筋力少ない日本人こそ18×20のテニスラケットがベストな理由

筋力少ない日本人こそ18×20のテニスラケットがベストな理由

2021年2月10日 0 投稿者: gura

 比較的飛びが控えめな、ストリングが18×20本のラケット。「日本人は筋力がなくて使えない」や、「飛ばない・飛ぶ のどちらかだったら飛んだほうが良いよね」などと、高反発系の16×19のラケットを選びがちです。

 しかし、ストリングが18×20本のコントロールモデルのラケットは、確かにピュアドライブなどの反発系ラケットと比べれば飛びませんが「コントロールモデル」と言われているだけあって、繊細なコントロールができます。また、反発性もかなり向上しており、WTA(女子)も18×20のラケットを使う選手が増えてきています。





 コントロール系ラケット

 「ピュアドライブは飛びすぎ」「18×20のラケットは飛ばない」と表現されることが多いですが、これは間違いです。

 基本的にストリングが撓んだり、スナップバック量が多かったりするとコントロールが悪くなります。逆にたわみ量が少なかったり、スナップバック量が少なければ、コントロール性が高いです。「飛びすぎて使えない」という表現は、基本的に「飛びに対してコントロール性が高くない」という意味です。(メーカーをかばう意味で使う場合もあります)

 
 ピュアドラなどの反発系ラケットの場合ですが、反発力を出すためにフレームの剛性を高めています。その結果しならないため、ストリングを18×20本で張ったり、同じ16×19本でも、ウィルソンのウルトラだとか、ヘッドのインスティンクトのように中心に寄せてしまうと、回転がかかる前にボールを弾きだしてしまったり、ホールド感がないため、コントロールができなくなります。したがってピュアドライブはストリングが16×19本でも間隔が広くなっています。

ここで、コントロールが乱れる原因を詳しく解説してあります。

 逆に、18×20のラケット(例えばテクニファイバーのTF40など)は、ストリングパターンをタイトにしても、フレーム自体をしならせることによって、回転もかかるし、ホールド感もありタッチショットもできるようになります。何よりストリングパターンがタイトになっているため、打った時のコントロールのムラが少なくなります。


 18×20のラケットの利点

 18×20のラケットの方が、ストリングの動く量が少ないため、コントロール性が高いです。また、18×20のラケットは残しておく必要がある余力がピュアドライブなどの反発系ラケットと比べ少ない上、繊細なコントロールもできるので、意外と利点になります。打ってみると、想像以上に飛ばせるはずです。 

 また、ボールが滑ってくる(減速量が少ない)ような伸びのあるストロークが打ちやすいです。以下のリンク先に解説とブライアン兄弟の練習動画がありますが、トッププロがベースラインより2m位下がっても、しっかり打ててない(返球はできているが振り遅れ)時があります。

 
 また、18×20のラケットの一部(ブレード・グラビティ・TF40など)は、縦がほぼ均等(外側が若干広い)で端まで入っています。したがって、スピンが少し控えめなセッティングで、フラットドライブ(ボールの伸びがあるショット)を安定させて、スピンをかけに行きたい時は、自分でかけに行くスタイルでもコントロールが乱れにくいです。(ラケットにもよりますが)

 備考:ラケットが出せるボールスピード

 上の動画2つは、ラフィノさん(ショップ)のインプレダブルス動画なのですが、反発系のEZONEよりコントロール系のVCORE PROの方が、しっかり打てているため、連続でしっかりとしたショットが飛んで行っていることがお分かりいただけると思います。(もちろんある程度編集はされていますが)

 つまり、「飛ぶラケット=ボールスピードが出せるラケット」というわけではないのです。ボールスピードが出せるラケットは「ラケットの反発性+コントロール性」が必要になります。もちろん、余裕が多いときはコントロール性を技術で補えるため、ある程度高反発モデルでも問題ありません。

 サーブに関しては、相手のボールの影響を受けないため「飛ぶラケット=ボールスピードが出せるラケット」です。




 なぜ筋力が控えめな日本人に18×20のラケットをお勧めするのか

 日本人は筋力が少ないため、「飛ぶラケットにする!」と言っても、外国人の方が余力があるため同じコントロール性は出せません。反発系ラケットどんなに余力を残してもコントロールは大雑把です。

 また、絶対的な筋力については、ジョコビッチが95インチラケット(18×20)、ワウリンカ・シャポバロフがブイコア95(16×20)、シモンがプレステージミッド(95インチ・18×20)などです。これらを見ると、意外に筋力によってラケットを選んでも「勝てない!」ということを表していると思います。

 筋力が少ない日本人は、ウルトラツアー95のように特殊なラケットに頼るか、ジョコビッチやフェデラーのように人一倍ピンポイントのコントロールを極めるしかないのです。また、低くて速いアングルショットや低軌道の伸びるスライスなど繊細なコントロールを表現できるのは、ハードスペックと呼ばれるモデルです。シュワルツマンなんて身長170㎝とテニスプレイヤーとしては小柄ですが、プレステージやラジカルと同じ系統のラケットで、ストリング間隔が18×20のラケットを使用しています。パワーを補うために1インチ(2.54㎝)ロングのラケットですが。

