高反発(中厚)ラケットを使うメリット・デメリット
2021年10月26日テニスにおける高反発(中厚)ラケットは、フェイス面積が100in・最大フレーム厚が26㎜のラケットです。この中で、使いやすいとされる、重量300g・バランス320㎜・長さ27in、ストリングパターンが16×19本のラケットは「黄金スペック」と呼ばれ、日本で非常に人気があります。ただ、高反発のラケットは「飛びすぎて使えない」などという口コミもあります。
では、高反発(中厚)ラケットは、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
高反発(中厚)ラケットのメリット
まずはメリットからです。
高反発
高反発ラケットのメリットは何と言っても「高反発」です。
高反発ゆえに、当てるだけでボールが返るため、とにかく「壁」になりやすいです。また、サーブスピードがかなり速いです。
振り抜きが良い
一般的に「高反発ののラケットは振り抜きがつらい」と言われていますが、これは間違いです。確かに、フレーム厚やフェイス面積だけを見ると、空気抵抗が大きく振り抜きにくそうに感じますが、振り抜きは、フレームの正面厚や形状・静止重量・スイングウェイト・バランスポイントなど様々な要素によって決まります。
一般的に薄ラケ(高コントロールラケット)というのは、フェイス面積が小さく、フレーム厚が薄いですが、静止重量やスイングウェイトが大きい上に、ボックス形状なので水平スイングをしたときに空気を平面で受けてしまうため、振り抜きが良くありません。
逆に、高反発ラケットは、静止重量やスイングウェイトが軽い上、水平スイングをした時空気を平面で受けない(シャフト部を除く)ため、空気抵抗がそこまで大きくなく振り抜きやすいです。ただ、例外もありピュアアエロは、縦の振り抜きをよくするためにスロートが三角形になっており、空気抵抗が大きく振り抜きにくいです。
飛びのスイートエリアが広い
オフセンターショットをしてしまっても、エネルギー損失の原因のフレームの歪みが少なく、ある程度しっかり飛んでくれます。
体力的に楽?
高反発ラケットはしっかり振っていきにくいラケットのため、1スイングに対しての体力消耗は高コントロールラケットより少ないです。ただ、下記でも述べますがフラットドライブの伸びが出しにくいラケットであるため、ラリーが長く続く場合も多く、トータルの体力消耗は増える可能性もあります。
高反発(中厚)ラケットのデメリット
低コントロール
ここでいう「コントロール」は「飛ばない=コントロールが良い」ではなく、飛びとは全く別物です。
基本的に高反発(中厚)ラケットは、ホールド時間やスピン性をしっかりと確保するため、ストリング間隔が広めになっています。その結果、面ブレを起こすスナップバック”量”が非常に大きく、繊細なコントロールや、豪快なショットを打つことが難しいです。高反発ラケットでも「丁寧に打てば良いのでは」とも思ってしまいますが、カバーしきれない部分が多いです。
また、コントロール性が低い影響で、余力を多く残して打つ必要があり、ボールスピードは高コントロールラケットとほとんど変わりません。
低安定性
ここでの安定性とは、「ショットのムラの少なさ」を表します。高反発ラケットは基本的に安定性が低く、相手の速いボールに対ししっかり振っていったり、アングルショットだったり、ラインに着弾するショット(高精度)などを打つことが難しいです。
高反発ラケットは、どちらかというと、きついときは丁寧につないで、「行ける」と思った時に打っていくプレースタイルが合います。
少し例を挙げると、ストリングが18×20本のラケットを使っていた時「なんでそんなハードなラケット使ってるの?ピュアドライブ楽だよ!」と言ってた方のシングルスを見てみると、ほとんど当てるだけになってるショットが半分以上とかあったような気がします。特にシングルスでは走りながら打つことも多いため、安定性は非常に重要になるのです。
ボールが伸びない
高反発ラケットは、低コントロール・安定性のため、しっかりフラットドライブで打つことが難しいため、滑ってくるようなボールの伸びが出しにくいです。まぁ出せないことはないですが、博打に近い感じになります。
ちなみに、ボールの伸びを出すには「スピン量とボールスピードの両方が必要だ」と言われていますが、実際はスピンをかけない方がバウンド時の摩擦が少なく滑ってくるようなボールの伸びを出せます。ミクロスーパーなど高摩擦のナイロンストリングを使ってもらえばわかるはずです。スーパーボールに回転をかけて投げてもらっても分かります。
一方高スピンの場合、バウンド時に高く跳ねるため打ちにくいショットになります。バウンド後の飛距離も伸びます。
コントロールのスイートエリアが小さい
反発上のスイートエリアは広いですが、コントロール面でのスイートエリアが小さいです。高反発ラケットはストリング間隔が粗いせいで、少し外して打つとその影響が薄ラケの2倍・3倍になって帰ってきます。
ボレーが飛びすぎる
ストロークならテイクバックを小さくすれば飛びを制御できますが、ボレーは飛距離を抑えるために力を抜く必要があります。その結果ラケットをしっかりとした打点の位置に持って行けなくなり、オフセンターショットになり相手のコートに入らない。ということがあります。ハイボレーとかは当てることに集中すれば良いので飛んでくれた方が良いのですが、ドロップショット系が難しいです。
ストリングの許容範囲が狭い
ストリング間隔が粗いため、伸び量の多いストリングを張ってしまった場合、全く制御できなくなることもあります。
出せるボールスピード(補足)
補足です。
上記で述べた通り、高反発ラケットは高コントロールラケットより余力を多く残して打つ必要があるため、ボールスピードは大きく変わりません。また高反発ラケットのコントロールを補うために、太ゲージ(1.3㎜)のストリングを使うと結局飛ばなくなるので、これでもほとんどボールスピードは変わりません。
ただ、相手からのボールが速い場合や、バウンド時や滞空中に変化する場合などは、安定性が高い(ムラの少ない)薄ラケの方がボールスピードが出せます。
逆に、サーブは相手の影響を受けないため、高反発ラケットの方がボールスピードが出しやすいです。もちろん精度は高コントロールラケットですが。
高反発ラケットにするか・高コントロールラケットにするか
高反発ラケットでも、高コントロール(低反発)ラケットでも、ボールスピードはそこまで変わらないことを解説しましたが、どっちにしようか悩んでしまうと思うので、基準を述べさせていただきます。
まず、ナイロンストリングが切れてしまう方で、シングルスを多くやる方は、安定感の高いラケットが良いです。安定感の高いラケットにすることでしっかり攻撃ができます。ダブルスメインの方は、繊細なコントロールやボールの伸び重視の方は高コントロールラケット、ボールスピードやディフェンス重視の方は高反発ラケットをお勧めしてます。
一方ナイロンが切れない方は、振り抜きの良い高反発ラケットがいいと思います。
一般的に300gのラケットを使える方は、高反発モデルと高コントロールモデルの中間の、スピードMPやピュアストライク16×19・ラジカルMPなどの準コントロールモデルをお勧めしてます。
ちなみに、270gや255gなどの軽いラケットは、スイートエリアが小さいだけではなく、飛ばないですし、コントロール性・安定性も低いので、できれば285g以上をお勧めします。285gでも操作性が悪ければ、操作性をよくするカスタムもあります。
逆に300g以下では物足りないという方は、ストリングが18×20本のラケットもおすすめです。