HEADのプレステージは難しいのか 使うメリットデメリット
2021年1月29日HEADのプレステージは、日本ので発売されているラケットの有名メーカーの中で、トップクラスのコントロール系モデルです。
世界では、ジル・シモン選手、パブロ・クエバス選手、マリン・チリッチ選手等が使っていると言われています。
反発系ラケットとコントロール系ラケットの違い
まず、反発系ラケットと、コントロール系のラケットの違いです。
日本では、「飛びすぎるから飛ばないラケットにする」などと言われていますが、これは間違いです。
コントロール系ラケットと反発系(スピン系)ラケットの違いは、ストリングの安定性です。
ショットの正確性
基本的に反発系(&スピン系)ラケットは、スイートスポット(スイート“エリア”ではなく)を外した時のフレームのしなりなどのエネルギー損出を抑えるためフレームを硬くします。
ただ、フレームが硬い場合、ホールド時間や打感の硬さが出るため、ストリングの目を粗くしてます。その結果、スナップバック量が大きくなり、意図しない引っかかりが生まれたり・意図した引っかかりがうまれなかったりします。簡単に言うと「ストリングが暴れる」わけです。
逆にコントロール系ラケットは、ストリングの目を細かくしてスナップバック量を少なくしても、フレームの順しなり(打った時の後ろ側へのしなり)があることで、適正なスピン量・打感の柔らかさを出しています。
その証拠に、ストリング間隔が粗いラケットに柔らかいテンションでストリングを張ったものと、 ピュアストライク18×20やプレステージmp(18×20本)のラケットに、しっかりとしたテンションで張ったもので、ネットの白帯を狙ってみればわかると思います。コントロール性の高いラケットはかなり当てやすいです。(連続で当てれる)
つまり、ストリングの動きが少ないほど正確なショットが打てますし、ショットのムラがなくなり安定したプレーができるのです。
コントロール系ラケットを使うメリット・デメリット
メリット
コントロール系のラケットの方が、繊細なコントロール性・安定性・ボールの伸びなどのメリットがあります。
まず、高反発なラケットでも余力を多く残せば繊細なショットが打てるように感じますが、実際はコントロールラケットの方が繊細なショットが打てます。理由としては、低コントロール・低安定性のラケットは、ほんのわずかなミスが、大きく表れるからです(ミスと言っても、「明らかにスイング角度が違う」とまでいかない)。少しストリングの引っかかり量が多いだけで50㎝とかの差になります(高コントロールなら20㎝程度で済む)。
次に、コントロール系ラケットの方がボールの伸びが出ます。理由としては、ストリングが暴れにくいことにより、フラットドライブで打っていけるからです。逆に高反発ラケットの場合、コントロールを乱すスナップバック”量”が多く、ネットギリギリを通せないため、少しループ状になります。スピン量が多いと、バウンド時の摩擦抵抗が多いため、ボールが軽くなりがち(伸びがない)です。
もちろんスピン量が多ければバウンドがかなり高くなり攻撃力はあるのですが、ピュアアエロなどを使ったほうが安定性・攻撃力が高くなります。一番攻撃力がないのは、スピン量がそれなり(多くもなく少なくもない)にあるフラットドライブ系のボールです。その理由はある程度跳ねてくれる上、バウンド時に多く減速するからです。
簡単に言えば、コントロールモデルの方が、ボールが滑ってくるようなボールの伸びを出すことが容易です。
ピュアドライブなどの反発系ラケットでも、滑ってくるような伸びを出せなくはないですが、打ち手にしっかりと余裕があることが条件です。キュリオスやフォニーニの試合動画(ハイライトは良いとこしかないため×)を見てもらえばわかりますが、余力があるときはかなり速いショットを打っていますが、相手のボールがいい場合は、少しネットとのクリアランスをとっていると思います。逆に、18×20本のラケットを使っている選手や、95インチのラケットを使っている選手の場合、少しきつくてもしっかり打っていっています。その証拠に、ピュアドライブやEZONEなどの反発系ラケットを使っている試合は、1ポイントあたりのラリー回数が多いです。
