ガット(ストリング)のゲージ(太さ)による違いと選び方
2022年2月9日テニスのガット(ストリング)のゲージ(太さ)は、一般的に1.05㎜~1.35㎜があります。メインで使われるのが、1.24㎜~1.30㎜です。では、ゲージの違いによって、どのような違いがあり、どう選べばいいか解説します。
前書き:テニスラケットのコントロール性&安定性
日本では「飛ぶピュアドライブは最強」「筋力のない日本人はピュアドライブを使うべき」という伝説がありますが、少しこれは外れています。
ピュアドライブなど高反発ラケットは、ストリング間隔が粗い影響で、スナップバックによる面ブレが大きくなります。逆に、ストリングが18×20本のラケットなどは、ストリング同士の摩擦によりスナップバック量が小さいため、面ブレが少なくなります。※スピンをかけるのは、スナップバック”量”ではなく”力”です。
したがって、高反発ラケットほど丁寧に打たないといけません。逆に高コントロールラケットは、そこまで丁寧に打たなくても、コントロールが乱れにくいです。簡単に言うと、高反発ラケットでは余力が4必要な時でも、高コントロールラケットは2で良かったりします。
ゆえに、出せるボールスピードは、そこまで変わりません。逆にリターンやカウンターショットは、高コントロール&高安定性のラケットの方が出せたり、精度が良かったりします。相手のボールの影響を受けないサーブは、高反発ラケットの方がボールスピードは出ます。
つまり、スナップバック量を減らせば、ショットのコントロール性&安定性が高くなります。
ゲージの違いによるパフォーマンスの違い
反発
反発性は、太ゲージになるほど低下します。
太ゲージの方が、ストリングの伸縮力は強まるのですが、ストリング同士の摩擦量の増加やホールド時間の低下により飛ばなくなります。(同じテンションで張った場合)
コントロール性&安定性
コントロール性と安定性は、太ゲージの方がスナップバック量が少なくなるため、良くなります。
ただ、高摩擦のナイロンストリングなどで、スピンがかからな過ぎて縦振りをしすぎると乱れるので、限度があります。
出せるボールスピード
太ゲージにすると、コントロール性が上がっているため、反発性が落ちていても、MAXのボールスピードが上がります。細ゲージ&ローテンションなどで、コントロール性や安定性が低くなりすぎた場合、しっかり振れず、ボールスピードが出にくくなります。
ただこちらも、スピン量が減りすぎると、高いボールは良いかもしれませんが、低いボールのボールスピードが出にくくなります。
ボールの伸び
滑ってくるようなボールの伸びは、太ゲージの方が出せます。エクセルなどの高摩擦ストリング(特に1.35)を張ることで、スピン量が少なくなる&フラットでしっかり打てるので、バウンド時の減速量が少なく、バウンド後のボールの水平方向のボールスピードが速いです。
逆に細ゲージの方がスピンがかかるので、バウンド時の変化の攻撃力は高いです。ただ、ボールが浅くなると相手の打ち頃のボールになります。ボールスピードが遅い人にとっては、ボールが軽くなりがちです。
スピン
太ゲージの方がボールとの引っかかりが弱くなるのと、ホールド時間の低減によって、スピン量が落ちます。
ただ、張るテンションとの兼ね合いもありますが、コントロール性や安定性が低い場合(特に細ゲージ&ローテンション)、しっかり振れず、逆にスピンがかけられなくなることもあります。ピュアドライブ2021にポリツアープロ[レビューを見る]を50lb→45lbと、たかが5lb落としただけで「スピンがかからなくなった」と言ってる人もいました。
打感(フィーリング)
フィーリングに関しては、細ゲージの方が「弾き感」が強く、気持ち良い打感になると思います。
衝撃吸収性
衝撃吸収性は、ナイロンとポリで分かれます。
基本的にナイロンは、はじめが柔らかく、後半に一気に硬くなります。したがって、できるだけ後半の硬い部分を避けたほうが、衝撃吸収性が良くなります。したがって、ストリングの摩擦で伸び量を抑えたほうが衝撃吸収性が良くなります。したがって、ナイロンは、太ゲージの方が衝撃吸収性が良くなります。
ポリの場合、はじめが硬く、後半は柔らかくなります。柔らかくなるというか、硬化の速度が遅くなる感じです。例えば、1・2・3と力を加えた時4・6・7と硬化していくイメージです。つまり最初が硬いところを軽減する必要があるので、ポリは、細ゲージの方が衝撃吸収性が良くなります。
切断耐久性
