ラケットは高反発(中厚)と高コントロール(薄ラケ)どちらを選ぶべき?

ラケットは高反発(中厚)と高コントロール(薄ラケ)どちらを選ぶべき?

2022年1月17日 0 投稿者: gura

 日本では、ピュアドライブが非常に高反発で「楽」だとか「最強」だとか、「筋力が少ない日本人はピュアドライブを使いべき」などと言われています。一方「ピュアドライブは飛びすぎて使えない」という人もいます。薄ラケは「ハード」だとか特に「ストリングが18×20本のラケットは日本人には向いてない」だとかネガティブなイメージがあります。

 では本当に、高反発ラケットが最強で、高コントロールの低反発ラケットはネガティブなのでしょうか?また、どちらを買うべきか考えていきます。





 高反発ラケットと高コントロールラケットの違い

 一般的に、バボラのピュアドライブやヨネックスのEZONEなどが高反発モデル、ウィルソンのブレードやヘッドのプレステージなどがコントロールモデルとなっています。

 これらの何が違うかというと、一番の違いは「ストリング(ガット)の間隔です。ストリングが同じ16(縦)×19(横)本のラケットの中でも、ピュアドライブなどの高反発ラケットは非常にストリング間隔が広いです。一方ブレード・プレステージなど高コントロールラケットは高反発ラケットよりストリング間隔が狭いです。

PURE AERO

TF40 305

 ではなぜ、「ストリング間隔が違うのか?」それは、スナップバック“量”がコントロール性を変化させるからです。


 例えば、普通のラケットに伸び量の多いストリングを張ってボールを打ってもらえれば分かりますが、スナップバック“量”が多いほど、コントロールの乱れの原因となる面ブレの量が大きくなることが分かります。ストロークでセンターより下側で打てば面が下に向き、上側で打てば面が上に向きます。ボールもその方向に飛びます。
 ただ、トップスピンの場合下側で打つことで縦のストリングのスナップバック力が強く働きフェイス面の向きより少し上向きに飛んで行くため、面ブレの量並にミスショットにはなりませんが、スピン過多によってボールが少し横にそれたりします。つまり、意図したスイングができれば問題ないですが、意図を外した時にショットのムラが大きく出やすいのです。

 逆に、スナップバック量を抑えれば抑えるほど面ブレを抑制でき、ショットのムラが少なくなる(コントロールが上がる)のです。高摩擦でスナップバックが少ないバボラのエクセル(1.35㎜)を60lbとかで張りドフラットショットを打てば分かります。

 正直に言って、この説明だけでは伝わりにくい(体感してみないと分かりにくい)と思うので、「スナップバック量が多いとショットのムラが大きい」と覚えておいてください。YouTubeとかでストリングのテンションを変えて打っている人のボールの着弾点を気にしてみてみると分かるかもしれません。またストリングのテンションを10lb以上変えてハードヒットした時のコートへの収まり具合でも体感できると思います。

 そこで、コントロール系ラケットはコントロールの乱れの原因のスナップバック量を少なくするために、ストリング間隔を狭めています(ストリング同士の摩擦が強くなるためスナップバック量が少なくなる) 。ただ、ストリング間隔をむやみに狭くしてしまうと、ホールド時間やスピン量が欠如するため、ラケットのフレームのしなり(しなるようにフレーム厚を薄くしている)で、ホールド時間の長さや、しっかりとしたスピン量を確保しています。

(※スナップバックが小さいほどコントロール性が高いと説明しましたが、スナップバック量が少しはないとスナップバック”力”がいくら強くてもスピンがかからなく、ネットとボールのクリアランスがとれないがゆえに、博打のようなショットしか打てません。したがって、適切なスピンをかけるだけのスナップバック量が実際には必要です。)




 高反発ラケットを選ぶか高コントロールラケットを選ぶか

 ボールスピード

 まず、ボールスピードです。高反発ラケットは、ストリング間隔が粗いためスナップバック量が多く、強打するとコントロールが乱れやすいです。逆に、高コントロール&高安定性のラケットは、ショットのムラも少なく、強打も比較的安定します。したがって、高反発ラケットは余力が4必要なのに対し、 高コントロール&高安定性のラケットは 余力が2で良かったりするため、ストロークで出せるボールスピードは「高反発だからボールスピードが出せる」とはならず、同じ筋力の人の場合、極端に言うとほぼほぼ一緒です。もちろん、反発性とコントロール性が共に低いラケットはボールスピードが出せませんし、当人にあっていない場合も同様です。

 その証拠に、男子学生がピュアドライブ2018年モデルとグラビティプロ(ストリングが18×20本)の2本使っていたのですが、MAXのボールスピードが出るのは、間違いなくグラビティプロ(超コントロール系ラケット)でした(誰でも分かるくらい違います)。もちろんセッティングを極めれば変わる可能性もあります。