 ハードスペックというからには、「使うのがハードなのかな」と思いがちですが、技術の進歩によりそこまでハードではないです。ウィルソンのブレードV7.0あたりから、WTAのキキ・バーテンズ、アリナ・サバレンカ、ペトラ・マルティッチなど、18×20本のラケットを使っている女子選手も増えてきています。ちなみに、V7.0から、フレックスがRA62の割には、フェイスのバタつきが非常に少なく、かなり飛びます。また、飛び抜けた安定感があり、どんどん攻撃できます。

 また、ピュアドライブなどの反発系のラケットはフラットドライブの攻撃力が多くありません。余裕があるときは打って行けますが、少しきつい場面では博打です。その証拠に、ピュアドライブやエクストリームなどの反発系ラケット対決の試合では、比較的ラリーが長く続いてしまっています。もちろん、繋いでここぞというときに一発撃つという戦法も否定はしません。逆にスピンで跳ねて取りにくいような攻撃力はピュアアエロほどではないですがあります。




 使える条件

 競技者ではなくても、ラケットを全身を使って大きく振ることができる方なら、18×20のラケットは使えると思います。また、18×20のラケットを使うことで、コントロール性が上がるため、きついコースに打て、相手もミスしてくれるようになります。

 飛びだけで言えば、ピュアスト・TF40 305は、プロスタッフ97(315g)・ブレード16×19・グラビティmpより飛びます。TF40 305は、同じ305gですがバランスが325㎜と重そうですが、スイングウェイト自体は320半ば(個体差はありますが、スピードmp・ピュアスト16×19・ピュアアエロなどと同じくらい)と少し軽めです。チートラケットの一つです。飛ばない16×19のラケットより全然飛びます。コントロール性も高く、余力が少なく振れるためボールスピードが出せます。

 プレースタイル

 18×20のラケットを使える条件は、プレースタイルが「コントロール重視・ボールの伸び重視」というスタイルです。

 18×20のラケットでスピンがかかりにくいからと言って、多角形のストリングを使ってしまうと、ボールの伸びがなくなる上、軌道の調整も難しいので、アングルショットや低軌道の伸びるスライスなどが難しくなるなど、デメリットが多くなってしまいます。また、縦振りを多用しスピンによるバウンド後の高さを武器にする人は向きません。

 基本的にはジョコビッチのように左右にしっかり振って、行けると思ったところでダウンザラインなどを狙うと効果的です。また、フラット系セッティングにしてボールの伸び重視にしても効果的です。

 


 ラケット

 同じ18×20本のラケットでも、パワー・絶対的なコントロール性・安定性・振り抜きやすさ・スピン量・スイートエリアなど様々な違いがあります。93インチ・18×20本・ボックスフレームなどと時代に逆行したようなラケットもあります。したがって、個々に合った18×20のラケットを選ぶ必要があります。

 先ほどブレードV7.0の18×20の話を出しましたが、以前のモデルより、反発・フィーリング・安定性(トップクラス)などかなり向上しています。反発に関しては、プロスタッフがボックス形状のため、スイートスポット(エリアではなく一点)を外すと飛ばなくなりますが、ブレードはフェイスのバタつきが少ないため、少し外しても反発はそこまで落ちません(プロでもフレームショットをする時代なため重要)。また以前の絶対的なボールスピードは、プロスタッフ(315g)でしたが、V7.0は、同じくらいと評価する方もいます。ただ、ブレードはスイングウェイトが重いのとフェイスのよじれを抑えるためラケットトップのフレームの正面厚が大きいため、振り抜きは少し悪いです。

 一番のおすすめとしては、テクニファイバーから発売されているTF40 305です。ストリングパターン18×20のラケットは一般的に、反発を上げるため&コントロールを上げるためスイングウェイトが重くなることが多いですが、このラケットは、ピュアストライク16×19やスピードMPより軽い(誤差がない前提で)です。したがって振り抜きが悪くありません。それでいて、18×20のラケットの中でトップクラスの飛びです。ブレードの方がストリングが動かない分安定性は高いですが、扱いやすさはTF40です。


 また、ストリングも、コントロール性が高めのものでないと、精密なコントロールはできません。また、ローテンションもストリングによるコントロールの乱れを誘発するため、やらない方が良いです。ストリングもアルパワーなど反発・スピン・コントロールが良いものを選ばないといけません。



 まとめ

 ストリングが18×20本のラケットは一見ハードすぎると思われがちですが、技術の進歩やコントロール性の良さからスイングスピードが上げられるため、そこまで飛ばないということはないです(ラケットにもよりますが)。18×20のラケットを使うことによって、繊細なコントロールができるため、筋力がなくても攻撃力が高いです。

 ただしすべてのラケットがそうですが、間違った使い方をすると、メリットを殺してしまうため、勝てなくなります。