女子学生、一般男性におすすめのラケットです。また、黒単色の「ジョコビッチスタイル」もあり、ユニフォーム色とコーデしやすかったり、ユニフォームを目立たせる効果もあるためおすすめです。
グラビティMP
バランス×重量が、黄金スペック(300g・320㎜)の96000より低くなっています。その影響か、全体的にスコアは低めになっています。グラビティの方がしなるので、ボールがしっかり乗ってくれるほうが良ければ、グラビティのほうがいいかもしれません。また、少し3時9時の位置に数g荷重することで、反発・コントロール・安定性が上がるので、やったほうがいいかもしれません。
飛ばないと言っても、グラフィンタッチ時代のインスティンクト(73点)よりは、はるかに飛びます。この時代のインスティンクトはほんとに飛ばない時期でした。今は18×20のラケットを問題なく使っていますが、インスティンクトはトップクラスの反発を誇るエックスワンバイフェイズでも辛かったです。振り抜きは悪くはないのですけどね。
グラビティPRO
市販品で他社を含めて一般的なスペック(330gなど極端なものを除く)でほぼトップのコントロール性を誇るグラビティ。飛ぶので安定性も高く、ここまで両立で来ているラケットはほぼありません。また、100インチなことも含めて、ストリングの目がかなり粗いです。その結果、コントロール性の割には異次元にスピンがかかります。比較的飛ぶ上、コントロール性も良いので、振り抜きにくさは少しはカバーできます(コントロールより振ることに意識をすれば良いので)。
プロは特注品を使ったり、過去のものを使っていることが多いですが、ズベレフやルブレフは実際に使っていると言われています(もちろんウェイト等調整はしていますが)。
男子学生や完全な競技者におすすめのラケットです。片手バックの場合、ブロックリターンやスライスなど丁寧にしのぐ技術を身に付けたほうがいいと思います。
グラビティPROか スピードPROか
正直悩むところです。スピードPROに荷重すると振り抜きやトップスピン量は落ちますが、コントロール性・安定性・反発性が上がります。したがって、スピン量が欲しければグラビティ・少ないほうがいい場合はスピードが良いかもしれません。片手バックの場合は、振り抜きが悪いと辛いのでスピードPROの方が良いかもしれません。
グラビティPROか グラビティTOURか
スコア自体はないですが、PROとTOURでは反発性が、同じような評価が多いです。フレームはしなりにくいですがスイングウェイトが軽いためです。PROの方はスイングウェイトが重いですがフレーム厚が薄いので、振り抜きもそこまで変わりません。重さが大丈夫なのであればPROの方がコントロール性は良いので、いいと思います。
※テニスラケットは個体差があります。メーカにもよりますがだいたい、重量±7g・バランス±7㎜・フレックス±3・スイングウェイト10以上違います。正直言ってスペック誤差により二回り位違うこともあります。飛ぶから良いと思って2本目買ったら飛ばなかったり、軽くてコントロール性が低かったりします。また、感じ方には個人差もあります。