 またプロの世界ですが、一番速いウィナーを何度も連発しているのがティエムでピュアストライク18×20(98インチ)を使っています。ストリングも少し飛びが控えめな「RPMパワー[レビューを見る]」を使っています。一方ピュアドライブ(100インチ)を使っているフォニーニは、テイクバックを小さくして振ることで、ボールとラケットの衝突スピードが遅くし、コントロールの乱れを抑えています。また、グランドスラム(トーナメント)優勝者が使うラケットが、ピュアエロから95インチのラケット(ジョコビッチやメドベージェフ)と、同じではないことも証拠です。

 ただ、サーブに関してだけはコントロール性の影響が少ないため、出せるボールスピードは反発力に依存しやすいです(完全ではないですが)。もちろん高精度のコントロールはコントロールモデルです。

 どのくらいのコントロール性を求めるか

 まず、ショットの繊細なコントロールですが、ストリング間隔が広いラケットほどショットのムラが大きいため、高反発ラケットでどんなに丁寧に打ったとしても、高コントロール&高安定性のラケットにはかないません。フェデラーやジョコビッチのようにラインぎりぎりだとか、しっかりコースをついていきたい方は、 高コントロール&高安定性(ムラの少ない) のラケットを選ぶべきです。

 アングルショットを打つ場合も、高反発ラケットは多くのネットとのクリアランスが必要です。一方、高コントロールモデルはネットとのクリアランスが多くいらないため、バウンド後の高さが低く滞空時間も短いため(カラツェフが参考になります)、返球されにくかったりします。

 ラファエル・ナダルやジャック・ソックは、ストリング間隔が粗い”現行のピュアアエロ”を使っているような宣伝がされていますが、実際は過去のモデルでストリング間隔は現行のスピードMPより狭かったりします(ナダル=アエロプロドライブ2005)。しかも、ナダルはRPMブラスト[レビューを見る]の1.35㎜とムラの少ない太ゲージを張っていますし、ソックもアルパワーラフ[レビューを見る]と伸び量の多くないストリングを使っています。

アエロプロドライブ2005
by tennis warehouse

 体力

 次に体力です。確かに高反発ラケットは余力を多く残しておかないといけないラケットのため、1ショットあたりの体力消耗量は少ない(ある意味楽)と思います。ただ、繊細なコントロールやボールの伸びが出しにくいため、ラリーが長く続いてしまう場合は、トータルの体力消耗量が増えるため、コントロールモデルと変わらないかもしれません。使い方次第ですかね。

 さらに言うと、 ストリングを太めにしたり・ 高テンションで張ったりすると、コントロール乱れの原因のスナップバック量を減らせるため、MAXのボールスピードが上がります(もちろん適正はあります)。ただ、太めのストリングや、ストリングを高テンションで張ったラケットは、反発性が落ちているので、結果、1ショット当たりの体力消耗量が増えます。


 スイートエリア

 次にスイートエリアですが、確かに高反発モデルの方が「飛び」の面でのスイートエリアは広いと思います。ピュアドライブやピュアアエロなどは少し外しても反発性があまり落ちにくいです。

 ただ、コントロール面のスイートエリアは、高安定性ラケットの方が広いと思います。意図したスイングじゃなくなってしまっても、そのミスが大きく出ません。高コントロール&高安定性のラケットほど、狙う的が小さくても問題ないです。特にストリングが18×20本の「TF40」「ブレード」「グラビティ」等、縦のストリングが均等(左右幅)に配置されているラケットほどコントロールが乱れにくいです。


 攻撃力

 まず、初心者や初級の方の場合、どちらかというと「ミスしないことが最大の攻撃力」になります。したがって、高反発ラケットを使い、できるだけ丁寧に返球して行った方が、試合で勝つ確率が高いと思います。

 一方、上級者になればなるほど、イージーなミスをしないのは当たり前で、ボールの滑ってくるような伸びだったり、スピンによるバウンドの攻撃力だったり、しっかりとしたコースをつく攻撃力などが必要で、攻撃力が無ければ相手に打ち込まれて終わります。したがって、もちろん目指すプレースタイルにもよりますが、しっかり振っていきたい方は特に少しコントロール性の高いラケットを選んだほうが良いと考えています。


 ミスのリカバリー性(重要)

 基本的に、低コントロール&低安定性(特に高反発)のラケットほど、スナップバックの量の差が大きく、スイングの角度だったり・ボールを打つ(ラケットフェイスの)位置・面の向きなど、 意図したスイングでボールを打たなければ、ミスになりやすいです。

 逆に、高コントロール&高安定性のラケットは、スイングが少し意図から外れても、そのミスが大きく出ないため、失点になりにくいです。

 簡単に言うと、低コントロール&低安定性のラケットほど、完璧なスイングを求められ、逆に、高コントロール&高安定性のラケットほど、少しスイング完璧でなくてもいいですが筋力が求められます(ラケットが重くなる)




 プレー別ラケット

 ボレー中心プレーヤー

 ボレー中心の方は、フラットで打った時に面がブレにくいピュアドライブやEZONE100を使うことによって当てるだけでもしっかりボールが返ってくれるため、ディフェンスボレーがしやすいです。

