ピュアドライブが飛びすぎる場合の対処法

ピュアドライブが飛びすぎる場合の対処法

2020年8月27日 0 投稿者: gura

 日本では最強と呼ばれる「ピュアドライブ」。2018年(2021年)モデルから、フレームやストリング間隔・カーボン技術などにより、スピンがかかり・マイルドで・スイートエリアが広くなりました。しかし、2015年モデルよりコントロール性が少し下がり、振れる人にとっては「飛びすぎて使えない」ということが起きています。2021年モデルは、少しコントロール性が上がりましたがそれでも今反発モデル特有のコントロール性です。





 飛びすぎて使えない理由

 基本的にピュアドライブは、ラケットの全メーカーの中でトップクラスの反発性があります。2021年モデルはトップだと思います。110インチとかのラケットの方が飛ぶように思えますが、スイングウェイトが少ない分そこまで飛びません。

 2018年モデルは、2015年モデルより打感をクリア&マイルドにしたかわりに、コントロール性が下がってしまっています。2021年モデルは、コントロールが黄金スペックの標準位になりました。ただ、スピン量は控えめです。

 2015年から2018年モデルの変更点

 まず、フレックスというラケットのしなり量は変わっていません(RA72)。しかしフレームの歪みによるエネルギー損出を減らすことで、飛び量が増えました。また、よりクリアな打感にするために、グリップ部直上に入っていた樹脂部品(コアテックス)を取り除き、振動吸収集素材をカーボン内に添加しました。

 しかし、カーボンがフェイス部からグリップまで一体なのでどうしても打感の硬さ(弾きの強さ)が出てしまいます。そこで、ストリングの目を粗くすることで、ホールド時間確保をしました。

 なぜコントロール性が下がったのか

 ストリングパターンが広くなったことにより、スナップバック量が大きくなりました。「スピンをかけるために必要なのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、スピンをかけるのは、スナップバックによる力であり、スナップバック量ではありません(ボールのめりこみ量やストリング同士の抵抗的に少し関係しますが)。2015年モデルは、スイートスポット付近のストリングの目が細かく、スピン量は少ないですがコントロール性が少し良かったです。

 簡単に説明するとボールとストリングが最初に接触した点から、スナップバックによりボールが下側にずれ、フェイス面(ストリングが張ってある部分)の下側が押され、フェイス面が下向きになります。いわゆる面ブレです。また、スイング角度により引っかかりの差が大きいのもコントロールの難しい一因です。この影響は、ネットギリギリを通すフラットドライブを打った時に顕著に出ます。


 また、ストリングの目が粗くなることで、ストリングのたわみ量が大きくなります。スイートスポット(スイートエリアではなく)で打てればいいのですが、少しずれた場合、フレーム側のストリングの伸び量が少ないため、接触点のフェイスの中心側は伸びている途中でも、フレーム側は限界が来て反発してしまいます。その結果、赤い矢印のようにまっすぐ飛んで行きません。

 プロ並みに上手い人が完全に余裕を持って打てれば問題はないのでしょうけど、そこまで技術力は高くない人がほとんどな上、プロでも余裕がない時は、スイートスポット(スポット以外ぶれる)を外しますし、フレームショットもします。相手のボールが速い場合に対しては丁寧に打つ必要があるため、ピュアドライブを使っているプロ選手はリターンの位置がだいぶ後方です。

 一応、ストリングのテンションなどで調整はできますが、「高テンション=打感が硬い&甲高い音がする」というイメージにより、敬遠される方が多く、ピュアドライブが「飛びすぎて使えない」と言われる理由です。


 飛びすぎて使えない理由のまとめ

 まとめると、反発と打感のマイルドさを求めすぎて、ハードヒットする人に対しては、パワーとコントロールのバランスが取れていなく、使えないのです。「ただ単にラケット性能による飛びすぎ」・「使用者の技術不足によるコントロールの悪さ」ではないのです。


 現状では、高反発なモデルほどコントロール性が低く、よりコントロールに意識を向けて打たないといけないです。逆にブレード18×20など、コントロール性が高いモデルは、コントロールに向ける意識量は少なくて済みます。簡単に言えば意識を、反発モデルの場合6:4(スイング速度:コントロール)・コントロールモデルの場合8:2などとしなければいけないのです。

 もっと言えば、「飛びすぎだから使えない」ということではなく、「反発力が高いラケット=その分ボールスピードが出せるラケット」ではないです。反発系のラケットはコントロールを補うためスイング速度は遅くなりますし、コントロール系のラケットはパワーを補うために。スイング速度が速くなります。基本的にボールスピードが速いのは「反発とコントロールの合計が高いラケット」です。

 その証拠に、ATPやWTAのグランドスラムのトップ選手は、100インチラケットだったり、95インチラケットだったりと、様々なラケットを使用しています。




 飛びすぎの対策

 まず、ピュアドライブを使っているダニエル太郎選手の話ですが、サーブを補うために40lb台でストリングを張っているそうですが、「フラット系のショットは課題だ」と言っていました。つまり、ローテンションで張るとスナップバックによる不安定さが出ていると考えられます。また、ストリングのたわみ量も不安定さの原因です。

 ストリングのセッティング

 フラットドライブ系のコントロール性を上げたければ、太ゲージ(1.30)や5lb以上テンションを上げてください。太ゲージにすれば(同じ面圧でも)、スナップバックによるコントロールの乱れを少なくできます。テンションを上げれば、ストリングのたわみやスナップバックによるコントロールの乱れが少なくなります。

