上級者向けテニスラケットとストリングの選び方とおすすめ
2020年7月27日 初級と上級ではラケットのストリングの選び方が違うのはご存知でしょうか?
初級の場合、ミスを少なくしたり、それなりのスピードボールを打てば得点が取れます。しかし、上級者になればなるほど、ミスしないのは当たり前になる上、スピードボールを打っても決まらないことが多くなります。また、相手のボールも同様になり、ミスしないで返すのが難しくなります。
つまり、得点を取るには、前後左右に厳しいコースだったり、スライスやエッグボールなどを使った緩急があるショットだったり、フラット系の伸びるスピードボールなどを打たなければなりません。
そこで、このページでは、ミスを極力減らした上で、攻撃的なショットが打てるようになる、ラケットとストリングの選び方をご紹介します。
ラケットとストリングの組み合わせ
基本的に各ショットのテニスラケット一式の影響は、ラケット:ストリングの比率が50:50と言われています。(今回ストリンガーの影響は無考慮)
また、AのラケットにBストリングは合うけどCのストリングはまったくダメだったということがかなりあります。飛びやスピン量もありますが、同じような性能でもフィーリング的に苦手でショットが安定しないものもあります。
したがって、高いパフォーマンスを出したいなら、ストリングとラケットを同時に選ばなくてはいけません。
厚ラケと薄ラケ
上記のリンク先で詳しく解説していますが、薄ラケは、コントロール性を上げる副作用で低反発になってしまっています。
ストリングパターンだけで言えば、スピンがかかるほど軌道の精密性が落ち、スピンがかからないほど、軌道の精密性は上がるのですが、ネットとのクリアランスが取れないため、安定感に欠けます。
薄ラケはストリングが同じ16×19本でも、中央部分の間隔をタイトにし、コントロールの乱れの原因となるストリングのたわみ量やスナップバック量を抑えています。ただそれだけだと、ホールド時間の欠如や打感の硬さ・スピンのかかりにくさがあるため、フレームをしならせることによってカバーしています。
これが、薄ラケの特徴です。
逆に厚ラケは、スナップバック量やストリングのたわみ量が多く、軌道の精密性に欠けます。また、低軌道で打つことが比較的難しいため、滑ってくるようなボールの伸びは出しにくいです。正直最初は、「コントロール性が低くても丁寧に打てばカバーできるだろう」と思っていました。しかし、ある程度はカバーできましたが、“絶対的な精密性”は、薄ラケでしか出せませんでした。
プロ
フェデラーやサンプラスは85平方インチ(過去)、ジョコビッチは、95平方インチのヘッド・スピード、ワウリンカも95平方インチのヨネックス・ブイコアプロ、マレー・ガスケ・錦織・ティエム・ズベレフ・チチパス・ブライアン兄弟・・・も薄ラケ(準薄ラケを含む)です。さらに、ジョコビッチ(今は18×19)・ティエム・ズベレフ・チチパス・ブライアン兄弟は18×20のラケットです。
逆に、黄金スペックと言われるラケットを使っているのは、ナダル・フォニーニ・イズナーなどと、かなり限定されています。
ナダルは高スピンボール。フォニーニは、テイクバックを小さくして安定性を出す。イズナーはビックサーブなどと、100インチを使う人ほどプレーに特徴があります。
基本的に何か他人にはできない強みを持っている選手以外は、23㎜以下の薄ラケです(ATP選手)。WTA選手においては、中厚ラケから、ブレード18×20や95インチなど多種多様です。
これらのことから、「周りの人より筋力がないけど、飛ぶラケットにすれば勝てる」という方程式は成り立ちません。高反発のモデルはコントロール性が良くなく余力が多く必要です。逆にコントロールモデルは、余力が少なくても大丈夫です。したがってボールスピードはそこまで多く変わりません(薄ラケの方が落ちるがボールの伸びがある)。もちろん、年配の方が93インチの18×20のラケットを使うのは難しいと思います。60台男性でもストリングさえしっかり選んであげれば、準薄ラケ程度の方が扱いやすかったりします。
ストリング
ストリング選びで一番重要なことは、コントロールです。ストリングは数多くありますが、コントロールの悪いストリングは、自身のスイング能力を引きだせません。コントロール性が高いことで、ショットの精密さや威力が出せいます。
