テニスラケットとガットのコントロールを高める科学的方法

テニスラケットとガットのコントロールを高める科学的方法

2020年8月28日 0 投稿者: gura

 テニスラケットとストリング(ガット)の選び方やセッティングで、コントロール性は、大幅に変わることがあります。このページでは、科学的理由をもとに、コントロール性を上げる方法を解説していきます。





 コントロール性が変わる要因

 コントロール性が変わる要因は主に2つあります。「スナップバックの量」と「ストリングのたわみ量」です。

 スナップバック量

 まず、スナップバックです。スナップバック量が大きければ大きいほどコントロール性が悪くなります。

 この画像は、テニスウェアハウス(海外のテニスショップ)から引用させてもらったものです。説明するのに便利な画像だったため引用させてもらっただけなので、「Clearance」とかは、気にしないでください。

 スナップバックが起こるということは、上の画像の「Slide」分ボールがずれます(※打ち方やセッティングによってずれ量は変わります)。具体的に言えば、ボールとストリングの初期の接触点から、反発するまでの間にスナップバックにより下側に滑り込みます。そうするとフェイス面(ストリングの張ってある面)が押され、面が下に向きます。そうすると当然ですがネットします。少し弾道を上げて打てば解消しますが、伸びのあるストロークを打てなくなります。また、フラット気味で打った時と、縦振りで打った時の引っかかり量の差もコントロールの乱れの原因です。

 したがって、スナップバックの量が増えれば増えるほど、コントロールしにくくなります。


 ストリングのたわみ量

 汚い絵で申し訳ないのですが、スイート“スポット(一点)”を外した時のストリングの(力の)動き&ボールの飛びです。青い方がストリングが硬い(面圧)状態、赤い方がストリングが柔らかい状態です。スイング方向は上側です。

 実際は当たってないところが一番たわむということはないのですが、スイートスポットを外すと、フレーム側のストリングの方が短いため、速めに反発してしまいます。逆に中心側はまだ伸びている途中です。そのテンション差により、(絵で言うと)左側に飛んで行きます。面圧が高ければ、青い矢印のように飛びの角度の差は少なくなります。(トランポリンで少し端側で跳ねると分かります。)

 スイートスポットに当てれば問題ないのですが、使うのは人間ですから。プロでもスイートスポットはおろか、フレームショットもします。


 コントロール性を上げる方法

 コントロール性を上げる方法は、ストリングのたわみ量が多すぎならば、テンションを高くし面圧を上げます。そうすることでたわみによるコントロールの乱れが軽減されます。

 スナップバック量が多すぎならば、ストリングのゲージを太く(1.30など)します。ゲージを太くすることで、面圧も少し上がります。面圧が同じでも動きにくくなります。また、硬めのストリング(アルパワー・ツアーバイト・ハイパーGなど)を使えば、面のたわみ量やスナップバック量の少なさからコントロール性が高くなります。(硬くてもコントロール性が悪いものもあります)

 面圧は、ストリングパターンが細かいラケット(18×20や16×19でも細かいインスティンクトなど)にしても少し上がります。しかし、面圧というよりスナップバック(による乱れ)を少なくしていると思います。

 ただし、コントロールを上げるということは必然的にパワーとスピンを落とすことになるため、個人個人のコントロールとパワー&スピンのバランスを求めることが大切です。18×20本のラケットに、スピンがかかりにくいストリング(特にポリ)を張ってしまった場合、コントロールが難しくなります。テンションを緩めればかかるようにはなりますが、ストリングのたわみによるコントロールの乱れが生じます。

 巷では「ローテンションがトレンド」とか言われていますが、プロはプロなりに何かを補うためにローテンションにしているだけです。したがって、弊害も出ています。一般の方も、スイングスピードが速ければ、スナップバックやたわみ量が多く、しっかりとしたテンションにしなければコントロールできません。スイングスピードが遅ければ、ローテンションにした方が、体にやさしいです。トレンドではなく意図的にテンションを選ぶ方が、ショットの精度が上がります。

 また、「自分が得意なセッティング=相手が嫌なセッティング」ではありません。勝ちにこだわるなら、自分が好きでなくても攻撃力が高いセッティングにするべきです。




 コントロール性が高いラケット

 コントロール性の高いラケットは、ストリングパターンが細かいラケットです。18×20本の「ブレード」「プレステージ」「ピュアストライク」「グラビティ」「スピード」などです。「ウルトラツアー95」も16×20本ですが95インチと目が細かいので、比較的コントロール性が高いです。また、16×19でも、「インスティンクトMP」「ラジカル」「ブレード」「VCOREPRO」などが比較的目が細かめのラケットです。

 逆に「ピュアアエロ」「エクストリーム」「VCORE」など高反発や高スピンラケットは、スナップバック量やたわみ量が多いためコントロール性が低いです。したがって、高スピンのエッグボールやサーブを攻撃で使っていく方が、攻撃力・安定感ともに高いです。

※「ストリングの目が細かい=コントロール性が高い」ではなく、ボールのホールド時間だったりスピン量だったり様々な要素あってこそのコントロール性です。


 コントロール性が高いストリング

 先ほども述べてしまいましたが、アルパワー[レビューを見る]やツアーバイト、ハイパーG[レビューを見る]ポリツアーファイア[レビューを見る]エックスワンバイフェイズ[レビューを見る]・・・などが、コントロール性が高いです。RPMブラスト[レビューを見る]は、打感的には硬めのストリングですが、表面にコーティングされており、スナップバックが大きくなりやすいため注意が必要です。また、ハードヒットした時結構伸びるため、たわみ量も多いです。(標準的なコントロール性です)ナダルはフラット系の安定性を求め、ピュアアエロにRPMブラストの1.35を55lbで張るという、一般の人からすれば、鉄板仕様になっています。

 逆に柔らかいスピンストリング(ブラックコード)などをパワーヒッターがローテンションで使うと、スナップバックによる面ブレで、余裕がない時は半分の力とかでしか打てなくなる場合があります。


 まとめ

 ラケットとストリングのセッティングで、コントロール性を高めたければ、ストリングのテンションを高めるかゲージの太さを上げればいいです。また、コントロール性の高いストリングを使って下さい。

 ただし、面圧を上げると、パワーとスピン量が減るので、コントロールとパワー&スピンのバランスをとることが大切です。

追記

 グリップサイズについて細めを使っている方(特に男性)がいらっしゃいますが、ある程度太めの方が、オフセンターショットなどによる面ブレを抑制する効果があります。たかが外周が3㎜変わる(グリップサイズが1上がるだけでも変わります。)結構影響があります。詳細は以下のリンク先で解説しています。