飛びすぎというだけで飛ばないラケットにしてはいけない理由
2020年8月17日テニスラケットを、「飛びすぎ」だからと言う理由だけで、飛ばないラケットにしてはいけません。「飛びすぎ」だからと言って飛ばないラケットにすることで、失速してコートに収まっているだけになり、攻撃力のないボールになってしまう可能性があります。
飛びすぎと言われるラケット
「ハードスペック」や「ツアースペック」「薄ラケ」と呼ばれる飛ばないラケットは、コントロール性を追求した結果、副作用として飛ばなくなってしまっているだけです。したがって、「飛びすぎだから飛ばないラケットを使う」というのは間違っています。
「飛びすぎ」の意味
「飛びすぎ」の意味は、基本的に「コントロール性が低い」です。
反発系のラケットは、フレームを硬くし捻じれを抑制することでエネルギー損失量を減らしています。そうすると打感の硬さ・ホールド時間の短さが出てしまうため、ストリングの目を粗くしています。
その結果、スナップバックが大きくなり、初期接触点からボールが下側にずれることによって、ラケットのフェイスの下側がボールによって押され、フェイス面が下向きになります。そうすると当然ですがネットにかかります。逆に薄ラケは、スナップバック量が小さいため、ブレ量が少ないのです。
ボールスピードの出るラケット
正直、サーブやスマッシュは、高反発ラケットの方がボールスピードが出ます。
しかし、ストロークは別です。ボールの回転による変化量・タイミング・自身の余裕・ラケットの反発性・ラケットのコントロール性等様々な要因が満たされて、初めてボールスピードが速いショットを打つことができます。
例えば、ピュアドライブです。ATP選手で言うとフォニーニが使っていますが、100インチラケットの中で反発性はトップクラスです。ただ、コントロール性が薄ラケと言われるモデルと比べ低いです。したがって、フォニーニのように丁寧に打つ(テイクバックを小さくして打っている)必要があり、反発性の割にはボールスピードは速くないです。
一方ピュアストライク18×20ですが、フレックスも66でストリングが18×20で飛ばないように思えますが、ティエムは180km/hのフォアハンドウィナーを打つことができます。当然180km/hなんて連続では出ませんが、160km/h超えは、かなり多く出しています。
ピュアストライクよりピュアドライブの方がショットスピードが出るのは、フレックスが66で、18×20のラケットにしては硬め(エネルギー損失が少ない)なこと・縦ストリングの中心の間隔が狭い(多角形使ってもボールが持ちあがらないほど)ことによるコントロール性が理由だと思います。つまりパワーポテンシャルが高いのです。ただ、打感の硬さやホールド時間の短さ・スピン量などなど、デメリットもあり、調整も必要です。
ストリングの影響
ストリングのコントロール性も影響します。
打感が柔らかいポリが良いからと言って、伸びる量が多いポリを選ぶと、コントロールの乱れの原因になります。また「伸びる=衝撃吸収性が高い」とはならなく、伸び量が多くても硬いストリングがありますし、伸び量が少なくても打感が柔らかいストリングがあります。
ストリングのコントロール性は、たわみ量の少なさはもちろんですが、スピン量・フィーリングなども影響します。多角形ストリングは、たわみ量が少ない(一部のみ)影響でコントロール性が高いですが、スナップバック量が多いためフラットドライブの軌道の精密さは高くないです。
また「ローテンションがトレンド」とか巷ではなっていて、40lb前半で張る方とかいらっしゃいますが、これも良くはありません。正直ローテンションで張りすぎて、丁寧に打っているのにコントロール出来てない方も時々います。確かに音が高く(いわゆるカンカン音)、打感も少し硬くなりますが、打感や打音より、コントロール出来てないことに対して、ストレスを感じることもあると思います。
飛ばないラケットのメリット
コントロール性
面が小さかったり(必然的にストリングがタイトになる)、18本×20本のストリングの目が細かいラケットは、ストリングの安定性が高い(動き量が少ない)です。
先ほども述べましたが、スナップバックが多いほどコントロール性が下がります。
そこで、面が小さかったり、18×20などの目が細かいラケットを使うことで、スナップバックが小さくなり、フェイス面の安定性が高まります。フェイスの安定性が高くなることで、ネットすれすれをフラットボールで打ち抜けるので、ボールの伸びが出ます。
飛びすぎの対策方法
打ち方
基本的に高反発モデルはコントロール性が低いため、スイング力:コントロールが7:3、逆に反発モデルはコントロール性が高いため8:2などと、反発系モデルになればなるほど、コントロールに意識を抜けて打たなければいけません。正直どっちが勝てるかと言ったら、分かりません。