ちなみに日本人は筋力がないから「ピュアドライブ(高反発ラケット)が良い(ボールスピードが出せる)」などと巷で言われていますが、これは完全に間違いです。ピュアドライブなどの高反発ラケットはコントロール性が低いためより丁寧に打つ必要があります。一方、プレステージなどのコントロールが高いラケットは、余力が少なくてもコントロールが乱れにくいため問題ありません。したがって、出せるボールスピードはそこまで変わりません。その証拠に1発の攻撃力もを求めている「モンフィス」や「ブラウン」はストリングが18×20本のコントロール系ラケットですし、リターンで180km/hを出す「ティエム」もピュアストライクの18×20のラケットを使っています。
デメリット
逆にデメリットは、反発です。
ボールを打った時、ラケットのシャフト部分やフープ部分(ストリングが通ってるフレーム)部分が歪んでしまいます。この歪みによりエネルギー損出するため、ボールが飛びが反発系ラケットと比べ少なくなります。もちろんコントロール性が良いためしっかり振れ、ボールスピードも出るのですが、勝てるかどうかは別として体力の消耗量が多いです。
また、スイートスポット(一点)から外れれば外れるほど一気に飛ばなくなります。ボレーは相手との距離が近いがためにスイートエリアを外しやすいですが、外したら外すだけ飛ばなくなるため難しいです。また、完全守りの時のストロークも同様です。
プレステージのスペック
mp | tour | pro | mid | S | |
---|---|---|---|---|---|
面積 | 98̻in | 99in | 95in | 93in | 99in |
ストリング | 18×20 | 18×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 |
重量 | 320g | 305g | 315g | 320g | 295g |
バランス | 310㎜ | 320㎜ | 315㎜ | 310㎜ | 325㎜ |
重量×バランス | 99200 | 97600 | 99225 | 99200 | 95875 |
フレーム厚 | 20㎜ | 21.5㎜ | 22㎜ | 20㎜ | 21.5㎜ |
フレックス(RA) | 61 | 65 | 65 | 65 | 不明 |
※フレックスは「テニスウェアハウスHPより」
プレステージは難しいのか
いよいよ、本題です。
プレステージMP
まずプレステージMPを考えてみます。また、参考までにウィルソンのブレードやバボラのピュアストライクとも比較します。
重量
まず重量ですが、320gのBPが310㎜で、この数値を掛け合わすと99200です。一方、ブレードとピュアストライク(共に18×20)は、305gでBPが320gなので97600です。(黄金スペックと呼ばれる300g320㎜の数値が96000です)プロスタッフRF97やウルトラツアー95CV(10万を超える)よりは、軽く感じる(持った感じ)と思います。スイングウェイトが323で、ピュアストライクやブレードは330半ばなので、取り回しは良いです。スイングした感じは、フレーム厚が薄い分とバランスが手前なため、重くても薄ラケらしい振り抜きやすさはあります。ストリングが18×20本の中ではトップクラスの操作性があります。
反発
次に反発に関してですが、ピュアストライク(RA66)とブレード(RA62)は、エネルギー損出を防ぐために断面がDの形をしたフレームを採用しているのに対し、プレステージはフィーリング重視でほぼボックス(長方形)です。したがって、プレステージは、ピュアストライクやブレードと比べて、飛びは気持ち控えめです。スイングウェイトを同じくらいにすれば、同じ位飛びそうです。
スイートエリア外の反発も下降率が高いです。外したら「外したよ!!」という情報が手にしっかりクリアに伝わってきます。ブレードもそんなに良くはないですが。ピュアストやTF40 305【インプレを見る】は降下率が低いです。
コントロール性