パワーアシストについては、当人が扱えるパワー量のラケットとストリングのセッティングにするとすると、薄ラケ×飛ぶストリング・厚ラケ・飛ばないストリングという選択肢があります。
前者の方が、スピン量は少ないですが操作性が良く伸びのあるショットが打てます。
後者の方が、スピンで安定はしますが、伸びるストロークを打つのは難しいです。また、ボールの伸びがない分、きわどいコースを狙わないといけません。したがって、エッグボールなどの利用も含め緩急をつけて試合運びをできる人向けです。スピンサーブやスライスサーブは圧倒的なメリットになります。
同じパワーを求める場合、飛ぶストリングを選んでから、ラケットを選ぶ方が、ラケットのコントロール性の良さからショットが安定します。逆に極端(例なので)ですが、120平方インチのラケットに、飛ばないストリングを張った場合、サーブやスライスはいいかもしれませんが、ストロークは操作性の良くなさやコントロール性の低さからきわどくないコースに伸びのないボールが行きやすいため攻撃力に欠けます。また、サーブなどの速いボールは振り遅れやすくなります。下がれば取れますが、ドロップやアングルサーブを打てる人が相手の場合、致命的です。
例外としてナダルのようにスピンによる攻撃の場合、薄ラケでやってしまうと、縦振りした時に、オフセンターの飛ばなさや、水平方向のボールの遅さが出てしまうため、ピュアアエロなどの中厚ラケットの方が良いです。
「プロと一般人は違う」という方がいらっしゃると思いますが、パワーとコントロールのバランス(プロはパワーがありコントロール性も高い:一般人はパワーがそれほどでコントロールもそれほど)&相手のレベル差は、同程度だと思います。
おすすめストリング
おすすめのストリングは、好き嫌いやプレースタイルで変化します。嫌いな打感で試合をすれば、メンタル面で不安定になります。フラット系の飛ばないラケットでスピン量を多くした場合、球速も遅く(滑ってくるような)伸びも少ないという、相手のためのボールになってしまいます。
基本的には、「スピン量を多くし相手を崩すナダルのような戦法」、「スピン量をそ少し多くし(安定感重視)、ダウンザラインやアングルショットを狙っていくフェデラーのような戦法」、「ワウリンカ・ティエム・ズベレフなどフラット系の伸びのあるショットで崩していく戦法」の3つから選ぶことになります。他にはサーブ重視、ミスの少なさ重視などがあります。
好き嫌いについては、「好き=攻撃力が高い」とならないことが多いです。当然嫌いの場合は、メンタルに不調をきたすので、絶対にダメです。
柔らかい打感が好きな人が多いですが、「ストリングの伸び量が多い」という意味の柔らかさの場合ハードヒットした時のコントロール性が落ちます。エックスワンバイフェイズのように、ストリングの伸び量自体は少なくても、打感の柔らかさ・ホールド時間の長さが素晴らしいストリングがあります。
つまり、打感の柔らかさは、ストリングの伸び量・衝撃吸収性能・ホールド時間の長さの3種類がありますが、伸び量の多さに関してはコントロールの乱れの原因となります。
ソリンコ ハイパーG
5角形のため非常にスピンがかかります。ソリンコのツアーバイト・ヨネックスのポリツアースピンには、スピン量が劣るものの、弾きが強いため打感が軽いです。ストリング自体硬い(伸びにくい)と思うのですが、衝撃を吸収は、他の多角形と比べ比較的いいと思います。
海外のストリング評価サイトで、ポリ部門におけるベストストリング2016年(2017以降の発表はなし)で1位です。他のランキングには10位までの発表のため入っていません。このストリングは、5角形のスピンストリングです。
コントロール性が非常に高く、どんなに振っても乱れにくいです。ただ、スピンをかけて打つことが条件で、低スピンのフラットドライブは、多角形特有の難しさがあります。
ホールド時間が少なくすぐに弾いてしまうので、テンションを少し落として張ったほうが、スピン量が増える上コントロールしやすいと思います。パワーアシストが少ないため、100インチの反発系もしくは、98インチの高反発系(ピュアドライブVSなど)に張るのがおすすめです。
ルキシロン アルパワー
言わずと知れたアルパワー。パワーとコントロールを高次元で両立させたストリングです。外した時は硬く腕の負担は大きいですが、ショットの攻撃力はトップクラスです。ただ、ルキシロンシリーズは価格が高いです。
