テニスラケットの反発係数(反発力)と感覚の反発力の関係

テニスラケットの反発係数(反発力)と感覚の反発力の関係

2022年1月19日 0 投稿者: gura

 「ピュアドライブが飛ぶ」「プレステージが飛ばない」などは感覚の反発力で、テニスラケットの実際の反発力(反発係数)は、モデルによって差がありますが、高反発ラケットだから反発力があるとはならず、ほぼ一緒です。

 正直あまり知られていない考え方ですが、反発係数は、怪我のリスクだったり、出せるMAXのボールスピードなどに影響するため、意外と非常に重要です。中上級者や、怪我をよくする方は必ず理解する必要があります。



 実際の反発係数と感覚の反発力の違い

 まず、感覚の反発力の測定の仕方ですが、「軽めの一定のスイング力でボールを打った時の飛び」です。飛びが強ければ高反発になりますし、弱ければ低反発になります。先に説明しますが、ラケット重量やスイングウェイトが多いほど、同じスイング力でラケットを振ると、スイングスピードが低下します。

 実際の反発係数「同じスイングスピード(0を含む)の時の反発力」を示します。極端に言えば、「ラケットを完全に固定してボールをぶつけた時にどれくらい跳ね返るか」です。


 具体的な違い

 前書き

 「日本人は筋力が少ないから高反発ラケットを使うべき」だとか、「ピュアドライブ最強」だとか、「ストリングが18×20本のラケットは向いてない」だとか言われていますが、これは間違いだと思っています。

 高反発ラケットの方が、低コントロール(反発とは全く別物)です。少しでも意図してないスイングをしてしまうと、大きくムラが出てしまい、ミスショットになりやすいです。したがって、高反発ラケットはフォニーニのようにより丁寧に打つ必要があります。逆に高コントロール&高安定性のラケットは、意図しないスイングをしてしまっても、ショットのムラが少ないため、しっかり振っていってもミスになりにくいです(コントロールの許容範囲(スイングのスイートエリア)が広い)。もっと簡単に言うと、高反発ラケットは余力が4必要なのに対し、高コントロール&高安定性のラケットは余力が2でも問題なかったりします。

 したがって、出せるボールスピードは、ほとんど変わりません。ATPで爆速ウィナーランキングに載っている回数が一番多いのは、ピュアストライク18×20を使っているティエムですし、男子学生がピュアドライブ2018とグラビティプロを打ち比べた時、グラビティプロ[グラビティプロの魅力とはレビュー]の方が(誰でもわかるくらい)球速も、滑ってくるようなボールの伸びも、精度もかなり上でした。

 また、コントロール面は、高反発ラケットでめちゃくちゃ丁寧に打ったとしても、高コントロール&高安定性のラケットには及ばないと考えています。また、相手から攻撃されている時、ブロック的なショットが打ちやすいのが高反発ラケットかもしれませんが、ラインぎりぎりなどのカウンターショットが打ちやすいのは高コントロール&高安定性のラケットです。もちろん高反発ラケットでもカウンターショットは打てないことはないですが、自分のタイミングが合った時のみです。高反発ラケットは特に丁寧につないで「行ける」と思った時に打つスタイルです。

 ただ、コントロール性が高いラケットは一般的に、ラケット重量が増えるため、一般の女性がグラビティプロを使えるかとなると、使えないになります(筋力がしっかりあれば使えますが)。


 反発係数

 反発係数は、ピュアドライブ2021が41.0、EZONE100(前作)が41.2、プロスタッフ97(V13)が40.9、グラビティプロが41.9、ブレード18×20(V8)が41.4(前作42.0)、プレステージプロが41.3、TF40 305(初代)が41.4、プロスタッフRF97が(V13)42.5などと、ほぼ変わらないというか、高コントロールラケットの方が高いです。※単位は%(tennis warehouseさんの測定数値)

 基本的には高コントロール&高安定性ラケットなら、残しておく必要がある余力が少ないため、重量が重くスイングスピードが上がらないラケットでも、同じ位のスイングスピードにすることができます。したがって、この反発係数位のボールスピードが出せます。

 では、この反発係数が何を表すかというと、出せるMAXのボールスピードです。基本的に、この数値が低いほどMAXのボールスピードが遅くなり、高いほどMAXのボールスピードが速くなります。