次にコントロール性ですが、ストリングパターンから見ていきます。クロス(横)のストリングの上下間隔は、あまり変わりがありません。メイン(縦)のストリングの横幅はピュアストライクとプレステージは、中心の間隔が狭く、フレーム付近の間隔は広いです。一方ブレードは中心から端までほとんど均等に配列されています。したがって、ど真ん中でフラットドライブで打った時の安定性は、ピュアストライクとプレステージのほうが高いです。
一方ブレードやTF40 305【インプレを見る】などは、スイートエリアを外した時、縦のストリングが均等なのでで、意図しない引っかかりがでにくいです。したがって非常に安定しやすいです。
スピン
次にスピンですが、ピュアストライク・プレステージは、縦のストリングの中心側の間隔が狭いことにより、けっこう控えめです。したがって、ど真ん中でフラットショットをすると、えげつなくボールが伸びてきます。逆に中心より少し下側で打ってあげると結構スピン量が多くなるため、スピンによる攻撃力や、スピンサーブやスライスサーブの変化量が増加するため、攻撃力が高いです。
難しいか、難しくないか
プレステージMPが難しいか難しくないかで行ったら、「難しい」だと思います。その理由は、センターで打った時とオフセンターで打った時の違いです。中心が細かいことで、思いっきり打ったときのコントロール性は高いですが、しのぎたい時など意図しない時は、安定しずらいです(少し丁寧に打つ必要がある)。だんだんスピードテニス化も進んできており、世界のトッププロでもフレームショットを一試合に何度もやってしまう時代です。
ただ難しさの一方メリットもあります。ストリング中心付近の安定感が高いですし、スライスやスピンサーブで、ストリングのスイートスポットから少しフレーム側のストリング間隔が広い場所で打つことによって、回転量を上げることができます。ピュアストライクでもできるのでは?と思いますが、しなりが少ない分、絶対的なスピン量は少なめです。
またボックス形状ならではの打感の良さもあります。ボックス形状のラケットでしか出せないクリアな打球感です。一番わかりやすいのは「ボールが潰れている感覚」です。打感が硬い(衝撃吸収性が良くない)とかではなく、ボールの存在がはっきりしていて気持ちいいです。
さらに、学生なら、ピュアドライブなどの反発系ラケットを使うより、飛ばないプレステージを使うことで、「筋力が欲しい」と考える可能性もあり、筋トレするきっかけにもなるかもしれません。筋力があれば、他のラケットに移行した時すぐに移行できます。ただ、未経験の人が使うのは、難しいかなと思います。技術がない時に使ってしまうと、ライバルだとか一緒にやっている人と差がつきやすく、テニス鬱みたいな楽しくない時ができてしまうかもしれないので。逆に負けず嫌いの方は、著しく成長しやすいのではないでしょうか?
プレステージMPはジルシモン選手が使っていると言われ、「沼」と呼ばれるような、シコラー(安全につなぐ・相手のミスを待つ)というプレースタイルです。ツアー14勝、グランドスラムベスト8、ATP最高6位という選手です。クエバス選手はプレステージMPと言われていますが、前モデルのグラフィンタッチなので95インチです
また、プレステージMPより難しいラケットも数多くあります。
まず一番印象に残っているのが、「グラフィンタッチ インスティンクト」です。フレーム厚が26㎜ありメーカーの定義でも高反発ラケットになっているのですが、全然飛びません。高反発といわれる「エックスワンバイフェイズ(ナイロンマルチ)【インプレを見る】」を張ったのですが、飛びが標準のポリを張ったプロスタッフ97(315g)より飛びません。プレステージmpと同じ位です。振り抜きは結構いいのですが、「よくここまで飛ばないラケットを一般女性が使っていたな」と感心してしまう位です。正直「ありえない」と思ってしまう評価ですが、海外の評価でもそんな感じで「飛ばない」と評価されていることがほとんどです。縦長のラケットなのでコントロール性も高くはありませんし。
