多角形のスピン系ストリングを使うデメリット・メリット

多角形のスピン系ストリングを使うデメリット・メリット

2021年2月7日 0 投稿者: gura

 「ハイパーG」「ポリツアースピン」「ツアーバイト」など、多角形ストリング(ガット)が数多くあり、「ハイパーG」においては、世界でも非常に多く使われています。

 しかし、世界のトッププロ選手がスピン系のストリングを使っている選手は非常に少ないです。ハイパーGで有名なブライアン兄弟は、横にハイパーGですが縦にナチュラルを張っています。他の選手も横に多角形ストリングを使い縦には、ナチュラルが多いです。単張りで使っている選手は、アガシ・クエリーなどのほんのわずかな選手だけです。

 プロが縦に多角形ガットを使わない理由には、多角形特有のデメリットが大きいです。





 多角形ストリングを使うプロ

 ハイパーG・ツアーバイト・ポリツアースピン・ポリツアーREV・Gスピン・・・などと多角形ストリングは、数多く存在するのに、RPMブラスト以外使用選手はほとんどいません。

 使っている(いた)選手は、ブライアン兄弟(横:ハイパーG)・西岡良仁(横:ポリツアースピン)・国枝慎吾(横:ハイパーG)・ジェイミーマレー(横:ツアーバイト)・クエリー(縦横:ハイパーG)・アガシ(縦横:ハイパーG)などとなっており、単張りもいなくはないですが、基本的には縦にナチュラルを張っています。


 多角形ストリングを使うデメリット

 多角形ストリングの一番の問題はスナップバック“量”+引っかかりの多さです。

 スナップバック

 まず前提としてスピンをかけるのはスナップバック“量”ではなく、スナップバックの“力”つまり、ストリングが元に戻ろうとする「力」です。

 ここに詳しく書いてありますが、スナップバック量が多いと、面ブレや意図しない引っかかりが生まれやすかったりと、デメリットが多く出ます。

 その証拠に、スナップバックが起きにくいミクロスーパーや、摩擦コーティングされているRPMパワー(ポリガット)の場合、完全フラットに打っても、コントロールが乱れにくいです。もっと言えば、18×20のラケットを使えば、ネットの白帯に連続で当てることができます。

 逆に、多角形のスピン系ストリングの場合、いくら18×20のラケットを使ったからと言っても、かなり難易度が高いです。

 

 じゃあ、「スナップバックが起きないストリングが良いんだ!」とも思うかもしれませんが、そういうわけでもないです。テニスという競技は、ネットとアウトエリアがあるため安定性も必要です。スピンがあることで障害物のネットを速いボールでも越せることができますし、低いボールも持ちあがります。つまり、ある程度のスピン量も必要なわけです。スピンをかけるために無理に縦振りをすると水平方向のスイングスピードが遅くなってしまい、相手にとってチャンスボールになります。また、ボールの軌道と垂直方向にスイングしないといけないため、スイートエリアを外しやすいです。

 つまり、一発の攻撃力があるのはスナップバックがないストリングで、安定性が高いものは、スピン量の多い(ネットとのクリアランスを多くとる前提で)ものです。

 例を上げれば、摩擦の多いミクロスーパーやRPMパワー(ポリ)は、フラットドライブのコントロール性が非常に高いです。逆に、ハイパーGやツアーバイトなどは、ネットとのクリアランスを多く取れるため安定性が高いです。

 理想のセッティング

 そこで、スナップバックを小さくして攻撃力もありつつ、スピンもほど良くかかるラケットとストリングにするのがベストです。
 このベストは、縦にナチュラル・横にアルパワーやハイパーGなど固めのポリを張ることで、ポリ×ポリより摩擦の大きく弾きの強いナチュラルによってスナップバック“量”が小さくても、ボールとナチュラルガット間の摩擦が大きいことでしっかりとスピンがかかるわけです。

 フェデラー・ジョコビッチ・マレー・錦織・西岡・国枝(車いすテニス)・ブライアン兄弟などなど、数多くの選手がこのセッティングです。

 また、横ナチュラル×縦ポリの選手もいますが、ナチュラルの引っかかりを抑え、よりフラットドライブに特化したセッティングです。ポリ×ポリよりはストリングが動かなく、横がナチュラルなことで飛びも強いです。ナイロン×ナイロンのようなスピンのかかりにくさもありません。





 多角形のスピン系ストリングのデメリット

 多角形ストリングの場合、18×20のラケットを使っても、フラットドライブで打つのが結構難しいです。多角形は引っかかりが非常に強いため丸型ではいかないところまでスナップバックするからです。その分メーカーは基本的に伸び量をを抑えていますが、それでも大きいです。また、引っかかりの強さも難しさの一因です。

 しっかり(多め)スピンをかければ、不安定さはなくなります。ただ、18×20のラケットの強みであるボールの伸びは、ボールスピードに対しスピンが多いため全くなくなります。16×19のラケットの場合でも同様です。

 また、比較的縦振りをする必要があるため、水平方向のスイングスピードは遅くなりますし、ボールの水平方向の速度も遅くなります。また、18×20のラケットは比較的飛ばないため、不安定さをカバーする余力が少ないです。16×19のラケットの場合、かなりストリングが暴れます。絶対的なスピン量があるため跳ねて返球しにくい(浅ければ相手のチャンスボール)ですが、一発打ちたい時の不安定感は結構大きいです。プロの試合でも、少し高めのチャンスボールを引っかけてアウトになってしまうことが多々見受けられました。

 個人的な感想ですが、コントロール性が良い丸型ストリングを18×20のラケットに張れば、ストロークならネット上15㎝、ボレーならネット上ボール2個分以内にコントロールできます(※余力があるとき)。コントロール性が高いハイパーGなどの多角形ストリングは、ストローク・ボレー共に2倍位は欲しいです。たかがこれだけの差ですが、この差が大きいです。

 

 ※ファビオ・フォニーニは、ピュアドライブ×RPMブラスト1.30㎜を使っていますが、縦60lb・横55lbと、縦のテンションを5lbも上げて、スナップバック量を減らしています。(それを考慮すると五角形や六角形は7lb位変えれば安定するのかな?)


