ピュアアエロが合わない(苦手) と思う人向けの対処法
2021年2月4日バボラのピュアアエロは、テニスのダブルスの世界大会で、必ずと言って良いほど目にするラケットです。シングルスはウィルソンのブレードがトップシェア(ATP)ですが、ダブルスではピュアアエロのように見受けられます。
ただ、良くも悪くもピュアアエロは、尖った性能のラケットで、勝つ負けるは置いておいて、好みのはっきりするラケットです。
ピュアアエロの特徴
ピュアアエロの最大の特徴はシャフト部分が三角形の形をしているところです。
ここに詳しく書いてありますが、三角形のシャフトにすることで、縦振りの時の振り抜き性能を上げて、スピン量を増やしています。
また、ワイパースイング等で思いっきり振ったときスイートスポットを外しやすいですが、外した時でも安定してボールが飛んで行くように、シャフトの剛性も高いです。またボレーも相手との距離が短くスイートエリアを外しやすいですが、同様にシャフトの剛性が高いため、ぼてぼてになりにくいです。
他にもいろいろなメリットがありますが、長くなるため上記のリンク先のページをご覧ください。
ピュアアエロの合わない点・解決法
では本題に入ります。ピュアアエロの合わない理由はだいたい
・フラットドライブが安定しない(飛びすぎる)
・フラットドライブのボールの伸びがない
・打感が硬い(柔らかくなってきています)
・取り回しが悪い
の4つだと思います。
フラットドライブが安定しない
一般的に「飛びすぎ」と言われる現象がこれです。正確には「飛びすぎ」ではなく、ラケットのコントロール性の低さが問題です。
テニス仲間から「技術がないからだ!」と言われることもあると思いますが、軽いラケットにストリングを緩く張って使ってもらいましょう。
トッププロ以外は、基本的に好みの問題のため、合わないの思ったら、解決法を試すか、ラケットを変えましょう。テニスはメンタルも影響するスポーツなので、嫌いなものでは良いパフォーマンスが出せません。
脱線しましたか本題に入ります。
ピュアアエロは、圧倒的なスピン量を攻撃の糧(かて)とするラケットです。ナダルのようにバウンド後、身長近くまで跳ねさす(極論ですが)ことで、相手のミスショットを誘い、最後にウィナーを取りに行くラケットです。スピンがかかるように、かなりストリング間隔が広くなっています。その結果、スナップバック量だったり、ストリングのたわみ量が多く、フラットドライブの精度・安定感が低いです。
ここに詳しく書いてありますが、ピュアアエロのようにスナップバック量が多いと、面ブレや意図しない引っかかりが出やすく、これがコントロールの乱れやすいです。
逆に言えば、フラットドライブで攻めていくラケットではありません。フラットドライブの安定感が欲しければ、ピュアストライク16×19などにするべきです。もちろん上級者になればなるほど、スピンによる攻撃だけではなく、フラットドライブの精度もある程度は必要になってきます。
さらに言ってしまえば、ピュアアエロを使っているとされる、ナダルやソックなどは、過去のストリング間隔が狭いモデルを使っています。つまり、スピン量が落ちる一方、コントロール性は高いラケットを使っているのです。新型も試してみたみたいですけど、ナダルは2005年モデルのものに戻りました。
フラットドライブの安定感を出すには、技術でも少しは改善できますが、ラケットのセッティングを考える必要があります。
対処法
一番手っ取り早い対処法は、「ストリングを変えること」・「張るテンションを上げる」です。
RPMブラスト【インプレを見る】の1.25㎜を張っている方が多いと思いますが、競技としては少し柔らかい(伸びる)ストリングです。スナップバック量が多く面ブレしやすかったり、テンション維持性がなかなか良くなくコントロール性の低下度が速かったりします。実際のコントロール性は、平均の3(このサイトのインプレ基準(MAX5))です。
ナダルは、安定させる(スナップバック量を抑える)ために1.35㎜を55lbで張っています。できれば、面ブレを抑制するために、1.30㎜以上を、50lb以上とかで張ることをお勧めします。あとテンション維持も良くないので、3ヵ月だとか使うと、コントロールしにくいです。ハードヒッターだと切れてなくても、1週間とかで伸びっ切っていることがありました。ピュアアエロには、ローテンションで張りすぎると難しいストリングです。
