ストリング(ガット)のテンションが落ちるとどうなるのか?
2021年7月20日ストリング(ガット)は切れなくても、ポリは1カ月・ナイロンは3カ月が寿命と言われています。これは、張っている状態にあると、ストリング(ガット)が伸びてきてしまい、いろいろなネガティブな点が出てくるからです。このネガティブな点を放置してストリングを使い続けると怪我をする場合があるので注意が必要です。
テンションが落ちるとどうなるのか
まず前提として、実際のテンションの落ち方は、「最初は一気に」「次第にゆっくり」落ちていきます。もちろん個体差は合って、アルパワーのように最初の落ち幅が大きく後半がよりゆっくりなもの、RPMブラスト【インプレを見る】のように最初の落ち幅は大きくないが後半の落ち幅がゆっくりにならないものなどもあります(それでも最初の下降率の方が大きい)。
コントロール性の低下
一番気にしないといけないのがコントロール性です。
日本ではあまりコントロールの概念が強くなく「コントロール性が悪い=飛びすぎ」と言うことが多いですが、実際は全く別物です。これには、メーカーを守る意味(コントロールが悪いというネガティブな評価)と自分自身を守る意味(コントロールができないという現実)があります。もちろん張りたてでもコントロールしにくいストリングは存在しますし、「プロは技術があるからなんでも使える」とか言いますが試合では絶対に道具に妥協しません。もちろん技術が高ければ使えるようにはなりますが、それ以上の最高のパフォーマンスはだれにも出せません。
本題に戻りますが、大抵のガットはテンションが落ちるにつれて、ストリングのスナップバック”量”やたわみ量が多くなるため、コントロールしにくくなっていきます。また、ボールのホールド時間は伸びます。
また、コントロールしにくくなると、ボールスピードやボールの滑ってくるような伸びが出なくなります。
さらに、コントロールを補うために手首を固めて打つことも多くなります。ただ手首を必要以上に固めて打つと、手首を痛めたりテニス肘(上側)やゴルフ肘(下側)になったりと怪我の原因にもなります。
ボールの伸び
コントロール欄でも述べましたが、コントロール性が下がるとミスを減らすためにネットとボール間のクリアランスを多く取りたいがため、スピンをしっかりかけて打つようになります。スピンを多くすればするほど、バウンド時のボールの減速量が大きくなり、ボールが伸びなくなります。
もちろんスピンが過多で深い(ベースラインぎりぎり)ボールが打てれば、スピンによってボールが高く跳ね攻撃力が高いですが、少しでも浅くなってしまうと上級者ほどチャンスボールになってしまいます。
実経験を話すと、旧プレステージミッド(93インチ18×20)にブラスト1.35を40lb前半で張っている方(日本ランキング保持者150位以内)でも、3~4カ月前に張ったストリングの場合、ほんの少しだけ跳ねて取りにくさはあるのですが、全然ボールが”滑ってくるように”伸びてきませんでした。張りたてなら、「ボールスピード遅いじゃん」と思っているときでもえげつなくボールが滑ってきて振り遅れるくらい伸びてくるのですが。
上級者になればなるほど、攻撃力がなくなれば相手のミス数も少なくなるわけで、試合に勝つのが難しくなります。
打感
打感については個人の主観であることやストリングによって違うため難しいですが、間違えなく言えることは、ストリングのスナップバック量とたわみ量が増えます。
他には、振動が出てきたり(ものによる)、打感のフィーリングが変わったりします。
フィーリングに関しては最初の1週間で大きく変わります。内容としてはそれぞれですが、だいたいは少し柔らかくなっていると感じると思います。よく「打感がぼやける」とか言われますが、個人的そうは感じません。振動止めの方がよっぽど打感が分からなくなります。自身がどちらかというと伸び量の大きさにフォーカスしてしまうことが多いのもあるかもしれません。コントロールの方が圧倒的に気になります。
