テニスラケットの打感(柔らかい-硬い)が人によって違う理由

テニスラケットの打感(柔らかい-硬い)が人によって違う理由

2021年5月31日 0 投稿者: gura

 巷では、反発モデルのバボラのピュアドライブの打感が「硬い」という人もいれば「柔らかい」という人もいます。また、コントロールモデルのヘッドのプレステージも「硬い」という人もいれば「柔らかい」という人もいます。

 フレームのしなりがピュアドライブが72前後(あまりしならない)で、プレステージMPが61前後(結構しなる)です(だいたい75~60で、数値が小さいほどしなる)。そうするとプレステージの方が柔らかそうに感じます。しかし、人によって対称的に分かれます。

 ではなぜ、同じラケットでも「打感が硬い」・「打感が柔らかい」と対称的な評価をする人が出るのか解説いたします。





 打感の違い

 打球感の柔らかさを評価するのに、一般的には5つの項目があります。

 先に結論を言ってしまうと、「どこの硬さ(柔らかさ)」をフォーカスするかよって、「硬いと評価する人」と「柔らかいと評価する人」が分かれてしまっています。

 フレームの硬さ

 まず、フレームの硬さです。代表的な例が、バボラのピュアドライブ・ウィルソンのウルトラなどです。一般的に高反発と呼ばれる部類です。

 ピュアドライブを打ってみると、ほとんどフレームがしなりません。実際には違いますが、金属バットで打っているような感じです。また、フレームやフレーム付近で打ってしまった時の弾き感(硬い柔らかいではなく)が、マットにボールを落としたような感じではなく、硬い地面に落とした感じです。

 このような「フレームの硬さ」をフォーカスする人にとって、ピュアドライブやウルトラ等の剛性の高いラケットは、「打感が硬い」と評価します。

 ストリング(ガット)たわみ

 次に、ストリングのたわみ量です。バボラのピュアドライブ(特に2018年モデル)やピュアアエロ・ヘッドのエクストリームなどは、高反発&高スピン(ピュアドラ2021はまた別)にするため、ストリング間隔が広いです。一方、ウィルソンのブレード18×20や16×19・ヘッドのプレステージMP(18本×20本)・ウィルソンのプロスタッフ・ヨネックスのVCORE PRO97などはストリング間隔が狭いです。

 同じ本数だとしてもストリング間隔が広ければ広いほど、ストリングのたわみが多くなります。逆にストリングが18×20本(通常16×19)のような、ストリング間隔が狭ければ狭いほど、ストリングのたわみが小さくなります。

 このように、ストリングのたわみ量をフォーカスすると「ストリングのたわみが多い=柔らかい」・「ストリングのたわみ量が少ない=硬い」となります。

 打感の情報量

 次に打感の情報量の違いです。プレステージやプロスタッフなど「ボックス形状(フレームの断面が長方形)」か、それに近しいほど手に伝わってくる「打感のクリアさ」があります。簡単に言うと「ボールの潰れている感覚」が、はっきりと分かります。

 この潰れている感覚が、トランポリンのような柔らかいものではなくて、金属バットのような硬いもので打ったような打感に感じます(柔らかいトランポリンなどではボールが潰れにくいイメージによるもの)。

 つまり、打感がクリアなラケットほど硬く感じやすい人がいます。

 オフセンターショット

 次に、フレーム間近でボールを打った時の感じ方の違いです。

 ピュアドライブなど剛性の高いラケットで、フレーム付近でボールを打つと、トランポリンのようにラケットが「カーーン」と弾かれます。一方、プレステージMPのように、ボックス形状な上しなるラケットの場合、「ズシッ(硬いとか痛いとかではない)」とエネルギーを吸収するような打感です。

 この、「弾き感が硬い」という人もいれば、「ズシッと感が硬い(少しボールが重く感じる)」という人もいます。

 衝撃吸収性

 最後に「衝撃吸収性」です。これは一番フォーカス(重要視)しなくてはいけません。

 テニスラケットは、フレームの柔らかさや、ストリングの柔らかさだけでは、打球感が柔らかくなりません。フレームの断面部分のダンピングや、グロメットの柔らかさ、ストリング同士の摩擦、フレーム剛性の分布等々、様々な要因で打感の柔らかさが変わります。