 一方、ドロップボレー等繊細なコントロールをしたければ、ストリングが動きにくいラケットの方がムラが少ないため、準コントロール系のラケット・コントロール系ラケット(攻撃ボレーが強い)がベストです。

 特にドロップボレーは、反発性がないラケットの方が、ラケットをしっかり握ってていいため面ブレがしにくく安定します(ドロップボレーはグリップの握りの弱さでボールの勢いを無くすのですが、握りを弱くしすぎるとオフセンターショットになった時ラケットの回転を握力で抑えられないため、面ブレが大きく予想より飛ばないでネットする場合があります)。

 ATPダブルスで、グランドスラム(4大大会)18勝した、ブライアン兄弟の使っていたラケットは、95インチのストリング本数が18×20本・フレーム厚22mフラット・340g・305㎜に、横ハイパーG・縦ナチュラルです。ストリング間隔は18×20本の中でもジョコビッチ(市販は100インチだが実際は95インチ)のようにかなり狭いです。ナチュラルガットを張っているといえ、横に飛びが控えめなハイパーG[レビューを見る]を張っていますし、95インチかつストリング間隔が狭いため、飛びは強くないラケットのはずです。


 ストローク中心プレーヤー

 ストローク中心の女性の方は、準コントロール系ラケットの方が、男性にも打ち負けにくかったりします。ヘッドのスピードmpを使っている主婦層の女性でも同年代の男性に打ち負けていませんでした。ピュアドライブ2021は、他の高反発性ラケットより、スピンが少ない分フラットドライブのコントロール性安定性が高いため、結構いいです。

 初心者・初級の場合は、高反発ラケットで丁寧に当てていく感じの方が安定すると思います。スポーツ経験が多い方は初心者でも準コントロール系ラケットをお勧めしています。

 男性の場合は、しっかり振っていきたい方は準コントロール系のラケットが扱いやすいためベストだと思います。その方が繊細なコントロールも、ボールスピードも出し易いのではないのでしょうか。

 サーブ重視プレーヤー

 サーブの場合、ラケットのコントロール性はストロークほど影響しません。したがって、ボールスピードは高反発ラケットの方が間違いなく出ます。

 ただ、コントロールモデルの方がしっかりコースを狙うことができるため、攻撃力が高い場合も多いです。

 サーブに関しては、どっちが良いとかはないです。正直なんでも大丈夫です。もちろんコントロール性の割に飛ばなすぎのラケットや、スイングウェイトが軽すぎて空気抵抗の割合が多いラケット(スイング速度の2乗の空気抵抗がかかる(1.2倍なら1.44倍の空気抵抗))などは、問題がありますが。




 まとめ(どのラケットを選ぶか)

 一般女性

 女性の場合、どれくらいテニスをするか、どれくらいのレベルかなどでも変わります。普通にEZONE100やピュアドライブ・ピュアアエロ・エクストリームの300gを使えるなら、準コントロールモデルを選ぶ選択肢もありです。週2以上やっている30代前後方なら、結構使える人が多いです(最初は重く感じるかもしれませんが)。ピュアドライブ2021の300gを使っている方やスピードMPを使っている方のパフォーマンスが高いイメージです。

 ただ一般の方で、285gが限度の場合は、反発もコントロール性・安定性も低いので高反発モデルをお勧めしています。

 270g以下は、 初級程度ならいいですが、反発もコントロール性・安定性も結構低いので、高反発モデルしか基本的にはお勧めできないです。デカラケも、フレーム厚や量が増えるため軽くても意外と操作性が良くなっていないので、何か意図(走れないくらいの年齢とか)がなければお勧めできないです。軽い分飛びませんし、コントロール性も良くないので。 もちろん絶対ダメというわけではないですが。


 競技女性

 学生競技者なら、準コントロールモデルの選択肢はかなり良いと思います。準コントロールモデルのラケットは、男性にも打ち負けにくいです。

 両手フォアハンドの方は、安定感があるのですが球速が出しにくいので、高反発ラケットをお勧めしています。

 また、逆にTF40 305[レビューを見る]はストリング間隔が18×20本のラケットですが、スイングウェイトが比較的軽いため、女性競技者にもおすすめです。コントロール性&安定性が高いため、アルパワー[レビューを見る]やホークなど高反発ストリングの反発力を活かせます。

 一般男性

 男性の場合、趣味の場合でも競技の場合でも、基本的にしっかり打っていきたい方が多いと思うので、高反発モデルより、準コントロールモデル・コントロールモデルがおすすめです。ボールスピードもそのほうが出し易いと思います。50歳以上なら高反発ラケットの選択肢もお勧めし始めています。

 逆に「とにかくサーブスピード命だ」というなら、高反発ラケットがおすすめです。


 男性競技者

 男性競技者は、比較的どのラケットでもいいと思います。

 最強コントロール性があるのはグラビティプロで、最強の安定性があるのはプロスタッフRF97、高コントロール・安定性で扱いやすいのがTF40 305[レビューを見る]、一発の攻撃力ならプレステージPROやピュアスト18×20などがおすすめです。





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