※太ゲージや高めのテンションで張ったりすると、ラケット自体の反発性は落ちますが、コントロール性&安定性が上がるため、ボールスピードがしっかり出せます。
一番良いのはナダルも使いたかったとされるルキシロンの「オリジナル[インプレを見る] 」を張ることだと思います。オリジナルのしっかりとした硬さ(伸びにくさ)があるため面ブレしにくいですし、硬さのわりに乗ってる時間(ホールド時間)の長さ、丸型のポリの中でトップクラスのスピン量[3.5/5点]があるからです。普通の丸いストリングなのでムラが出にくいです。コントロール性は[5/5点]てとこでしょうか。飛びも、標準よりあります[4/5点]。テンション維持に関しては1.30㎜なこともあって非常にいいです(コントロール面)。ハイパーG【インプレを見る】とか4Gシリーズよりも良いです。切断耐久も高いです。
※オリジナルの一番の良い点は、フラットドライブとスピンを打ち分けやすいところです。基本的に強打した時ホールド時間の長さからスピンが勝手にかかってしまうのですが、オリジナルとアルパワー[レビューを見る]は、フラットで強打した時のホールド時間が長くなく、面ブレを起こすスナップバックが起きすぎる前に弾いてくれます。「ホールド時間が長くない」と聞くと、「ハイパーG」のように「球離れが早いのかな」と思ってしまいますが、逆に標準以上のホールド時間の長さがあります(普通に打ったっとき)。ここまでホールドしてほしい時にしっかりホールドしてくれ、あまりホールドしてほしく無い時にホールド時間が短いのは、アルパワーとオリジナルのみです。
スピンがかかりにくいポリストリングを使うという手もなくはないです。シグナムプロのハイペリオンやファイアーストームは安いので試してみるのもいいかもしれません。ただ、ピュアアエロの強みであるスピン量を活かすには、スナップバックを小さくしてもスピンがかかるストリングが良いです。
ボールの伸びがない
日本では、ボールの伸びが必要な条件は「ボールスピード&スピン量」と言われています。この影響でピュアアエロを選んだ方も多いのではないでしょうか?
しかし、これは正確ではないです。これが本当ならすべてのプロ選手がピュアアエロを使っているはずです。間違いなくボールスピードとスピン量が両立できるラケットなのですから。
では伸びるボールとは何か?伸びるボールの条件は2つあります。
1つ目は、スピン量の多さとボールスピードの多さです。エッグボールなど高軌道で打った場合が条件で、高く跳ねてボールも加速したように感じます。一方、低軌道の場合は、トップスピンの影響で水平方向の速度は遅いですし、バウンド時の摩擦も大きいため、バウンド後のボールスピードも遅い上、オムニコートの場合適度に跳ねてくれるため、伸びが逆になく「ボールが軽い」となります。
2つ目は、スピン量の少なさです。ボールスピードのわりにスピン量が少ない場合、水平方向のボールスピードが速いですし、バウンド時の減速量が少ないため、滑ってくるようなボールの伸びが出ます。ほぼ無回転のボールの伸びはえげつないです。また、低軌道のスライスが滑ってくるように感じるのもその証拠です。バウンド後のボールの次の落下点までの距離は高スピンのエッグボールですが、バウンド後の”水平方向”の速度が速いのは低スピンのショットです。
トッププロはウィナー時の回転数が3600rpmなどと出ることがありますが、これは一分間当たりの回転数であり、ボールスピードが速ければ、コート内を飛んでいる際の回転数は少なくなりますし、160km/h等のウィナーを打つ際は、それなりの回転数がなければコート内に収まりません。また、伸びがなくても(減速量が多くても)元々のボールスピードが速ければ、バウンド後の速度も速く相手もミスしやすくなります。マレーは2000rpmちょっとで、「スピン量が少ない=ボールが軽い」なら、ボールに攻撃力がないはずです。それなのになぜグランドスラムを優勝できたのでしょうか?
