テニスでの「脱力」の本当の意味とは(腕の力を抜く意味ではない)

テニスでの「脱力」の本当の意味とは(腕の力を抜く意味ではない)

2022年2月28日 0 投稿者: gura

 テニスでの「脱力」は、「力を抜いて体の回転と遠心力と腕のしなりと・・・を使って打つ」と解説されていることが多いですが、これは間違いです。

 「腕の力を抜け」「体を回転させて打て」「ラケットを軽く握れ」と言われることも多いですが、単純に腕の力を抜いたらスイングできませんし、ラケットを軽く握ったら、オフセンターショットをしてしまった時必ずミスになりますし(面ブレによるアウト・ネット)、プロを見てると当てただけでかなりのボールスピードが出ているため必ずしも体の回転を使う必要もありません。

 では、テニスでの本当の意味の「脱力」は、なんなのでしょうか。


 テニスでの「脱力」の本当の意味

 テニスでの「脱力」の本当の意味は、「意識の適切な分散」です。

 どういう意味?と思うかもしれませんが、これを理解すれば「力を抜け」と言われる意味が分かります。


 人間の意識の限界

 人間は、100の能力を持っていると仮定して、50の能力を使うと残りは50、70の力を使うと残りは30しかありません。

 意識に例えると、右手と左手で、右手に70の意識を向けると、左手には30の意識しか向けることができません。ただ、実際は視覚や聴覚などに向いている意識があるため、手だけに70+30の力を向けるのは不可能なので、一例としてみてください。

 例としては、一番はピアノだと思います。特に初心者の時は、右手を意識するため、全く左手で引けなくなるのがその例です。


 テニスでの人間の意識

 では、テニスに当てはめていきます。

 まず、分かりやすいようにフォアハンドストロークで考えます。

 意識するところは、「足の位置」「テイクバックの位置」「スイングスピード」「スイング角度」「スイングのタイミング」「体の回転」「相手の動き」などを意識すると思います。もっと細かく言うと「握力」だったり「体重移動」だったり「ターゲットに対する計算(相手のボールの影響や自身が出すスイングスピードや角度を弾き出す)」だったりもあります。

 単純に10個に10ずつ意識を向けると100になります(100が能力の限界と仮定した場合)。

 ただそこで、例えば「スイングスピードに15の意識を向けたい」となった場合、5の意識分は、足への意識や、スイングに対する意識などから、持ってくる必要があります。もちろんそうなると、打点が合わなかったり、オフセンターショットをしてしまったり、変なところに飛ばしてしまったりと、ミスショットになりやすくなります。

 つまり、意識を適切に分配させることができない場合、ミスショットの誘発や思いのほかボールスピードが出てなかったりしてしまうのです。

 もう少し例を挙げると、「相手のボールの伸びがすごくてそれに意識が行きすぎると、相手をしっかり見れず前に詰められて、得点されたり」、「ボールスピードを出すためにスイングスピードを上げようとして、オフセンターショットをしたり、足が合わなかったり」、「オフセンターショットをしないようにしっかりタイミングを計った結果振り遅れたり」などという感じです。

 「球出しだとボールスピードがしっかり出せるけど、試合になるとボールスピードが出せない」というのも同様です。

 あとは、一般的に言われる「力み」も、どこかの筋肉に意識的に力が入ってしまっている現象なので、他の意識がおろそかになっています。


 脱力したほうが良い場合・しない方が良い場合

 基本的には意識をしっかり分散させた方が良いのですが、一部「力を入れておいた方が良い場合」もあります。

 例えば「ストロークで強打したい時」が一番の例です。強打した時はどうしてもスナップバックによる面ブレが生じ、ネットにかかったりボールが上に飛んで行ったりしてしまうことも多いです。その時は、しっかりラケットを強く握ってボールを打つと面ブレを抑えられるため、ボールスピードが出せます。リターンなどの速いボールや変化するボールに対しても同様です。

 また、高いボールも、ボールが垂直に落ちてくる中、水平にスイングするため、ラケットのど真ん中で捉えるのが難しく、「面ブレによるミスショット」になってしまったり、力が伝わりにくくボールスピードが出せなかったりするため、しっかり握っていた方が良いです。

 シングルバックハンドの場合は、握力もしっかりかけて、手首しっかり固定して打つ方がベターです。理由としては、打点が前な分タイミングを計る時間が短いのと、通常人がやらない筋肉の使い方なので、そこまで器用ではなく、オフセンターショットになりやすいからです。ATPプロも、右肩の上あたりでスイングを止めていることが多いです。

 ボレーも、相手からの距離が短いためボールが自分の打点まで来るのが速いため、握力をしっかりかけ手首も固定した方が安定します。

 ただ、ずっと力が入っている状態だと、他への意識がおろそかになっていたり、持ち替えてスライスに切り替えたり、手首のスナップを使ってねじ込んだりできないので、力を抜きたい時は抜いている必要があります。

 正直に言ってこれは慣れなので、反復練習が必要です。力を入れるのだけれども、意識の量を最小限にする必要があるからです。ピアノのように慣れれば少ない意識でもできるようになる(左手にも意識を向けられるようになるように)ます。また、面ブレによるエネルギー損失も少なくなるので、球速も上がります。


 腕のしなりを使って打つ意味

 よく「腕のしなりを使って打つ」「手首を使って打つ」ことが「脱力」と言われてることも多いですが、”ボールスピードを出す手段”として間違いではないですが、使うべきか、使わないべきかは別の話になります。

 フェデラーが極端に使っているタイプで、逆に、メドベージェフは完全に固定です。ジョコビッチとマレーは中間位でリターンとかは固定している時が多いです。ナダルはしっかり使っています。

 手首は、メドベージェフのように固定した方が、オフセンターショット時の面ブレや、左右のコントロールの精度が上がります。逆にスナップを使って打つと、球速は出せるかもしれませんが、安定感は出しにくいです。また、球速が出せるといっても、使う人やラケットのコントロール性が高くないと難しいです。ただ、後ろから押すように(フラットに)打つ場合は、比較的打ちやすいと思います。

 また別記します。



 ショットで脱力するためには

 一番は反復練習です。余裕があれば、適切に意識を分散させてショットを打てるため、安定します。

 あとは、少しコントロール性&安定性の高いラケット(&ストリング)を使うことで、コントロールへの意識が少なくて良いため、少し脱力できると思います。

 特に275g以下のラケットは、反発力も弱いですし、面ブレを抑える荷重も少ないので、285g以上がおすすめです。振り抜きに関しては、270gなどはバランスがトップヘビー(バランスポイントが330㎜など)なため、軽量の割には振り抜きが良くないです。ラケットを重くすると、最初は重く感じるかもしれませんが、飛ぶのでテイクバックを小さくしても問題ないですし、慣れれば意外と使えます。中級女性なら300gのラケットを使っている方も多いです。どうしてもだめだったら、「操作性を上げるカスタム」をすると使いやすくなります。


 もう一つは、コントロール性&安定性を上げるカスタム」をすることで、少しボールが飛ぶようになるため、少し丁寧に打ってもボールスピードが出るようになります。


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