テニスラケットのコントロール・安定性を上げるカスタム方法

テニスラケットのコントロール・安定性を上げるカスタム方法

2021年11月5日 0 投稿者: gura

 ショットが、「狙ったとこに行かない」・「博打のような(低確率の)ショットになってしまう」・「速いボールに対して打ち負ける」・「ボールの伸びがない」などと、テニスラケットのコントロール性や安定性が良くない場合、いろいろなデメリットが生じます。

 特に日本では、「筋力が少ない日本人にはピュアドライブ最強説」があり、ピュアドライブのような高反発ラケットを選ぶ方も多いですが、高反発ラケットは、高反発の代わりにコントロール性が高くなく、丁寧に打つ必要があるため、意外にボールスピードが出ません。しっかり振りたい人にとっては「飛びすぎて使えない」と評価することが多いです。

 そこで、どのテニスラケットも、「コントロール性」・「安定性」を上げるカスタムをすることで、しっかりボールスピードが出せるようになったり、きわどいコースを狙ったりできるようになります。もちろん、コントロール性や安定性が上がれば、試合での勝率が上がりますし、メンタルに対してもメリットになります。





 テニスラケットのコントロールと安定性を乱す要素

 スナップバック

 テニスラケットのコントロールと安定性を乱す要因で一番大きいのが、「スナップバック」です。

 「スナップバック=スピン」と考えてる方は、スナップバックがなければ 「スピンがかからないからコントロールできないのでは?」「ボールが伸びないのでは?」と思ってしまいますが、ここでいうスナップバックは「量」の話です。ちなみにスピンが多くなる要素は、スナップバック「力」であり、「量」ではありません。また、ボールの伸びに関しては、低スピンの方が「滑ってくるようなボールの伸び」が出せます。


 では、詳しく解説していきます。

 「スナップバック」とは、ボールを打った時に、ストリング(ガット)が下側に滑った後、元に戻ろうとする現象(トップスピンストロークの場合)です。 意味的には「スナップ=かみつく」「バック=戻る」という意味で、ボールにかみつきながら戻るという意味です。

 下の動画のように、ボールが当たった時、ストリングが下側にずれて、ボールの勢いを殺した後ストリングが元の位置に戻ります。これがスナップバックです。


 ストロークの場合、ラケットの上側(空側)で打った場合、ボールの勢いによりラケットの面が上を向きます。逆に下側(地面側)で打った場合、ラケットの面が下に向きます。これは皆さんお分かりだと思います。物体(ラケット)と物体(ボール)が衝突するとその反動でラケットがブレるのです。簡単に言うと「振子についた鉄球に衝撃を与えると左右に往復運動する現象」です。

 そこにスナップバックの現象も入れていきます。例えば、完全にど真ん中でボールが打てた時でもスナップバックによりボールが下側に滑り、ボールが中心線(ラケットヘッドからグリップ)より下側で打つことになります。その結果ラケット面の下側がボールによって押されるため面が下向きになり、ミスショットになるのです。

 この現象は、ストリングの動きが多いものほど顕著に影響が出ます。例えばピュアアエロ(バボラ)やエクストリーム(ヘッド)などのストリング間隔が広いラケットや、伸び量が多いストリング「ブラックコード(テクニファイバー)」や「リンクス(ヘッド)」です。逆に、ストリングが18×20本のラケットや、アルパワー[レビューを見る]ハイパーG[レビューを見る]等の伸び量の少ないストリングは、影響が少ないです。




 コントロール性・安定性をよくする方法1 荷重(第一選択肢)

 面ブレを抑制するのに、ラケットの重量が重要になってきます。物理的には「慣性モーメント」という少し難しい言葉を使うのですが、詳しい説明は割愛します。

 基本的に面ブレを抑制するのに必要な荷重は、ラケットフェイスの3時・9時側の荷重です。そこに鉛テープ(重りのテープ)を張ることで、コントロール性や安定性(ショットのムラの少なさ)が上がります。

 もう少し詳しく言うと、回転軸からの荷重までの距離の2乗の効果があります。つまり、回転軸(ラケットヘッドからグリップ部の中心線)から荷重の位置が遠ければ遠いほど、面ブレの抑制効果が高いのです。距離が1.2倍になれば、1.44倍の面ブレ抑制効果が出ます。

 ピュアドライブがオフセンターショットをしてもしっかり飛んでくれる理由は、ラケットの歪みとかよりもこの荷重量の多さがあるからです。

 逆に、インスティンクトや前作のVCORE PRO・ウルトラツアー95などは横幅が短い(縦長)ラケットなので、3時&9時側の荷重位置が回転軸に近い影響で面ブレがしやすい傾向にあります。93インチのラケットなどは横幅が狭いため、外すとほんとに飛ばないです。

 日本では、重りテープを2時&10時の位置につけている方が多いですが、あまり静止重量を増やさないで反発&コントロール性を出すという意味では不正解ではありません。しかし、反発が増えてもコントロール性がなければボールスピードが上がりにくいことと、低反発でもコントロール性が高ければボールスピードが出せることから、コントロール性が一番高くなる、3時&9時の位置に加重したほうが良いと考えています。