対処法
滑ってくるようなボールの伸びを出したければ、「フラットドライブが打ちやすいラケットがベスト」です。確かに薄ラケの反発性は低いですが、コントロールが良い分(飛ばないノット≒コントロールが良い)余力が少なくてもコントロール出来るため、ボールスピードはそこまで落ちません。(もちろん振り遅れてたらダメです)
ルキシロンのオリジナル【インプレを見る】やアルパワーなどコントロール性の高いストリングを使うのもいいと思います。以下のリンク先から見てみてください。
打感が硬い
ピュアアエロは、オフセンターショットの安定性を出すためにシャフトの剛性を高めています。その結果、打感が硬くなってしまっています。
スピン系ラケットは打感が硬くなる傾向がありますが、ピュアアエロの総合的な打感(衝撃吸収性)は平均的(ストリングが16×19本のラケットの中で)だと思います。ただ、フレームの硬さ(特にシャフト部)だけに意識が行く場合、結構硬く感じてしまうと思います。
対処法
ストリングでより柔らかいセッティングにする場合、ナイロンだとかなり厳しい(すぐに切れる)ラケットなので、アイスコード【レビューを見る】を使ってみてください。打感的には餅のように衝撃吸収をしてくれます。ただ、伸び量は柔らかさの割に多くはなく、コントロール(4/5点)しやすいです。伸び量だけで言えば、リンクス【レビューを見る】だとかシルバーストリング【レビューを見る】などのように伸びないので、少し硬く感じてしまうかもしれません。衝撃吸収性は、ポリの中ではほぼトップで、ナイロンマルチを含めてもかなり上位に食い込みます。
具体的な対処法です。
まず、「ストリングを太ゲージにする」です。太ゲージにすることによって、ストリング同士の摩擦が増え、ストリングの伸びにくさ(硬さ)を感じにくくなります(衝撃吸収性が良くなる)。
次に、スロート部分のグロメットに「当て革をする」ことです。当て革をすることで、革がばねのような役割をし、少し打感が柔らかくなります。ただ打感がぼやけたり、しっとりとした感じになってしまいます。
これでだめなら、ピュアストライク16×19やスピードmpなどに変えるしかありません。
取り回しが悪い
ピュアアエロはラケットの先端を柔らかくするために、フレームの正面厚が薄く振り抜きがよさそうですが、スロートが三角形なことが災いし、ストロークを打つ際、「空気抵抗を平面で受けやすく、取り回しが悪い」と感じます。黄金スペックの中でも比較的振り抜きが良くないです。
また、片手バックの方は比較的オフセンターショットがしやすいため、黄金スペックと呼ばれる100インチ・26㎜のラケットなどの、安定性が低くいラケットを使うのは比較的難しいです。
対処法
これはもう、「ラケットを変える」という選択肢しかありません。どうしてもスピン量の多さとフラットドライブの安定性・オフセンターショット時の安定性を求めた結果、副作用として振り抜きの良くなさが出てきてしまっています。
軽量モデルのラケットは、慣性モーメントといわれる、動きにくさ(加速のしにくさ)が少ないですが、やっぱり軽量モデルは、スイートスポット(“エリア”ではなく)を外した時面がぶれたり、反発量が少なかったりします。
「筋力がなくコントロールモデルが使えない!」という方がいますが、コントロールモデルは、コントロール性が良いため(ストリングが暴れない)、普段よりスイングスピードを上げてもコントロールできます。また、威力はなくてもピンポイントでコースを狙っていけます。もちろん同じ18×20のラケットでも、コントロール性や安定性などは、ラケット・ストリングによっても変わりますが。
まとめ
ピュアアエロは、回転に特化したラケットのため、ピュアアエロをピュアアエロらしく使う(高スピンショット)とショットの攻撃力が非常に高い(最強クラス)ラケットです。しかし、その影響で副作用もいろいろ出てしまっています。間違った使い方をすると副作用の方が大きく出てきてしまいます。
ある程度は対処できますが、完全にはできないため、自分に合わなければ、変える選択をお勧めします。