テニスのガットの摩擦がある場合とない場合のメリット・デメリット

テニスのガットの摩擦がある場合とない場合のメリット・デメリット

2022年4月1日 0 投稿者: gura

 テニスにおいて、ガット(ストリング)の摩擦量は非常に重要です。日本では「ない方が良い」と言われてることも多いですが、これは間違いなく不正解です。基本的には摩擦はある程度あったほうが良いです。

 特に握力や手首の筋力がない方は、摩擦が多い方がメリットになります。


 摩擦のあり・なしで生じるメリット・デメリット

 バボラのエクセルのように「極端に高摩擦」のガットの場合、スナップバックというストリングが動く現象が非常に少ないです。
 このことにより、スピン量が少ない反面、面ブレが生じにくいため、握力や手首の筋力がない方にとって、フラットショットがコントロールしやすくなります。「しっかり力が伝わる」という意味でとらえると分かりやすいと思います。
 また、フラットの「滑ってくるような伸び」が出し易かったり、スライスも低軌道で打てるため非常に伸びてきます。


 逆に、バボラの「RPMブラスト」のように、シリコンコーティング(超低摩擦コーティング)がされている場合、(基本的には)スピン量が増える半面、想像以上にストリングが動いてしまうため、スナップバックによる面ブレを起し、ネットにかかってしまったり、ラケットの面の向きより上方向にボールが飛んで行ってしまい、アウトしやすくなります。(ブラストは太ゲージ高テンションで張ったほうが、ベストパフォーマンスだったりします。)

 つまり、筋力がそこまでない方は、摩擦の多いものを使い、筋力の強い方はある程度摩擦が少ないものを選ぶのが基本的にはベストです。


 プロはどうなのか

 フェデラー・ジョコビッチ(縦ナチュラル・横アルパワーラフ)

 フェデラー[セッティングを見る]ジョコビッチ[セッティングを見る]は、横に摩擦の少ないノーマルのアルパワー[レビューを見る]ではなく、少し摩擦のあるアルパワーラフ[レビューを見る]を張っています。また、縦のナチュラルガットもポリストリングほど低摩擦ではありません。

 横に少し摩擦のあるストリングを張ると、スナップバック量は減りますが、ホールド時間の向上や、スナップバックが止まってほしいところで止まってくれるというメリットがあります(フラットドライブが安定し、力も伝わりやすいため球速も上がる)。

 縦(ナチュラルガット)にも摩擦があるため、余計にストリングは動きにくいですが、ボールとストリング間の摩擦量が多いため、しっかりとスピンはかかってくれます。


 ズベレフ(縦ホークタッチ・横ナチュラル)

 ズベレフ[セッティングを見る]もフェデラーやジョコビッチと同様に、横に摩擦のあるストリング(ナチュラルガット)を張ることで、フラットドライブを安定させています。

 縦は、スピン量の調整がトップクラスにしやすい(コントロール性が高い)「ホークタッチ[レビューを見る]」を張っています。

 こうすることで、ネットクリアランスを多く取る必要がなく、しっかりフラットドライブが打てるのです。


 縦ポリ・横ナチュラル(マレー・大坂なおみなど)

 これは、ズべレフと同じ原理です。他にもチチパス(横4G)だったりバーティ(横ホークタッチ)だったりです。

 マレー[セッティングを見る]の場合は縦がアルパワーですが、この場合は一発の攻撃力が高くなります。

 ネットギリギリのハードヒットする方は横ナチュラルのセッティングが多い気がします。


 ティエム(RPMパワー)

 ティエムはピュアストライク18×20にバボラの「RPMパワー」を張っています。

 RPMパワー[レビューを見る]」はポリには珍しく、”高摩擦コーティングがされている”ストリングです。程度で言うとナイロンの中間位の摩擦で、ヨネックスの850シリーズ位です。

 正直にこのセッティングは、ほぼど真ん中で打つとほとんどストリングが動きません。これが160km/h以上のウィナーやリターンを連発できる理由でもあります。※ティエムはスピンをかけるために、ど真ん中ではなく、若干下側で打っています(わざとオフセンターショットをしてスピン量を増やすテクニック)。

 日本のピュアドラ勢もストリング間隔が粗い(スナップバックによる面ブレが大きくなる)ためか、RPMパワーを使っていますしね。それだけストリングの摩擦は大切なのです。


 例外1 アルパワーとオリジナルと4G

 ルキシロンから発売されている「アルパワー」と「オリジナル」と「4G」は、フラットで打った時”のみ”に特に球離れが早いように設計・製造されています。そうすることで、フラット(ドライブ)で打った時、スナップバックによる面ブレが大きくなる前にボールを弾き出してくれます。
 したがって、他のポリより摩擦がなくてもフラットドライブが打ちやすいです。

 RPMブラストなどもこの特徴はありますが、フラットショット時の球離れの早さと、スピンショット時のホールド時間の長さをここまで両立しているのは、アルパワーとオリジナルと4Gだけです。

 「アルパワー[レビューを見る]」は、フラットドライブの打ちやすさが秀でていて、高反発&高スピンのため安定感が出し易いです。テンション維持は悪くないですが打感が変わるのは早いため、好き嫌いがあります。

 「オリジナル[レビューを見る]」は、テンション維持も良く、フラットドライブとスピンの打ち分けがしやすい上、コントロール性も高いので、スピンを使いたい方にとって、最強ストリングだと思っています。


 例外2 RPMブラスト(ナダル・ワウリンカ・フォニーニ)

 RPMブラスト[レビューを見る]」は、シリコンコーティング(超低摩擦)がされているため、しっかり固く(太ゲージ&高テンション)張っても、ストリングがしっかり動いてくれます。したがって、徹底的にスナップバック量を小さくして面ブレを抑えられるのです。

 ワウリンカやフォニーニは1.30㎜なのに60lb近くで張っていますし、ナダル[セッティングを見る]は55lbですが1.35㎜です(2022年頭に1.30㎜をテスト中)。

 ナダルのセッティングを1.25㎜で換算すると、70lb近くになります。ラケットも現行のピュアアエロではなく、ストリング間隔の狭いアエロプロドライブを使っています。


 まとめ

 つまり、ストリングの摩擦は、ありすぎてもスピンがかかってくれなく、なさ過ぎてもスナップバックが意図的なところで止まってくれなかったり(フラットドライブが安定しない)・ストリングの上でボールが滑ってしまい引っかからなかったり(スピンがかからない)します。

 ストリングが18×20本のラケットは、摩擦でスナップバック量を抑えている訳ですし、太ゲージや高テンションで張るのも、ストリングが動きすぎるからであって、摩擦量で動きすぎは抑えられます。

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