 どのくらい荷重するか

 3時&9時の位置に2g(裏表左右0.5gずつ)ずつ加重すると、スイングウェイトが10前後上がります。ただ、スイングウェイトの10は結構影響が大きいため、大胆に行くなら1gずつ、慎重に行くなら0.5gずつ荷重していくことをお勧めします。

 意外と1gでもはっきりと効果があります。正直に言って素振りをした感じはそこまで影響を感じませんが、リターン等少しきついショットを打つ時は、全然違います。


 番外編 操作性をよくするカスタム

 ラケットの操作性が良くなく、振り遅れたり、オフセンターショットになってしまう場合は、「ラケットの操作性をよくするカスタム」をした方が、コントロール性や安定性が上がります。

 また、コントロール性・安定性を上げるカスタムをした場合も、操作性をよくするカスタムをした方が扱いやすいラケットになると思います。





 コントロール性・安定性をよくする方法2 その他

 ストリング自体

 伸び量の少ないストリングを選ぶことで、スナップバック幅が小さくなり、コントロール性や安定性の向上につながります。

 大坂なおみ選手も、以前は縦がポリツアープロ・横がナチュラルでしたが、現在は縦がポリツアーストライク・横がナチュラルになりました。ポリツアーストライクはポリツアープロより結構飛ばないですが、伸び量が少ないためにコントロール性が良く、逆にボールスピードをしっかり出せるようになるのです。

 また、300g未満のラケットを使っている方は、面ブレ抑制効果のある荷重の量が少ないため、ストリング自体の摩擦が多い(スナップバックが少なくなる)ナイロンストリングを使った方が、コントロール性を補えます。


 ストリングの太さ

 ストリングの太さを、1.25㎜から1.30㎜などの太ゲージにすることで、ストリングの伸び量の多さを抑制できるため、面ブレ量が減りコントロール性・安定性の向上に繋がります。

 特にストリング間隔の粗い、エクストリーム(ヘッド)やピュアアエロ(バボラ)などの場合、アルパワー[レビューを見る]など一部を除いて、太ゲージにした方がコントロール性や安定性が高いです。


 ストリングのテンション

 日本人は特に「打感が硬いのが嫌い」という意識が強く、40lbや45lbなどとストリングをローテンションで張ることが多いです。

 ローテンションで張ることで、少し反発性が増えるため、余裕があるときはしっかりボールスピードが出せるかもしれませんが、走りながらのショットや、相手からのボールが速い場合などは、どちらかというと繋ぎのようなショットしか打てません。

 逆に50lb以上のハイテンションの場合、安定性が高く、走りながらのショットや相手からのボールが速い場合でも、しっかり攻撃力のあるボールを打てます。

 ボールスピードも、高テンションで張るとストリング自体の反発力は弱くなりますが、コントロール性が上がるため、MAXのボールスピードが上がります(特に伸び量の多い、ポリツアープロやリンクス・ブラックコードなど)。


 ストリングの張り替え頻度

 ポリストリング・ナイロンストリング、共に徐々にコントロール性や安定性が下がっていきます(ラケットに張っている状態の場合)。したがって、切れなくても定期的に張り替えたほうがコントロール性や安定性が高いです。

 特にポリは1週間以上たつとだいぶコントロール性が下がりますし、3ヵ月目に入るとコントロールできないだけではなく、怪我のリスクも大きくなります。通常は1カ月以内、本当に長くても2ヵ月に内には張り替えてください。

 ちなみに打っている本人が分からなくても、1ヵ月過ぎてると明らかにボールスピードが遅いですし、ボールの伸びがありません。JTAのランキングを持っている選手でも、3ヵ月経つと全然ボールが伸びてきません。

 ナイロンの場合は、1週間でもコントロール性や安定性が下がるのは間違いないですが、ポリ程一気には下がらないので、3ヵ月に1回程度は張り替えたほうが良いです。


 振動止め

 あまり影響は大きくないですが、振動止めのあり・なしでもコントロール性が変わります。

 フェイスの下側に付ける四角形(他の形もあり)振動止めを付けることで、中心のストリングの動き量が少なくなるため、中心で打った時の、コントロール性は少し高くなります。

 ただ、振動止めは打感がぼやけるということがデメリットになるため、付けるとコントロールしにくい方もいらっしゃいます。逆に言えば、振動止めを外したほうがコントロールしやすい人もいます。ちなみにプロが振動止めを付けているのは、好みもありますが、振動吸収性の良くない過去のラケットを現行の色に塗装して使っていることや、プロ用に設計されたラケットを使っていることが多いためです。現行の市販ラケットは振動吸収性がかなり高く、意外と振動止めが無いほうが良かったりします。

 ちなみに振動は、完全に消すのは非常に簡単です。ただそうすると打感が手に伝わってこなくなってきてしまうため、ショットが安定しなくなります。そこで、「打感のクリアさを残しつつ、嫌な振動だけをどれだけ取り除けるか」がメーカーの勝負所になっています。




 まとめ

 テニスラケットのコントロール性・安定性を上げる方法は主に「ラケットフェイスの3時・9時側に荷重をすること」・「ストリングやストリングのセッティングを見直すこと」です。

 ラケットフェイスの3時・9時側に荷重するとやストリングを見直すことで、面ブレを抑制できるため、コントロール性・安定性が上がるのです。

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