後は、ウルトラツアー95ですかね。とにかく振り抜きがきついです。縦長のラケットで空気抵抗が少ない上、トップヘビーで、スイングウェイトが340(ピュアドライブが320・プロスタッフRF97が330半ば)あるため、ラケットが加速しないし減速しないしで、なかなか操作性が難ありでした。筋力が多ければ使えるのでしょうけどね。余裕があるときのボールの伸びのえげつなさもありますし。
プレステージtour
プレステージツアーは、プレステージMPより、1インチ大きくなって、ストリング本数も縦が1本減って、フレームも硬くなり、重量も軽くなってます。楽かな?と思いますが、フレーム厚が厚くなったこと、ストリングが一本少なくなったと言っても、1インチ大きくなったことで、少し振り抜きは遅く(空気抵抗で)なります。打感の硬さが少しあります。あんまり変わりません。
プレステージpro
95インチだから「飛ばない」と思われがちですが、D型のフレーム形状を採用していることや、フェイス面積が小さくなることで、フレームのよじれが出にくくなります。さらに95インチの影響で空気抵抗が少なくスイング速度が自然と上がります。その結果イメージの割に飛びます。MPだとかtourより飛ぶという人もいます。バランスが少しトップ寄りなのとフレーム厚が2㎜厚くなったことで振り抜きが落ちます。
ただ、95インチはスイートエリアが小さく、しっかり中心で打てる人向けです。一応、ジョコビッチやブライアン兄弟、ワウリンカ、シャポバロフなど、95インチラケットを使っているトップ選手が多いのも事実です。
まとめ
プレステージは、難しいか、難しくないかで言ったら「難しい」だと思います。
やはり、スピードテニスの時代にオフセンターショットのリカバリー能力はある程度必要です。
逆に、ピュアドライブも、難しいか、簡単か聞かれたら悩みます。「簡単」という声が世間一般では多いですが、勝つのが難しいか・簡単かと言われる点で悩みます。
ここに書いてありますが、ピュアドライブはピュアドライブなりのデメリットがあります。確かに余裕があれば、楽なのですけどね。また、人によって適正も変わりますし。
テクニファイバーから販売されているTF40 305ですが、ストリングが18×20で、反発はトップクラスです。コントロールが高いのにスイングウェイトが軽いため、振り抜きやすいです。特に打感「ここまで柔らかくしなくてもいいのでは?」と思ってしまうほど柔らかい(衝撃吸収性が高い)です。
絶対的な安定感で言ったらブレード18×20、コントロールで言ったらグラビティプロ、一発の攻撃力で言ったら、プレステージMP(振り抜きやすさ重視)&ピュアストライク18×20(飛び重視)・ウルトラツアー97(ドフラット一発)です。
参考になりました。プレステージツアー2021を購入しました。弾道がけっこうあがるようであればプレステージプロに移行しようと思ってます。
ガットは縦はナチュラルに決まっていますが、横糸が決まっていません。
横糸はホールド感を重視するなら、何がおすすめでしょうか。最近はハイブリッドのプロ選手が多いですね。
横ポリの方がスナップバック量が多いからでしょうか。
横糸をナチュラル1.25でもいいような気がしますが、スナップバック量が減るからでしょうか。
横ポリの理由は、縦横ナチュラルの場合、スピンがかからず球速が落ちてしまうからです。
ただ、「スピンがかかればいい」のではなく、フラットで打った時の”滑ってくるような伸び”も必要です。
横ポリは、基本的にはアルパワー・4Gが多いと思いますが(縦がナチュラルの場合)、このストリングは、フラットで打った時は球離れが早く、スピンをかけて打った時は少し遅くなっています。
したがって、フラットで打った時にスピン量が多くなく“滑ってくるような伸びがあるボール”を打てる、強打しても縦のストリングの動き量が少ないため面ブレが起きにくくボールスピードが出せる。また、ナチュラルガットの表面の摩擦の影響でしっかりスピンもかかる。というメリットがるのです。逆に言えば横糸のホールド時間が長すぎる場合は、強打した時に面ブレが起きやすく、ボールスピードが出しにくくなります(特に余裕がない時)(もちろん短すぎてもダメ)。
したがって、横糸のおすすめは、アルパワー・アルパワーラフ(ノーマルよりフラットが打ちやすい)・4Gあたりが第一選択肢になります。