テニスラケットのスイングウェイトの仕組みと目安・注意点

テニスラケットのスイングウェイトの仕組みと目安・注意点

2021年2月12日 0 投稿者: gura

 テニスラケット選びで目にすることが多い「スイングウェイト」。一般的には重ければ、「振りにくいが打ち負けない」と言われていますが、そこまで単純な話ではありません。

 スイングウェイトを計測する機械は、通常プレーするスイングスピードでの計測ではありませんし、スイングウェイトが同じでも、総重量が違えば、フィーリングが全然違います。





 スイングウエイトの仕組み

 まず、スイングウェイトとはなにか?

 それは簡単に言えば、「回転運動のしにくさ」です。科学的用語を使うのであれば、「慣性モーメント」です。


 慣性

 慣性とは、力が加わらない時「静止している物体は静止し続ける」「動いている物体は動き続ける」という法則です。

 例えると、振子は力を加えなければ永遠に往復運動し続けますし(空気抵抗という力が働くため最終的には止まってしまいます)、床に置いてある物は、静止しています。また、バスや電車に乗っていて、加速すると時は体が後ろに引っ張られる現象・減速するときは前につんのめる現象のことです。


 慣性力

 慣性力とは、上記の慣性がどれくらいの大きさかを表します。

 慣性力は重量が多いほど大きく働くため、重くなればなるほど大きくなります。例えば、つり革のリング部分を重くすればするほど、加速や減速をしたときの動きが大きくなります。

 もっと簡単に言えば車です。摩擦など複雑な概念を考慮しなければ(慣性の方が影響が大きいため)、車重が重いほど加速や減速がしずらいです。また、軽自動車とミニバンを人力で押してみると、ミニバンの方が同じ速度まで行くのにかなりの力を使うと思います。(ギアをNにして押せばわかります)


 慣性モーメント

 慣性モーメントは、回転運動の中で上記の慣性力がどのくらい働くかを表します。大きくなればなるほど慣性により、加速に対する抵抗が大きくなります。

 慣性モーメントが大きくなる条件は、「重量が重い場合」・「支点から重量までの距離が長い場合」です。重量に関しては、2倍になれば慣性モーメントも2倍になります。距離は2倍になれば慣性モーメントは4倍になります。

 テニスラケットで例えると、ありえないかもしれませんが、単純に重量が2倍になればスイングウェイトは2倍に、倍の長さのラケットなら4倍になります。



 スイングウェイト計測方法


 
 3:55よりスイングウェイトの測定をしています。

 一定の力を加えた時の加速のしにくさでスイングウェイトが数値化されます。



 スイングウェイトの注意点

 重量分布

 スイングウェイトは、重量分布がなければ簡単なのですが、実際は違います。

 スイングウェイト(慣性モーメント)は、距離の二乗に比例するため、中心付近に100の荷重がある場合と、ラケットトップ付近に50の荷重がある場合、距離が2倍だから100になるのかなと思いきや、2倍の二乗(2×2)で、4倍になり、200の荷重となります。

 またスイングウェイトは、グリップエンドから10㎝位の位置を支点としているため、ここに1000とかの荷重があっても、反映されません。したがって、トップに50・支点に50の荷重と、中央に100の荷重の場合、バランスが中心で重量も同じですが、50・50の方がスイングウエイトが倍になります。

 メーカーがどこに荷重を分布させているのかにもよって、スイングウェイトは変わります。ただ、上記は極論のため、使いやすいようにある程度は一定の範囲には収まっています。

 ただ、いくらスイングウェイトが軽くても、総重量が重ければ振りにくいです。

 正直重量分布は、メーカーの製造工程の中で、許容範囲内ではありますが違いがあるため、計測してみるしかすべはありません。結構大きな違いがあります。


 空気抵抗

 スイングウェイトは、上の動画のように測定していますが、一定の力で揺らした時(たぶんばねで押してる)、どれくらいラケットが加速しないかで数値化します。

 つまり、先ほども述べた慣性モーメントによる加速の鈍さはもちろんですが、空気抵抗でも加速の鈍さは出ます。空気抵抗が大きいラケットは、スイングウェイトが通常より大きく出ます。
 同じ重量・バランス(実測値)でもピュアドライブとアエロでは、アエロの方が4ほど重かったみたいです。(※テニスウェアハウス調べ)