 もともと打感はマイルド(フレームの硬さの割には)なピュアドライブなので、ある程度テンションを上げても問題ないです。また、「飛ばなくなるのでは?」と思いますが、しょうがないです。反発系ラケットのラケットはストリングでコントロールを補うしかないのです。

 逆にスピン量が欲しければ、細ゲージやテンションを少し下げてください。ただ、コントロールは難しくなります。

 ちなみに、ピュアドライブではないですが、巷の「ローテンションがトレンド」とか言う文言に安易に乗って、丁寧に打ってもコントロール出来てない人も良く見かけます。確かに「ローテンション」と呼ばれるテンションで張っているプロは一定数いますが、スピンのかかりにくいラケットなどコントロール性の高いラケットを使っていたり、 アルパワー【インプレを見る】オリジナル【インプレを見る】ハイパーG【インプレを見る】」など伸び量の少ないストリングを使っている選手のみです。したがって、一定以上は硬く張るべきです。


 また、ストリングは日に日にテンションが低下していきます。その結果、コントロール性も低下していき「飛びすぎ」「ボールが伸びない」などという症状が出ます。



 コントロール性の高いストリング

 先ほどはストリングのテンション&太さでしたが、今度はストリング自体です。

 RPMブラスト【インプレを見る】を張っている方も多いと思いますが、このサイトでのコントロール点数は3/5点です。

 ここにもあるように、ブラストにはブラストの良い点もあるのですが、デメリットもあります。一番はコントロールで、ストリングのたわみ量が多かったり・スナップバック量が多かったりと、プロが使う中では比較的コントロール性が低めです。したがって、太ゲージだったり・高テンションだったりと対策をしなくてはいけません。また、テンション維持も長期間のコントロール性で見れば低めです。

 そこで、1.30㎜や1.35㎜を使うことや、ブラストよりコントロール性の高いストリングを使ってみるというのも「飛びすぎ対策」の手です。

 まず最初は、ルキシロンの「オリジナル【レビューを見る】」です。飛びはブラストより強め(4/5点)です。スピン量が丸型にしてはかなり多い方(3.5/5点)です。伸び量も多くなく(衝撃吸収は別の話)スピンが欲しければローテンションで張ってもコントロールが乱れすぎることもありません。しっかり反発力を使って余力を多く作り、その余力でコントロールを補おうという考え方です(コントロール性も高い(5/5点))。これでコントロールできない場合、多角形(ボールが伸びなくなるが)のツアーバイトやポリプラズマヘキストリームピュア【インプレを見る】など、全ガットの中でトップクラスのコントロール性のあるガット以外は無理です。


 パワーアシストは、少なめですが、ソリンコのハイパーG【インプレを見る】は、打感が多角形にしては寛容な上、コントロール性が高くおすすめです。五角形ストリングのため、スピン量が多くバンバン打って行けます。ただ、フラットで打ちたい時も勝手にスピンがかかってしまうので、ボールの滑ってくるような伸びが出ません。また、ネットすれすれを狙うショットは苦手です。エッグボールなど高スピンでバウンド後高く跳ねるボールを打つとかなり攻撃力が高いです。


 他に、多角形なら「ポリツアースピン」「ツアーバイト」「ポリプラズマヘキストリームピュア【インプレを見る】」など丸型なら「ホークタッチ」「4G」「アルパワー」「オリジナル(ルキシロン)【インプレを見る】」「アイスコード」「ポリツアーストライク」などが比較的コントロール性が高いです。(まとめの下にコントロール性の高いガット一覧のリンクがあります)

 戦術を変える

 基本的にピュアドライブはストリング間隔が広く、「フラットドライブ」「エッグボール」どちらの方が攻撃力が高いかというと「エッグボール」です(2018年モデル)。逆に言えばフラットドライブの攻撃力は高くありません。

 したがって、エッグボール(高スピンの低めのロブ)を多用し、甘くなったボールを決めに行く戦術をとる方が攻撃力は高いです。

 また、開き直って高反発なストリング(ファイヤーストーム(シグナムプロ)・アルパワー・ホーク)にし、バウンド時の減速量はいいから、初速の速さで勝負ということもできます。

 2021年モデルは、コントロール性が上がった副作用でスピン量が控えめになったので、フラットドライブ用セッティングの方が良いと思います。少しスピン量があったほうが、攻撃力がある(ピュアドライブのパワーを活かせる)と思うので、「ルキシロンオリジナル」・「ホークタッチ」・「アルパワー」などがおすすめです。

 ラケットを変える

 どうしても、「ガンガン打ちたい(丁寧に打ちたくない)」「伸びのあるフラットドライブを打ちたい」という方は、ピュアドライブ以外を使ったほうがいいと思います(それ以外に方法は無い)。「ボレーが飛びすぎる」という方も同様です。


 まとめ

 ピュアドライブ2018年モデル2021年モデルは、ストリング間隔が広くなったことによって、スナップバック量&フェイスの撓み量が大きくなりました。これはスピン量が多くなるメリット(2018のみ)や、打感の柔らかさがありますが、スイングスピードが速めな人にとっては、面ブレが起き、コントロールできなくなります。つまり、パワーに対しコントロール性が低いのです(黄金スペックの特徴)。2021年モデルは少しコントロール性が改善され黄金スペックの標準位になりました。

 したがって、コントロール性を高めるために、太ゲージや高テンションでストリングを張ってみると、安定します。ラケット自体のパワーはあるのでストリングのコントロール性を上げても、パワーは比較的落ちません。