半年以上たったストリングも使ったことがありますが、「嫌な打感」とかにはなりませんでしたが、伸びすぎて全くコントロールできませんでした。もちろんもともと伸び量が多いストリングであったのも理由でしょうけど。伸び量が少ないストリング(ハイパーG 【インプレを見る】 やオリジナル【インプレを見る】など)の方は、ボールの伸びとかは出せないけど、意外と打てました。もちろん攻撃力やコントロールの精度は結構低いです。
反発
張ってから少し経つにつれ、若干反発力が上がります。その後は感じられるほどの変化がありません。
もちろん「コントロール性が悪い=飛びすぎ」という方なら、「飛ぶ」とはなるのでしょうけど。
スピン
スピンに関しては、テンションが下がるにつれ、スナップバック量が増えたりホールド時間が長くなるため多くなります。
また、コントロール性も低下しており、打者がスピンに頼ることが多くなるため一層増えます。
安定感
若干コントロール性と被るのですが、安定感です。被ると言っても、別物でもあります。
テンションが緩くなるにつれ、フラットで打った時とスピンで打った時の差が大きくなります。余裕があるときは良いですが、きついボールの時に、フラットで打ちたかったのにスピンで・スピンで打ちたかったのにフラットで打ってしまった時に、ミスショットになりやすいです。
簡単に言えば、ミスの許容範囲が小さくなり、非許容範囲が大きくなります。
ジョコビッチ・マレー・フェデラー・ワウリンカ・フォニーニなどは60lb前後で張っています。また素人でも、T-FIGHT18×19などストリングが動きにくく安定感が高いラケットの方が、きついボールでもしっかり打てます。
実際の寿命
実際の寿命は、正直それぞれだと思います。
個人的にポリは、テンション維持の良いものでも2週間くらいすると明らかにコントロール性が下がっているのを体感できます(打ち比べなくても)。テンション維持のめちゃくちゃ良いものでも、寿命はMAX2カ月位かなと思います。そうでなければ、2週間~1カ月位ですかね・・・。試合の場合は、できれば3日以内が良いですが、MAXでも1週間だと思います。
学生クラスのハードヒッターの場合、2週間でも伸びっ切ってしまっている人もいます(ブラスト1.30)。少なくともポリなら、ストリングが元の位置に戻らないようになったら替え時であることは間違いないです(高摩擦コーティングがしてあるRPMパワー 【インプレを見る】 は除く)。
手首の怪我をしている場合は、明らかにコントロール性の不足です。一カ月以内には張り替えたほうが良いです。
ナイロンに関しては、3カ月と言われてますが、正直切れてしまうので正確には分からないです。一応変化量は緩やかですがポリと同様な特性になります。3カ月経っていてもポリよりは気にはならないです。もともとフラットの安定感がポリより高いのが理由だと思いますが。
ポリ×ナイロンやポリ×ナチュラルにしている場合は、テンション降下量が縦と横で違うため、コントロール面での寿命は非常に短いです。ポリ×ナチュラルを1カ月張っていた場合、コントロール性の悪さからそんなにボールスピードが出せないため、持ち腐れのような感じになります(特に縦ナチュラル)。それだったら、エックスワンバイフェイズ単張りがいいと思います。
まとめ
基本的に、ストリング(ガット)は、テンションが落ちていくにつれ、コントロール性が悪くなります。
コントロール性が良くないとショットの攻撃力がない上、怪我のリスクが高まります。
「どうせ分からないから」と言い、ポリを半年とか張っている方もいますが、「ラケットは50%・ストリングも50%の性能を出している」というくらいなので、しっかりストリングも選ぶことをお勧めします。最初は「どうせ分からないからいい」と言っていた人でも、変えた後に「全然違う」という人がほとんどです。もちろん好きなものにも当たることもあれば、嫌いなものにも当たることもあります。それも含めいろいろ試してみるのもテニスの楽しさだと思っています。