 39.9しかないラケット(ボックス形状の)を使ったことがあるのですが、感覚の反発力は少し強めだったので、軽く打つショットは全然問題なかったのですが、しっかりボールスピードを出したい時に、全然ボールスピードが上がっていきませんでした。理由としては、空気抵抗がスイング速度の2乗、つまりスイングスピードが1.2倍になった場合空気抵抗が1.2×1.2=1.44倍になるため、スイング力を1.2倍にしても、スイング速度が1.2倍にならず1.1倍とかにしかならないからです。プロスタッフ97(V13)を借りた時も、同じ感じでした。
 ※反発系が低いのになぜピュアドライブなどが反発性が強いのかというと、ラウンド形状のため、水平方向のスイングスピードが、少ない力でも上がるためです。新幹線や飛行機・車・ロケットなどが流線形というか、先端が細くして、空気抵抗を減らしているのと同じです。したがって、同じ反発係数のラケットの場合、ボックス形状のラケットの方が、ボールスピードが出にくいです。

 MAXのボールスピードが出ないだけならいいですが、そのラケット(39.9の方)の所有者は、ボールスピードをより出そうとして、力んで打ってしまった結果、打点が詰まってしまい常にテニス肘状態(そこまで重症ではない)でした。

 逆に、反発係数が高いほど、空気抵抗の影響力が少なくなるため、MAXのボールスピードが出せます。また、余裕ができるため、脱力して打てたり(けが防止)、繊細なコントロール、ミスの低減など様々なメリットがあります(適正外はNG)。

※おまけ
 ピュアドライブは高反発だから、「反発係数さえ重りテープなどで上げてあげればボールスピードが出るのでは?」と思ってしまいますが、あながち間違えでもないです。ただ、操作性が良くないと意図しないスイングになりやすいですし、コートに入れるためのコントロール性も必要なため、使い方次第です。(球速が速くなるほど、1㎜のミス10㎝ではなく20㎝30㎝などとより大きく影響するためコントロール性も重要)


 カスタム

 基本的に、
一生懸命振らないと求める球速が出ない かつ 振り遅れが少ない
コントロール性が足りなくてしっかり振れない
オフセンターショットをした時のミスが多いorど真ん中で打つためにタイミングを計っていると振り遅れる
打点が近かったり遠かったりしやすい(初心者は除く)
という方は、ラケットのカスタムをした方が良いです。

 ただ、ストリングの影響もあります。ラケットの反発係数とストリングの反発係数を足したものが実際の反発になるので、飛ばないストリングを使うと上記と同様の症状が出やすいです。ただ、日本のストリングのインプレを見ていると、ストリングの弾きの速さだったり、着地までの距離だったりを見て飛びを判断することが多く、実際の反発性とは一致しない場合が多いです。特に象徴的だったのが「最高反発」と評してる人が多い「ヨネックスのポリツアーファイア[レビューを見る]」ですが、実際の飛びは、かなり弱かったです。全然球速が出ませんでした。また、「ナイロンストリング=飛ぶ」と評している人も多いですが、実際はストリングの摩擦によっ面ブレを起こすスナップバックが小さいことによってしっかり振れる点や、スピンの少なさから着弾点が伸びている点、フラットでスピンが少ないことによるバウンド後水平方向のボールスピード(低スピンの方がバウンド時の減速量が少ない[リンク先で解説])から「高反発」と判断しているだけで、意外と飛ばないです。ともに高反発といわれる「アルパワー(ポリ)[レビューを見る]」と「エックスワンバイフェイズ(ナイロンマルチ)[レビューを見る]」が同じ位の飛びです。



 カスタム方法

 実際のカスタム方法ですが、コントロール性&安定性を上げるカスタムが一番お勧めです。単純に反発性を上げるカスタムもできなくはないですが、コントロール性がなければ球速が活かせないので。


 実際の荷重量ですが、合計1gだけでも結構変わりますが、合計2g荷重(スイングウェイトが10・反発係数が1程度上がる(3時&9時の位置))してみた方が分かりやすいかなと思います。操作性も落ちてしまうので、操作性を上げるカスタムも同時にすることをお勧めしてます。

 関連リンク