グリップは太い(太め)の方が良い 科学的根拠付きで解説
2020年8月30日「細いグリップがいいこともある」と言われていますが、科学的に見ると細いグリップは、デメリットづくしです。特にグリップサイズが2を使っている男性も多いですが、適正サイズにすれば、テニススクールの1クラスぐらい、ショットのコントロール性が変わることもあります。
太いグリップが良い科学的証拠
テニスラケットで、ボールを打つとき、基本的にはスイートスポット(一点)ではなく、スイートエリアという、エリア内のどこかで打ちます。プロでも現代のスピードテニスでは、スイートエリアを外すことが多くなっています。基本的にスイートエリア内でも、ラケットの上側で打つと面が上に向きます。また、下側で打つと面が下に向きます。その結果アウトやネットしてしまいます。
この面ブレを抑えられるのが、グリップであり自身の握力です。
上の画像が、トルクの原理です。同じ力でも回転半径が大きければ、出力される力は大きくなります。
下側の画像は、スイートスポットより10㎝上で打った場合の力(トルク)の関係です。10kgというのは、分かりやすくするために極端な数値にしており、実際とは異なります。
左側がラケットフェイス面の力、右側二つがグリップにかかる力だと思ってください。トルクは回転半径×力です。そこから計算してみると、同じ握力なら太いグリップの方が、回転を抑える力が10kgで済みますが。細い場合は100kg必要です。
つまり、グリップは、太い方が、面ブレを抑制する効果があるのです。個人的な体感ですが、グリップサイズを2つほど上げると、1~2割程度しか入らなかったショット(高速ラリー)が「9割入るようになったかな」という感じでした。もともとG3でも細すぎ(グリップテープなど加工していない状態)でした。しかし、手の中でグリップが滑っているわけではないです。レザーならまだしも、シンセティック(通常の)では、細くても滑りません。手の皮の動きで面ブレが起こっているのです。
ただ、グリップが太すぎてしまうと、小指がかかっていない部分からグリップが飛び出してきてしまうので、太めがいいのは確かですが、太すぎも良くないです。
グリップの適正
どのくらいがベストかというと、ラケットを握って打点で止めた状態で、他人にラケットを回転(面ブレ)してもらった時に、動きにくいもの。また、後ろ方向に押してもらった時に、打ち負けないものがいいです。他のサイトでは、人差し指が入るくらいと言われていますが、入らないのは細すぎです。人差し指を入れて(爪が上側)も、少し余裕があった(きつきつでない)ほうがいいかなと思います。
コンチネンタルグリップで持ったとき(ボレー等)、ラケットフェイスを“後ろ”に押してもらうと、細い方が打ち負け感はないですが、ボレーはストロークに比べスイング速度が速くないため、ラケットは抜けにくいので、気にしなくても大丈夫です。それより、コントロール(ブレなさ)・安定感重視で太めの方が良いと思います。
ラケットを変えた時、メーカーや製品で、同じグリップサイズでもリプレイスメントグリップ(元グリ)の厚さが違ったりすることがあり(バボラが比較的太い)、それにより、コントロール性が変わるため、グリップテープやリプレイスメントグリップでの調整をした方が、絶対に良いです。
例外
太めがいいと言いましたが、例外もあります。
まず、スピン・スライスサーブです。細いグリップは手の中で遊びができます。したがって、サーブの時に打つ前は小指をゆるゆるにしておいて、打点で小指を握ることにより、ヘッドを走らせることができるため、回転量が増えます。テニスはサーブだけでは決まらないので、ストロークとのバランスが大切です。
次にドロップボレーです。手とグリップに余裕があったほうが、ボールの勢いを上手く殺すことができます。ただこれも、毎回打つわけではないと思うので、通常のボレーの安定性を高めるため、太めにした方が良い気がします。
最後に、グリップチェンジです。グリップチェンジの時に細ければ、指を広げても輪っかができており、引っかからずにグリップチェンジできます。逆に太いと、輪っかが切れているところがあり、そこから落ちそうな感覚になります。そのため、指の開き量が少なく、グリップが手のひらに引っかかる感覚があります。かなり無意識に近い感覚ですが。
メーカー・量販店の罠
基本的に日本では、G2が一番売れ、G3・G1と続きます。小売店では、女性にでも男性でも使えるG2を置くことで、在庫が少なくても幅広い人に買ってもらえるのです。細ければ、グリップテープを巻けば解決しますし。また、細いことで低下するコントロール性は技術やストリングのせいにすれば、店としての問題はありません。逆にG5やG0などは、ニーズが少ないため、仕入れ量が少なくても売れなく、安売りせざるを得ない状況になりやすいです。
つまり、基本的に同じ種類を3つか4つ位しか店に置けませんが、G1本・G2×2本・G3×1本とおくこと(黄金スペックなど)が、極力在庫を減らし効率よく売るための方法なのです。また、返品リスクも少なくなります。
海外で、G5が売っているのは、手が大きい人が多いからという理由もありますが、日本人が「これならどなたでも合いますよ(G2)」と言われ、そのまま鵜呑みにしやすい性格だからです。海外の人は自分で合うものを選びます。また、グリップによるコントロール性がフォーカスされていないのもあると思います。フォーカスしたら、G5とかも必要となり、販売コストも上がりますし。
基本的に男子プロは、G3以上のグリップに、グリップテープを巻いている人がほとんどです。
細くてもグリップテープを「2重に巻く」など方法はありますが、グリップの角を感じられなくなり、握りがずれる可能性が高まりますので、できれば元の大きさを、変えたほうがいいです。