ストリングが18×20のラケットを使うメリット・デメリット

ストリングが18×20のラケットを使うメリット・デメリット

2020年7月9日 0 投稿者: gura

 ストリングパターンが18×20本(縦×横)のテニスラケットは、ネット上に「16×19本のラケットが飛びすぎる人が使う」「日本人は筋力がなく使えない」など、非常にイメージが良くない理由で敬遠されがちです。しかし、18×20などのラケットは、かなり有効なメリットがあるため、日本の一般の方でも使うメリットがあります。





 テニスラケットのコントロール性・安定性

 縦18×横20本のテニスラケットの一番のメリットは、「高いコントロール性」と「高い安定性」です。

 なぜ、ストリングが18×20本のラケットは、コントロール性や安定性が高いかというと、「スナップバック”量”が大きくなりすぎない」からです。

 「え?スナップバックが小さければスピンがかからなく、ボールをコントロールできないのでは?」と思うかもしれませんが、このスナップバックの小ささが大きなメリットになります。

 コントロール性

 通常「飛びすぎるからスピンを多くかけてコート内に収める」という考えが大多数だと思います。そこでスナップバックの起きやすいポリエステルストリングを選んでいる人も、多いのではないでしょうか?しかしそれがコントロール性の乱れの一因ともなります。

 ストリング間隔が粗いエクストリームやピュアアエロなどは、スナップバックが速く・最大量が多いため、5のスナップバック量が欲しい場合でも、2になってしまったり8になってしまったりしやすいです。一方、ストリング間隔が狭い高コントロールラケットは、ストリング同士の摩擦でスナップバックが遅く・小さいため、5のスナップバック量が欲しい時、4~6の範囲で収まってくれます。※数字に絶対的な意味はないです。

 例えると、上から落としたものを指でキャッチするゲームです。ティッシュと鉄球を落とした場合、掴みやすいのはティッシュだと思います。鉄球がティッシュに比べてつかみにくい理由は、落下速度の速さと、時間あたりの落下量の多さです。ティッシュの場合は1秒遅れてもつかめますが、鉄球は地面に落下しています。


 まとめると、18×20本のラケットは、ストリング同士の間隔が狭いためストリング同士の摩擦が大きく、スナップバック”量”や”速度”が少なくなります。その結果、ショットの繊細なコントロールが可能なため、コントロール性が高いラケットなのです。

 簡単に言うと、「ストリング間隔が細かいラケットほど、スイングの許容範囲が広く」、「ストリング間隔が粗いラケットほど、スイングの許容範囲が狭い(1のミスが3にも5にもなる)のです。


 安定性

※tennis wherehouse様より引用

 上記の画像でいうと(わかりやすいようにこの画像を選んだだけで文字などに正確な意味はありません)、基本的にテニスはスピンをかけるために斜め上方向にラケットを振ります。その場合、ボールを真ん中で打った時「slide」と書いてある分、ボールの勢いでボールと共にストリングが下向きに動きます。その結果、ボールの勢いによりラケットの下側が後ろに押されることによって、「面ブレ」という現象が起きます。もちろん面が下に向くとボールがネットにかかるわけで、失点につながります。

 この面ブレは、コントロール性にも影響を及ぼします。プロを含めて人間は、毎回ドセンターでボールを打つことが不可能です。少し上で打ってしまったり、少し下で打ってしまったり、フレーム付近で打ってしまったりというのが、プロも含めて日常茶飯事だと思います。

 基本的にはピュアアエロやエクストリームなどの、スナップバック量が多いラケットほど、ラケットの下側がボールによって押されるため、面ブレが大きくなります。また、同じラケットでも下側で打ってしまうとより縦のストリングに力が加わり、スナップバック量が大きくなり、結果面ブレも大きいです。もちろん面ブレが起きるほど、ショットの着弾点の前後幅が大きくなります。

 逆に、スナップバック量の小さいラケットは、スナップバック量が小さいがために、ボールがラケットの端側にあまり行かないため、面ブレが小さくなります。そうすることで、ショットの着弾点の前後の幅を小さくできるのです。