 ここにフォーカスするには、ある程度の打ち比べ経験が必要です。最初から分かる方は素晴らしい感覚をお持ちです。ちなみに衝撃吸収性については、基本的にメーカーで公表していません。また、同じ名前のモデルでも、少し重量が変わるだけでかなり変わることもあります。

 前例で述べた、ピュアドライブやプレステージMPは、同じくらいの衝撃吸収性(硬さ)です。プレステージPRO・MIDは少し硬めです。プロスタッフRF97(V13)は少しだけ硬めで、97(315g)はストリングが16×19にしてはかなり柔らかめです。グラビティプロやTF40(305)は、「ここまで柔らかくしなくて良いのでは?」と思ってしまうくらい柔らかい(衝撃吸収性が低い)です。有名どころで硬いのは、ピュアドライブVSやピュアアエロVSです。




 どう選ぶか

 正直テニス肘など、怪我をしていない場合は、好き好みでラケットを選んでいいと思います。衝撃吸収性が良くても、嫌いな打感であればテニスを楽しめませんから。ただ、今は嫌いでも使っていくうちに好きになることもあります。

 ストリングのたわみ量やが欲しければ、ストリング間隔が広い、ピュアドライブやピュアアエロ・エクストリーム等があります。

 逆にフレームのしなりが欲しければ、プロスタッフ97(315g)や、スピードMP・ラジカルMP・VCOREPRO97・TF40(305g)等があります。

 クリアな打感が駄目ならフレーム厚が厚いラケット・クリアな打感が良ければボックス形状に近いラケットが良いでしょう。


 テニス肘を患っている場合やよくなってしまう方、体の他の部位に痛みがある場合は、衝撃吸収性の良いラケットを選んだほうが良いでしょう。一週間で完全回復することもあります。

 打感の柔らかいラケットについては、さらに別途記事を作成します。


 まとめ

 テニスラケットの打感の硬さ・柔らかさは、どこの硬さ(柔らかさ)にフォーカスするかで変わってしまいます。

 TF40(305)は、ここまで衝撃吸収性を良くしなくても良いのではないかと思うほどですが、衝撃吸収性能が少し低めのプレステージMID(360+)のラケットを使っている人に「硬い」と言われました。ストリングが18×20本のラケットのため、たわみ量が少ないのが原因だと思いますが。ラケットのしなり量はそこまで変わらないはずなので。

 テニス肘など怪我をしている場合や良くなってしまう場合は、衝撃吸収性の良いラケットにすることで、一週間で変わることもあります(違和感程度ならすぐになくなる)。上記のプレステージを使っている人は、EZONE98に変えたら、一週間後には「ほぼ治った」と言っていました。

 ただ、「衝撃吸収」という意味の”打感の柔らかさ”は、基本的には公表されていないですし、同じネームのラケットでも、重さが違うだけで変わることも多いため、実際に打ってみなければ分かりません。ただ参考という意味で、以下(おまけの下の関連記事)にラケットのインプレ比較表を作成したので、良かったらご利用ください。




 おまけ(ガット)

 ストリングもラケットと同じで、伸び量が少なくても衝撃吸収性が良いもの・伸び量が多くても衝撃吸収性の悪いものなどと、「伸び量=打感の柔らかさ(衝撃吸収性が良い)」ではありません。

 ナイロンマルチの「エックスワンバイフェイズ」は、他のナイロンマルチのNRG2やTGVよりたわみ量は少ないですが、打感は柔らかい(衝撃吸収性が良い)です。



 ストリングの反発も、弾き感が強いからといって飛ぶとは限りません。ポリツアーファイアが一例ですが、日本のインプレを見ていると「最強クラスの反発」という意見が多いです。Twitterでも「飛ぶのにコントロール出来る」という意見がほぼすべてです。しかし実際は、最下位に近い反発です。なぜ最高反発と錯覚してしまうのかというと、ポリツアーファイアは、ストリングがしっかりたわんで、かなりしっかり弾きます。打感が非常に軽いです。これが飛ばしてくれてると思ってしまうからです。サーブを全力で打ってみて「バックフェンスのどの高さで当たるか」を比べてみれば分かります。

 海外レビューでは「飛ばない」という評価が多いですし、トップクラスの反発のピュアドライブが「飛びすぎ(コントロールできない)」と言うのに、ポリツアーファイアは「飛びすぎ」とならないのがその証拠です。

 他には、人気のハイパーgも、標準か少し控えめな反発という評価が多いですが、控えめな反発(ポリツアーファイアとかまではいかない)です。