 まとめると引っかかりすぎて、フラットだライブやスライスや・ボレーの軌道の高さの調整が難しいです。ネットとのクリアランスを取れば問題ないですが、そうしてしまうと滑ってくるようなボールの伸びは出しにくいです。





 多角形ストリングを使うメリット

 多角形のスピン系ストリングを使う一番のメリットは、「コントロール性」です。

 上記で「コントロール性」について否定したように感じるとは思いますが、ここでのコントロール性は別のコントロール性です。

 例えば、低いボールを持ち上げやすさだったり、相手の足元にボールを落としたりなどは、多角形ストリングの方が安定してコントロールできます。逆にナイロンなどスピンがかかりにくいものの場合、かなり縦振りをしないといけないので、コントロールが乱れやすいです。

 つまり、精密なコントロール・攻撃力は丸型のストリングに軍配が上がるのですが、多角形ストリングはストロークで容易に手前に落としたり・低いボールを容易に持ちあがられたりと、ミスしにくいという意味でのコントロール性が高い(ネットとのクリアランスをとることが条件)のです。


 日本人

 基本的に日本人は、「打感が硬いのが嫌い」という方が多く、40lbなどローテンションで張ることが多いです。したがって、伸びやすいストリングを使うより、伸びにくいストリングの方がコントロールが乱れにくいのです。

 また、アルパワーなどルキシロン系は価格が高いですが、ハイパーGなどの多角形ストリングは比較的安いのも多角形を使う理由だと思います。

 さらに、ボールの伸びは「ボールスピード」&「スピン量」という考えが多く、これもその理由です。高スピンのエッグボールがそのイメージをつけたのでしょうけど、実際には回転が少なければ少ないほどバウンド時の減速量が少なく、滑ってくるようなボール伸びが出ます(低軌道の場合)。低軌道のスライスが滑ってくることがその証拠です。しかし150km/h超のウィナ―を打つ場合はスピン量がなければコートに入りませんし、それだけの速度があれば、バウンド時の減速量が比較的多くても、ベースライン超える時の速度は速いです。


 ちなみに、打球感の硬さは、テンションとストリング自体の伸びにくさは別です。完全に別というわけではないですが、伸びやすいストリングを硬く張っても伸び量は多いですし、伸びにくいストリングは緩く張っても伸びにくいです。


 競技者

 競技での試合はショットの攻撃力がなければ勝てません。市内大会位だったら多角形ストリングでもミスしないで打って良ければ勝てるかもしれません。しかし、トップトーナメントになると、ミスしないだけではなく攻撃力も求められます。

 フラットドライブを丁寧に打っていったらカウンターを食らいますし、スライスも、難しくて低軌道では打てないため伸びがなく攻撃力がないです。ボレーも引っかかりすぎて、正確なコントロールはできないです。スナップバックが起きにくいRPMパワー[レビューを見る]の方が圧倒的にコントロールできます。

 コストをかけられないという人は別ですが、基本的には丸型ストリングをお勧めします。そうすることで、繊細にコントロールもできますし、攻撃力も上がります。ただ、安定感はハイパーG[レビューを見る]等の多角形のほうが高いのは確かです。




 まとめ

 基本的に多角形のスピン系ストリングは、繊細なコントロールが苦手です。したがって、ボールの伸び(滑ってくるような)を出すことや繊細なタッチが苦手です。

 逆に、ボールを高く跳ねさして相手の打点をずらすことができます。またスピン量とコントロール性の高さから、ボールの伸びは少ないですが豪快にどんどん打って行けます。

 競技者には基本的に攻撃力の出せる丸型ストリングをお勧めします。社会人サークル等でやる場合は、自己満足の世界なので全力で振りたければ、多角形ストリングをお勧めしますし、繊細なコントロールをしたければ丸型をお勧めします。

 ただ、多角形ストリングもクエリーなど世界のトップ選手が使っているわけで、クレーとかスピン量が生きるコートやラケットなら、強みにもなると思います。また、一般向けですが、(フラットドライブは苦手ですが)スピン量が多くネットとのクリアランスが取れるため、ミスの少なさに貢献もします。

 おすすめラケット

 ここまで、比較的多角形ストリングを否定しているように見えますが、「使うな」ということではなく「デメリットもあるよ」ということです。

 ピュアドライブやエクストリーム・ピュアアエロなど、高反発なモデルなら、スイングへの意識を少しコントロールに回せますし、跳ねるため攻撃力もあります。また、初速が速いので、バウンド時に多く減速しても棒球にはなりません。ただ、フラットドライブの攻撃力は低いため、きついアングルを打てるようになるか、エッグボールを多用したほうが攻撃力は高いです。また、ネットとのクリアランスを多くとることで反発系のコントロール性の低さを補うことができます。

 ※RPMブラストは、シリコンコーティングされているため、通常の多角形ストリングとは異なります。