 フェデラーの使う「プロスタッフRF97」は、普通にストリングを張ってしまうと、スピンが結構かかりません。縦にナチュラル・横にアルパワーラフを60lb近くで張っているのは、できるだけスナップバック量を減らすことで面ブレを抑えたほうが、安定したコントロール(ダウンザラインとか)ができるからです。

 安定性を決める条件は、「スナップバックの小ささ」と・「面ブレを抑制する荷重の多さ」です。面ブレを抑制する荷重は、ピュアドライブなどラケットの横幅が広く、フレーム厚が膨らんでいる(3時&9時の位置)ラケットの方が多いですが、スナップバック量が多いため、18×20本のラケットの方が、面ブレが少なく(高安定性)、ショットのムラが少ない安定感抜群のラケットなのです。

 ※ボールの伸びに関して、滑ってくるようなボールの伸びが出せるのは「低スピンのフラットドライブ」のみです。




 18×20のテニスラケットを使うメリット

 ボールスピード

 一般的に、ストリングが18×20本のラケットは低反発と言われますが、コントロール性や安定性の高さから、高反発ラケット同様のボールスピードが出せます。理由としては、高反発ラケットでは余力が(10のうち)4必要なショットも、2程度で打っても問題ないためです。男子学生はピュアドライブ2018よりグラビティプロの方が明らかに球速&精度ともに良かったですし。

 もっと言えば、リターンや相手からのボールが速い場合は、高反発ラケットよりボールスピードが出せたりします。きついボールに対してボールスピードが出し易いのは、高コントロール&高安定性のラケットです。

 ただ日本では、「ストリングが撓んで戻る力」が強いことを「反発が強いラケット」と評価する方が多いです。したがって、18×20本のラケットは「飛ばない」と評価する方も多いです。しかし、ストリングの弾き感が弱くても、ホールド時間の長さから力の伝わっている時間が長く、ボールスピードは出ています。ストリングの「ハイパーG[レビューを見る]」がいい例で、弾き感が強いため「標準の飛び」と評価する方が多いですが、実際は球離れが早い影響で「弱めの飛びです。」

 一応反発力だけで言うと、TF40 305[レビューを見る]は、プロスタッフ97・ブレード16×19&18×20・グラビティMP・VCOREPRO97の方が飛ばなく、EZONE98・VCORE98・グラビティプロと同じくらいの飛びです。


 この動画はラフィノさんによるテクニファイバーのT-fightのインプレ動画ですが、16×19の300と、18×19の305のを打ち比べてます。ストリングのゲージが違うのはありますが、305の方が、良い球が“連続”で行っているように感じると思います。

 コントロール

 ラインぎりぎりなど、高精度なショットを打つことができます。正直高反発ラケットで丁寧に打っても、高コントロール&高安定性のラケットには及びません。

 カウンターショットが非常に打ちやすいです。

 攻撃力

 繊細なコントロールができるため、深さだったりコースをしっかりつけたりできるため攻撃力が高いです。

 また、しっかりフラットで打てるため、滑ってくるような伸び(バウンド時に減速量が少ない)が出し易いです。特にスライスは、かなり低い弾道で打つことができ、ボールの伸び量がかなりすごいです。

 アングルショットは低い弾道で打ち抜けます。

 スピン量は少なめのため、スピンによる打ちにくさを出したければ意図的に打つ必要があります。

 打感・衝撃吸収性

 まず、衝撃吸収性ですが、ストリング同士の摩擦が多い(衝撃を吸収する)ため、衝撃吸収性が高いラケットが多いです。そういう意味では「打感は柔らかい」です。

 打感は、ストリング間隔が細かいことや、ボックス形状に近いラケットが多いことから、クリアな打感が手に伝わってきます。

 ただ、「ストリングが撓まない=硬い」と感じる方にとっては「打感が硬い」と感じると思います。

 




