片手バックハンドの女子のプロ選手が圧倒的に少ない理由

片手バックハンドの女子のプロ選手が圧倒的に少ない理由

2020年10月29日 0 投稿者: gura

 フェデラー・ティエム・ガスケ・ワウリンカやエナンなどの片手バックに憧れる女性も多いのではないでしょうか。

 「男子プロの片手バックの選手は?」と聞かれれば、すぐに答えられる方が多いと思いますが、「女子プロの片手バックのプロ選手は?」と聞かれても、なかなか出てこないと思います。

 ではなぜ片手バックハンドを使う女子選手が少ないのか、科学的に考察していきます。





 片手バックハンドと両手バックハンド

 片手バックハンドと両手バックハンドにはそれぞれのメリット・デメリットがあります。

 片手バックハンド

 片手バックハンドの一番の魅力はやはり、「攻撃力」でしょう。片手バックハンドは、回転軸より打点が遠いため、同じスイングスピードでもラケットのヘッドスピード(先端のスピード)が速くなります(角速度の原理)。さらに、少しきついボールでも、強打できるメリットもあります。



 逆にデメリットは、ボールへの対応力です。まず、ボールを打てる前後の幅が非常に狭いです。両手の場合少し振り遅れた(速すぎた)場合、手首を曲げて打てば打つことができますが、片手バックはできません。

 さらに、打点が前になるため、速いボールや伸びてくる(減速量が少ない)ボールに対し、振り遅れやすくなります。

 さらに、腕を背中側に振ることを日常的にやらないため、両手バックより繊細さはありません。

 高い打点も非常に力が入りにくいです。

 両手バックハンド

 両手バックハンドのメリットデメリットは、片手バックハンドの逆になります。


 メリットは、手首を使えるため上記のようにごまかして打てますし、打点もフォア・バックで同じ位置位なので、立ち位置を合わせやすいです。繊細さもありますし、高い打点も力が入りやすいです。


 逆にデメリットは、ボールスピードが出にくいことです。しっかりと手首のスナップを効かせて打たなければ、威力が出ないです。

 片手バックの女子選手が少ない理由

 本題に入ります。

 片手バックの女子選手が少ない一番の理由は、筋力だと考えられます。この理由だと片手バックの方がラケットのヘッドスピードが上がるため、片手の方が良いように感じてしまいますが、そうではないです。

 握力によるコントロール

 世界の男子プロ選手を見ても片手バックを打つ時「スイングスピードのわりにはボールスピードが出てないな」と思うことが多々あります。これは、スイートスポットを外しているからであって、プロ選手でも現代のスピードテニスでは、100%スイートスポットで打つのは不可能です。問題はその時です。


 スイートスポット(エリアではなく)を外すとラケットが上を向いたり下を向いたりします。男子選手はこれを握力で抑制していますが、女子選手はこれが難しいです。


 20歳~24歳の握力(一般人)が、男子は48kgなのに対し女子は28kgです。つまり、60%位の握力しかないわけです。ストロークは相手のボールにもよるのでサーブスピードで比べてみると、男子が200km/hで、女子が170km/hです。握力だけで換算すると、120km/hくらいまで落ちていないといけないですが、170km/hです。


 つまり、男子と比べボールスピードに対しての握力が少ないのです。その結果、スイートスポット(エリアではなく)を外すとラケットが弾かれ、ボールが暴れますしボールスピードも出なくなります。


 ここに片手バックハンドのグリップについて書かれています。

 ウエスタングリップで握れば、ラケットのブレはかなり抑制できますが、低く浅いボールなどの対応が難しいです。また、手首を曲げて打つとテニス肘の原因にもなります。

 高いボール

 男子はきついボールが来たら、基本的にはスライスで返します。しかし、女子の場合は、高いロブも多用します。


 男子の場合筋力が強いため、ベースライン後方から一発でウィナ―を取れてしまうため、取りにくいスライスで返すのですが、女子の場合はそこまで筋力がない人がほとんどなので、ロブが使われます。


 このロブに対し片手バックは、非常に力が入りにくく打ち込みにくいため、狙われやすいです。


 この対応がしやすいのは、絶対に両手バックです。

 打点の前後

 片手バックは打点が非常に前になります。フォアに比べ60㎝くらい前です。たかが学校の机一個分ですが、1/1000秒のテニスの世界では大きいのです。


 この60㎝をカバーしようとすると、必然的に60㎝下がらなくてはいけません。片手バックの方がボールスピードが出るためこれでいいのですが、フォアの方は、相手に60㎝分の余裕を与えてしまいます。フォアで主導権を握りたいなら前で打つ必要がありますが、それができなくなります。

 ティエムやガスケがそのいい例で、レシーブを含めかなり下がっていることが多いと思います。

 下がらないで打ちたければ、グリップを少し薄めにしてライジングを使わなければいけません。



 さらに片手バックは、前後に10㎝位しかボールを打てる範囲がないですが、両手バックは30㎝くらいあります。(同じ体勢の場合で、体を前後左右にずらせば広がります)




 片手バックか両手バックか

 女子選手の片手バックを否定するかのように、女子選手の片手バックが少ない理由を書いてしまいましたが、否定はしていません。


 高いボールに対する対処や、しっかりとした握力・腕力があれば問題ないと思います。逆に対応できる能力や努力を怠ると厳しいかもしれません。


 やっぱりテニスは楽しいのが一番です。フェデラーが好きで「片手バックにする」というのもありだと思います。そのほうが練習のモチベーションも上がると思います。楽しくなければ続きません。

 他

 片手バックの場合、ストリングのコントロール性が非常に重要になってきます。コントロール性の高いストリングは、少しスイートスポットを外しても、ボールの乱れが少ないです。


 また、緩いテンションで張るのもお勧めしません。緩いテンションで張ると、たわみ量の多さやスナップバック量の多さ(スピンをかけるのはスナップバック力)によるコントロールの乱れが生じます。

 ハイパーGなど硬く伸び量が少ない(ハイパーGのたわみ量が少ないという意味で、弾きが強いため嫌な硬さではないです)場合は、緩く張っても大丈夫です。


 基本的に打感が硬いではなく、伸び量が少ないほうがコントロール性は高いです。(ナイロンとポリで基準は変わります)
 硬すぎてスピンがかからないというのは、別です。



 ラケットも、黄金スペックと呼ばれる100インチ・26㎜ではなく、98インチや、100インチでもスピードやピュアストライク等、フレームやシャフトが細い方が操作性が良く、振り遅れにくいです。