バボラ RPMブラスト
こちらも言わずと知れたRPMブラスト。スピン系のストリングですが、角がない(rの小さい円径)上にシリコンコーティングがされています。その影響でスピンをかけたい時はしっかりかかり、フラットドライブで打ちたい時は、スピン量が少なく滑る様なボールの伸びが出せるストリングです。良い意味でも悪い意味でもムラがあります。
ただ、多角形ストリング特有のデメリットも少しあります。
打感的には、ずっしりとした打ちごたえのある打感です。
テクニファイバー アイスコード
メドベージェフが使っているストリングです。打感が非常に柔らかいです。餅とかゼリーみたいに衝撃を吸収します。弾き感は、少ないです。コントロール性は、打感の柔らかさのわりにかなり高いです。
比較的、打感が硬い(フレームが硬いではなく、フレームとストリングの球離れが速い)ラケットにも合うかなと思います。例えばT-Fight305・ピュアストライク18×20・プレステージPRO・ピュアドライブVS・VCOREなどです。
ヘッド ホークタッチ
「柔らかすぎて飛んでない」というインプレが多いストリングですが、実際にはフィーリングの問題だと思います。ストロークやサーブとかも結構速く、ブラスト位のスピードが出ました。たぶん結構ホールド時間が長いため「飛んでない」と感じてしまう人が多いのだと思います。
こちらも打感が硬めなラケットに合うと思います。コントロール性は、ポリ&ナイロンの単張り全ての中でトップ(クラス)だと思います。
バボラ RPMパワー
高摩擦コーティングがしてあるポリストリングです。どれくらいの摩擦かというと、ミクロスーパーとエックスワンバイフェイズの中間位です。この摩擦があることで、ストリングが大きく動かなくなり、ナイロンストリングのようなフラットドライブの安定性が出せます。18×20のラケットに張れば、ネットの白帯に連続で当てることができます。飛びは少し控えめです。
ただ、摩擦コーティングのおかげで、スナップバックの力がないため、スピンは多くかかりません。しっかりと縦振りをしてかける必要があります。また、ピュアドライブVSに張ったとき、フレットドライブのコントロール性は非常に高いですが、軽く打ちたい時に、縦のストリングが動いたり動かなかったりとムラがあったため、常にしっかり振っていかないといけないストリングです。
打感に関しては、ハイパーG位の伸び量の割には柔らかいかな?という感じです。また、摩擦コーティングのせいで弾き感は少なく、もう少し球離れが速い方が好みだなと思いました。
フラットドライブのコントロール性能はRPMパワーですが、安定感があるのは、ホークタッチです。
最後の部分に、コントロール性の高いおすすめガット一覧のリンクがあります。
おすすめラケット
テニスラケットは、「良いラケット」や「悪いラケット」は基本的に存在しません。(時々はずれがあったりしますが)その人やその人のプレースタイルに合うか合わないかです。また、使い始めは合わなくても、使っているうちに強くなったということもあります。
さらに相手によっても変わります。ピュアドライブやEZONEなどの高反発系ラケットを使って格上と対戦した時、臆病になって振り抜けなくなり、センターにしか打てなくなったりする人がいます。そんなことをしたら振り回されて終わりですので、そのラケットはあっていないということになります。また、振り抜きやすさも操作性に影響があり、相手に合わせたほうがいい場合が多いです。自分が「使いやすいラケット」=「強い」ではありません。
おすすめラケット
・フラットドライブ系のプレイヤーにおすすめなのは、18×20のラケットです。18×20のラケットは、一見難しそうですが、技術の進歩によってかなり飛ぶようになってきています。現にピュアストライク18×20とノーマルのプロスタッフ97では、ピュアストの方が反発力があります。
TF40の305や、ブレード・ピュアストライク・グラビティプロなどがおすすめです。特にTF40は振り抜きがつらくないのに高コントロールなのでおすすめです。