 18×20のテニスラケットを使うデメリット

 ラケット重量&操作性&体力

 一番のデメリットは、ラケット重量です。基本的にコントロール性が高いラケットほど低反発になるため、ラケット重量が重くなっています。

 例えば、ブレード18×20本(V7)ですが、静止重量は305gでそこまで重くないのですが、スイングウェイトが335前後と少し重めです(ピュアドライブが320・スピードMPが328前後)。つまり、試合時間中「しっかり振れるかが」使えるか使えないかの基準となります。ただ、スイングウェイトが326と軽いTF40 305【インプレを見る】というラケットもあります。正直に言って、繊細なコントロール性を求めている自身にとっては非常に使いやすいです。

 ただ、高反発ラケットみたいに、丁寧に振る必要はないため、意外と振れる場合も多いです。高反発ラケットの時の片手バックで、「真ん中に当てたくてタイミングをしっかり計っていたら、振り遅れてしまった」ということが起きがちですが、高安定性のラケットは迷いなく振れるため、意外と振り抜きの良くないラケットのほうが良かったりもします。

 スピン

 次にスピン量の少なさです。スピン量が少ないので、ネットクリアランスが取りにくいです。ただ、ストリングやテンションで解決できます。ただ、少し使えるストリングが限られると思います。

 テンションを落としても問題はないですが、落とすと面ブレを起こすスナップバック量が多くなるので、スナップバック量が小さくてもスピンのかかる「アルパワーラフ」「アルパワー」「4gラフ」「RPMブラスト」「アドレナリンラフ」「ハイパーG」など、スピン量が少し多めのストリングがおすすめです。アルパワーラフだとかなりボールスピードが出せます。

 ちなみになんですが、「ポリストリング=スピンが多い」ではなく、スピン量が少ないポリも多いです。スピン量が少なくコントロール性の低いストリングは、扱いにくくなります。

 他

 高反発ラケットより余力を使わないといけないので、1ショット当たりの体力消耗量は増えます(トータルはその人次第)。

 サーブに関しては、コントロール性や安定性がストロークほど影響しないので、高反発ラケットの方がボールスピードが出せます。

 95インチの18×20本のラケットや、98インチでも極端に飛ばないラケットも存在しますし、コントロール性&安定性が低い18×20のラケットも存在し、それを選んでしまうと、扱えないこともあります。

 18×20のラケットが向いている人

・20代で初心者ではない人、30・40代でしっかり振れる人(男性) 、女子学生(TF40 305がおすすめ) 。
・繊細なコントロール性や安定性を求める方。
・フラットドライブ主体で打つ人。移行も可。
・しっかり振りたい人。ボールを潰して打ちたい人。
・ストロークの攻撃力が欲しい人。

 これらに当てはまる人にはおすすめです。これ以外にも経験年数など細かいことはありますが、“絶対”ということはないので、各自で試打なりとしていただければなと思います。

 18×20のラケットは、時代とともに飛ぶようになってきており、WTA(女子テニス)のサバレンカやキーズなどの選手も使い始めたくらいです。意外と使えると思います。





 まとめ

 ストリングパターンが18×20本のテニスラケットを使うことによって、面安定性が良いためコントロール性・安定性が良く、ボールが伸びているように感じる、非常に打ち返しにくいボールが飛んで行きます。バウンド後の高さも低く非常に打ち返しにくいです。

 また、低反発なのは間違いないですが、しっかり振ってもミスショットになりにくいため、高反発ラケットと同様なボールスピードが出せます。

 また、「自分が楽なラケット=勝てるラケット」とならないことも多いです。競技としてテニスをするなら、相手の嫌なラケットを選ぶことも大切です。

 一番お勧めの18×20のラケットは、TF40 305です。飛ぶし振り抜きが悪くないしと扱いやすいのに高コントロールです。初めての方にもおすすめです。

 また、絶対的な安定感はストリングの動き量が少ないブレード18×20、振り抜きはきついけど絶対的なコントロールはグラビティプロ、一発の攻撃力はプレステージMP(振り抜き重視)・ピュアストライク18×20(飛び重視)、一発のドフラットはウルトラツアー97がおすすめです。