その証拠にATP選手は、ピュアドライブやアエロ・エクストリームなど高反発モデルを使っている選手もいますが、逆に18×20のラケットを使っているティエムやチチパス、95インチの18×19を使っているメドベージェフやジョコビッチなどもいます。
また、WTA選手も、ピュアドライブ・EZONEなどの高反発モデルだけではなく、グラビティMP・ブレード18×20・プロスタッフなどコントロールモデルと呼ばれる比較的低反発のラケットを使っている選手もいます。
したがって、高反発モデルの場合、丁寧に打つことによって「飛びすぎ」をカバーできます。
ラケットを買う
どうしても丁寧に打つことが性に合わない人、ティエムやズベレフ・ルブレフのように伸びのあるフラットドライブを打ちたい人は、ラケットを買うしかありません。
最近は、18×20のラケットも反発力が向上しており、ノーマルの場合、プロスタッフ97より、ピュアストライク18×20やTF40 305の方が反発力が高いなど、飛ばない16×19のラケットより18×20の方が飛ぶこともしばしばあります。(プロスタッフにはプロスタッフなりの良さがありますし、振り抜きが良いので2gでも荷重をすると反発は追いつくかもしれません)
正直ラケットにより個体差はありますが、筋力で選ぶというよりは、したいプレースタイルで選んだほうが良いかもしれません。
※一番下の関連記事にラケットの性能スコア一覧のリンクがあります。
ストリングを選び直す
特にポリストリングは、個性豊かで性能もピンキリです。
選択肢としてはまず一番にコントロール性が高いものにすることです。やはりコントロール性が低ければ、ラケットのパワーも自身のパワーも生かせません。
さらにラケットとストリングの相性もあり、「このラケットではよかったけで、あのラケットではダメだった」なんてざらにあります。
次に、一層のこと「飛びすぎ(コントロール性が低い)」ならもっと飛ぶセッティングにしてしまうのもいいと思います。飛んでくれればその分コントロールに意識を向けられますので。例えば、アルパワー・オリジナル(ルキシロン)・ハイペリオン・ファイヤーストームなどです。
※一番下の関連記事に「ストリングの性能スコア一覧」のリンクがあります。
セッティングを見直す
巷では「ローテンションがトレンド」とかいって、ローテンション張りを真似する人が多くなっています。しかし、先ほども述べた理由からも分かる通り「ローテンション」にはデメリットがあります。
ATPのグランドスラムを優勝している、ジョコビッチ・フェデラー・マレー・ワウリンカは60lb前後で張っていますし、WTA選手も1.25㎜を60lb前後で張っている選手も多いです。ここまでローテンション文化があるのは日本位なのではと思います。WTAでサーブが180km/h位?なので、それくらい出せる日本人なら、何かの技術を補う場合以外は、一定以上の高テンションで張るべきです。
したがって、1.30㎜の太ゲージにすることや55lb(高テンション化)など、少しストリングの面圧を上げるべきです。
誰もが「打感の硬い」「カンカン高い音がする」ことは好きではないはずです。しかし、コントロール性を補うには致し方ないことです。コントロールできない嫌さもあるでしょうし。
ボールの飛ばなさ
タイトルに「飛びすぎというだけで飛ばないラケットにしてはいけない理由」と書いてありますが、「むやみに飛ばないラケットにすべきではない」という意味です。
基本的にテニスラケット選びは、筋力とコントロールのバランス(ストリングを含めた)とプレースタイルで選ばなくてはいけません。飛ぶラケットに飛ばなくてコントロール性が悪いストリングは良くない組み合わせです。この状態からコートに収まらないからと言って、飛ばないラケットにしてしまうと、失速して相手コートに収まっているだけで、相手からすればすべてチャンスボールです。
サーブに関しては黄金スペックと呼ばれる「フェイス面積100インチ・フレーム厚26㎜・ストリングパターン16×19本」の方がパワーも回転量もあって、攻撃力が高いです。現にサーブの最速記録は、ピュアドライブです。
つまり、無闇に飛ばないラケットにすることで、失速してボールがコート内に入っている場合や、サーブの威力不足などのデメリットが生じる場合があります。
ベストは、アルパワー×ナチュラルにコントロール性が高いラケットだと思います。当然、大抵の方はコストで無理だと思うので、コントロール性の高いストリングを選んでください。
まとめ
基本的に、ある程度の筋力があれば、大抵のラケットは使うことができます。ただし、ストリングとの相性や、ラケット&ストリングのコントロール性等様々な要素がかかわってくるため、安易に飛ばないラケットにするのではなく、コントロール性の高いストリングを試してみてください。
その後、自分がしたいプレースタイルが違う場合、ラケットの購入をお勧めします。