・絶対的なボールの伸びを求めるなら、ウルトラツアー95です。95インチで飛ばなさそうに見えますが、振り抜きの良さやフレームのねじれなさ(ねじれると飛ばない)により、パワーポテンシャルはどのラケットよりもあります。ただ、スイングウェイトが339とかなり多く操作は難しいです(ピュアドライブが320・フェデラーが340・ジョコビッチが360)。
・スピンによる攻撃力が欲しければピュアアエロです。ピュアアエロは、フラットドライブが安定するようにストリングを硬く張っても、スロートが三角形なことで縦振りが速くできより多くのスピン量を生み出します。もっと簡単に言うと、フラットドライブの安定性とスピン量を(他のスピンラケットと比べ)両立させたラケットです。ストリング間隔が広いため、普通に張るより、太ゲージや高テンションにした方がパフォーマンスが上がります。
・操作性が欲しければ、プロスタッフです。97インチでフレーム厚も21.5㎜なため、非常に操作性が高いです。また、コントロール性が群を抜いています(16×19の中で)。しかし、飛びが16×19のラケットでは控えめですし、スイートエリアも大きくないため、楽ではないはずです。ただ、PWSという3時9時のところのウェイトや315gあることによって、面ブレは少なめです。
その他
上記では、特徴の強い4つを紹介させていただきました。しかしこの他でも、全然攻撃的なショットを打つことができます。以下は基本的なテニスをする人の場合です。
基本的に、スピンが多いほどネットとのクリアランスが取れるため、安定感が高いです。逆に、スピン量が少ないほど軌道の精密性が高く、伸びのあるボールを打つことができます。どれくらいの反発性・安定感と精密さが欲しいかで選ばなくてはいけません。
基本的に安定感が欲しければ、ピュアドライブやエクストリームなどの高反発でスピン量がかかる方が良いです。
精密さが欲しければ、ストリングがタイトな、18×20のラケットや16×20のラケット、インスティンクトやラジカルのようなラケットが良いです。
ボレーにおいては、高反発モデルの方が当てるだけでいいので壁になりやすいです。逆にコントロールモデルの方が軌道の精密性が高いため滑って伸びていくようなボールを打ちやすいです。
サーブに関しては、高反発モデルの方が、速度・回転による変化量が高いためいいと思います。ただ、ピンポイントの正確性はコントロールモデルです。
パワーアシストについては、多すぎてスピンに頼って打った場合、ボールの伸びが少なくなります。ボール速度自体は速いのですが、水平方向速度の速度だけ考えると、パワーアシストが少ないラケット(フラットドライブで打つ)と同様になってしまいます。その上バウンド時の減速量も多く、ベースラインより数m後ろを通過する速度は遅いです。そのため前述した通り、少し軽くフラットドライブで打った時にそれなりのボールが行くパワーアシストがいいです。
振り抜きやすさについては、フレーム厚とフレームの正面厚が薄いほど良いです。また、形状も影響があり。完全ボックス形状の場合水平スイングは空気抵抗が比較的多いです。逆に斜め上に振るのは、ボックス形状の方が良いです。
いつもどこよりも詳しくて納得できる記事をありがとうございます。
テクニファイバーのアイスコードについてなのですが
エクスペリエンスと同じ理由かも知れませんが皆んなが言う柔らかさを感じず
インパクト時に感じる衝撃から硬いと感じております
何によって柔らかいと硬いと感じているのか分析いただくことはできませんか
コメントありがとうございます。
打感の柔らかについて、
ボールを打った時の最大のたわみ量が多い=柔らかい (たわみ量が少ない=硬い)
ストリングの伸びていくときの抵抗が多い(打ちごたえがあるイメージ(特にポリ))=硬い (打ちごたえが少ない=柔らかい)
打った時、同じたわみ量でもフェイス乗っている時間が長い=柔らかい (時間が短い=硬い)
など、どこにフォーカスするかが人によってバラバラ(同じ人でもストリングによって変わることもある)なため、柔らかいと感じる人もいれば、硬いと感じる人もいます。
アルパワーを例に出すと、アルパワー自体の伸び量は短いですが、乗っている時間が伸び量の割には長いため、柔らかいという方もいます。
アイスコードはまだ使ったことがないので正確には分かりませんが、世間的には柔らかいと言われてます。しかし、最大のたわみ量は”それほど”多くはないみたいです。
また何かございましたら、気軽にコメントを頂ければお答えいたします。