 また、スイングウェイト測定機は、完全フラットで振ったときの数値です。したがって正面が平面のボックス系のフレームは不利になります。しかし、テニスは通常斜め上に振ります。したがって、フレームの薄さが空気抵抗を軽減するため、スイングウェイトの値が減ります。


 まとめると、スイングウェイトが軽いからと言って「振り抜きやすい」・重いからと言って「打ち負けない」とはなりません。少しはラケットが加速しやすくなりますが、あくまで参考値にしかなりません。


 スイングウェイトのまとめ

 スイングウェイトが同じでも、ラケットのフレーム形状や総重量・空気抵抗など様々な要因で、振り抜きやすさは変わります。違うラケットの場合スイングウェイトは、参考値程度にしかなりません。もっと言うと、空気抵抗は速度の2乗に比例するため、測定機の時より、実際のスイングの空気抵抗の方がはるかに大きくなります。

 一例を出すと、先ほどのピュアアエロですが、スロートの形状上、斜め上30°位で振ると実測値の4以上の差が出るはずです。


 正直、スイングウエイトという指標は、新しいラケットを買う場合の指標には向きません。空気抵抗か慣性か、振り抜きにくさはスイングウエイトだけでは表せないからです。空気抵抗が大きいラケットは同じスイングウエイトでも、フレームのよじれが少なく反発力は出る傾向がありますが、オフセンターショットのブレが大きくなります。正直使ってみなければ、分かりません。

 複数の同じラケットのスイングウェイトを合わせて使うことは、感覚が近くなるため、メリットがあります。




 スイングウェイトの目安

 一般的なラケットのスイングウェイトは、
・ピュアドライブ:280~290位
・ピュアアエロ:283~293位
・エクストリームMP:289位
・ラジカルMP:285~295位
・プレステージMP:290位
・ブイコア100:283位
・ブイコアプロ:285位
です(起己スポーツさんのSWより判断)。ストリングなしですが、280~295の範囲が全体的な基本に思われます。意外と320gもあるプレステージMPが重そうに感じないのではないでしょうか。

テニスウェアハウス調べでは
・ブレード18×20:334(ストリング本数が多い)
・ブレード16×19:328
・プロスタッフ97:321(ブレードよりフェイス面積フレーム正面厚が小さい)
・プロスタッフRF97:333
・ピュアドライブ:320
・ピュアドライブVS:317(ピュアドラより先端のフレームの正面厚が薄い)
・ピュアアエロ:324(ピュアドラよりスロートが太い)
・プレステージミッド327
です。18×20本のラケットはストリングの重さが多くなるため、330を超えてますが、同じ16×19なら、振り抜きやす差の影響も大きいと思います。

 スイングウェイトの目安をある程度書きましたが、完全な法則性はありません。また、個体差も10以上あることが多く、スイングウェイトでラケットを選ぶのは違うのかなと思います。

 プロのスイングウェイトは、フェデラー・ティエムが340、ジョコビッチ・ナダル・ワウリンカ・ズベレフが360、チチパスが343(ストリング込)で、単体重量は320~340位が一般的です。



 まとめ

 スイングウェイトは、測定方法が実際の使用レベルと違うため、正直スイングウェイトにこだわるのはどうなのかなと思います。また、個体差も10以上違う場合もあります。

 正直なところ、ラケットのコントロール性(打ち負けなさ)は重量だけでは決まりません。ストリング本数はもちろんですが、その配置間隔や、オフセンターショット時の安定性、コントロールを補う反発性、タッチなど、様々な要因がショットの精度に関わります。したがって、実際に試合で使用してみなければ、分からないと思います。

 ただ競技者で同じラケットを複数持つ場合は、スイングウェイトをそろえることでフィーリングの違いが出ずらいと思います。