切断耐久性は、細ゲージほど悪くなります。ナイロンほどゲージを1つ変えるだけで、大きく変わります。
ただコーティングの耐久性や、削り量・どういう打ち方をするかなど、いろいろな要素が切断耐久性に影響してくるので、ストリング自体に依存する面もあります。
ポリだと「オリジナル[レビューを見る]」が切断耐久性が高いです。
テンション維持
テンション維持に関しては、太ゲージにすることで、テンションの低下スピード・低下量が少なくなります。
特にポリは、20%落ちるのが一般的です。伸び量が増えるため、コントロール性が落ちてきます。落ち方的には、最初に一気に落ちてそのあとがゆっくりのものや、一定の速度で伸びていくものなど、様々です。
一般的にテンション維持の寿命は、ポリは1ヵ月、ナイロンは3ヵ月と言われています。
どのゲージを選ぶか
ナイロン
ナイロンユーザーの場合、メインは1.25㎜前後で良いと思います。
どうしても1カ月以内に切れてしまう場合や、コントロール性が欲しい場合、スピードボールに打ち負けることが多い場合は、1.30㎜を使ってみると良いと思います。
ピュアアエロやエクストリームなど、ストリング間隔が広いラケット(16×19本の中でも)の場合は、1.30㎜の方がコントロールがしやすいかもしれません。他のラケットでも繊細なコントロール性が欲しければ、1.30㎜の選択肢を持っても良いと思います。
ポリ
ポリの場合、1.25㎜が日本ではメインになっていますが、結構ローテンションで張る人が多いので、1.30㎜の方がボールスピードが出せる方が多いかもしれません。学生ならほとんどの方が1.30㎜の方がボールスピードが出せると思います。
もちろん、自身に余裕があれば、1.25㎜でもコントロールできますし、1.25㎜の方が飛ぶのでボールスピードもある程度出ると思います。しかし、余裕がない時、例えば走りながら打つ時や、相手のボールが速い時などは、少し伸び量の少ない1.30㎜を使うだとか、テンションを上げてあげたほうが安定します。ミスが少なくなります。
また、ラインぎりぎりに打ちたい場合や、カウンターショットを打ちたい場合は、1.30㎜を使うなど少しコントロール性&安定性を上げてあげたほうが良いですし楽です。
さらに、片手バックの方は、ボールを打つまでの時間が短いため、オフセンターショットをしやすく、少しストリングの伸び量が少ないものを選んだほうが安定します。
ざっくり言うと「コントロール性を上げたい」「ミスを少なくしたい」「カウンターショットを打ちたい」「高いボールもしっかり打ちたい&安定させたい」「ラインぎりぎりを狙っていきたい」「MAXのボールスピードを上げたい」「ボールの伸びが欲しい」「振り遅れないようにしたい」「派手な面白いテニスがしたい」などの場合は、太ゲージ(1.30㎜)を使うかテンションを上げるかして、コントロール性&安定性を上げたほうが良いと思います。逆に、ホールド感が欲しい場合や、強打しないで丁寧に打ちたい場合は、細ゲージやローテンションを選ぶべきだと思います。
ただ、スピン量の少ないブレードシリーズやストリングが18×20本のラケットなどと、「アルパワー(フラットで打った時あまり伸びない)」や「ハイパーG(球離れが早め)[レビューを見る]」などの場合は、1.25㎜が良いと思います。
もちろん、衝撃吸収の観点や、フィーリングの観点から、太ゲージや高テンションを敬遠する考え方も分かります。ただ、ジョコビッチやフェデラー・ナダル・マレーなどがなぜ高テンションで張るかというと、コントロール性や安定性の影響が大きいです。特徴としては、ジョコビッチは安定感やえげつないリターン、フェデラーは絶対的なコントロール、マレーはディフェンス時のコートカバー力&弱点のなさが出ています。
もちろんローテンションの選手もいるのは確かですが、錦織選手にはガスケ(バックの高スピン)やナダル(高スピン)・ジョコビッチ(苦手を徹底的に攻める)など、天敵と呼ばれる選手がいたり、マナリノ選手(24lb)はクレーの(上位)タイトルが取れてなかったり、どこかしらネガティブな点があります。
あと、アルパワーやオリジナルを横に張ると比較的ローテンションでもフラットが打ちやすかったりと、ストリングの組み合わせもあります。
ゲージやテンション好みで問題はないですが、伸び量の少ないストリング(素材・高テンション・太ゲージ)を使うことで、絶対的なコントロールや安定感が出ます。逆に伸び量が多い(素材・低テンション・細ゲージ)と、ストロークのドロップや軽く打つ時は、良い感じになります。