ボレーのグリップの握り方が厚い・薄いの違いと選び方
2021年7月23日ボレーのグリップ(握り方)は、ストロークやサーブ以上に、非常に複雑です。「どういうボレーを打ちたいのか」「壁になりたいのか・パンチが欲しいのか」。少し複雑ですが詳しく解説いたします。
正直に言って「正解」はないので、自分の求めるものから整合性を取り、選んでみてください。
ここでのグリップは、コンチネンタルグリップが包丁持ち・イースタングリップがラケットフェイスを地面と垂直にしたときに握手をするようなグリップ・セミウエスタングリップがイースタングリップとウエスタングリップの間・ウエスタングリップがラケットを地面に置き真上から握ったグリップとします。ウエスタンに行くほど厚いグリップ、コンチネンタルに行くほど薄いグリップになります。
基本型
片手フォア・片手バック
まずバック側のボールを片手バックハンドで打つ人向けのグリップです。
基本的なグリップは、コンチネンタルグリップです。
なぜコンチネンタルグリップかというと、「同じ手首の角度でラケットフェイスの向きが同じになる」・「ローボレー等低いボールに対応しやすい」・「リーチが長い(遠いボールも届く)」からです。
ただデメリットもあります。「手首が動きやすく強打できない(強打すると手首が曲がるためコントロールが乱れやすい)」、「ドライブボレーができない」などです。一番は手首ですね。
そこで、イースタングリップなど少し厚めのグリップで打つとします。フォア側の場合、そうすると手首が動きにくいため、速いボールに対し打ち負けにくいだけではなく、しっかり振って打てるため、ボレーの球速が上がります。ボールの伸びも出ます。
一方、バック側はフォア側と同じ手首の角度だとラケットフェイスが上に向いてしまいます。つまりフォア側とバック側で手首の角度を変えないといけないので、とっさのコントロールが少し難しいです。また、手首を手の甲側に振る&曲げるのは日常で行わないため力が入りにくいです。したがって、バック側は球速を出しにくいです。
前述のことを踏まえて、 個人的な一番のおすすめは、若干イースタングリップ寄りのコンチネンタルグリップです。程度は、コンチネンタルグリップが0・イースタングリップが10とすると、2~3の位置位です。ほんのわずかな差しかないようですが、意外と手首が安定します。プロはこういうグリップの方が多いです。
ただ、フォア側とバック側で手首の角度を変えないといけないので、少し難易度が上がります、したがってボレーのパンチが欲しい方向けです。最初はコンチネンタルグリップをお勧めしています。
「フォア側のボレーのパンチ(攻撃力)が欲しければ欲しいほど厚めのグリップ」「壁になりたかったり、イージーさ(安定感)が欲しければコンチネンタルグリップなどの薄めのグリップ」を選択する方がベストです。また、少し余裕があればグリップチェンジして打つという手もあります。
片手フォア・両手バック
まずフォア側ですが、前述した通り厚いグリップほど手首が動かないためパンチのあるボレーを打つことができます。ただ、厚すぎると低いボールが難しくなったり、リーチが短くなったりするため、 イースタングリップがおすすめです。このグリップならドライブボレーも打てますし。
バック側は、(右利きの場合)右手がイースタングリップ・左手がセミウエスタングリップがおすすめです。
右手ですがフォア側がイースタングリップで握っている前提です。ボレーなのでボールが打点に来るまでの時間が短いためグリップチェンジができないからです。左手ですがコンチネンタルグリップなど薄いグリップで握ってしまうと、左手の手首の可動域の影響で、ラケットが立っているときに面が右側に向いてしまうことと、ボディへのボールを打ち返すことが難しいこと(やってみれば分かります)によりお勧めしません。一方、ウエスタングリップなどの厚いグリップですが、低い打点への対応の難しさや、リーチの短さからお勧めできません。イースタングリップもコンチネンタルグリップと同様で窮屈さがあります。したがって、セミウエスタングリップが一番守備面積が広くおすすめしています。
+α
右手をコンチネンタルグリップにするのは、フォアボレーのパンチ力がなくなりますが、リーチは長くなります。あまりお勧めできないのですが(意図的に使うなら別)、どうしても届かないようなボールでも左手を離して片手を伸ばせば届くようになる場合も多いです。リーチが足りない場合や、片手ボレーだとラケットの操作性がつらい場合は、この握り方をためしてみるのも良いでしょう。
応用編
ドライブボレー
少し余裕があるボールの時や少しベースライン側で打つ時、しっかりトップスピンをかけて打った方が攻撃力が高いです。
したがってそういう時は、普段ストロークを打っているグリップで打った方が慣れているため安定してパンチのあるドライブボレーが打てます。
余裕がない時のアングルボレー
余裕があるときはアングルボレーがしやすいですが、少し遠かったりボールがきついコース来た時は打てるコースが限定されやすいです。
その時に、コンチネンタルグリップなど薄いグリップで握ることによって、手首のスナップを使えるため、通常だったら振り遅れるボールでもアングルショットを打てたりします。
両手バックのグリップでのボレーは、フォア側とバック側両方ともパンチのあるボレーが打てるというメリットがありますが、片手でも打てるように練習してもいいと思います。
片手バックボレー時の左手
片手バックの方は、必ずスロート部分(三角形の部分)を左手で持ち、ラケットフェイス面の向きを安定させたほうが良いです。プロは必ずと言って良いほどやっています。これだけでかなり安定感が変わります。もちろんボールが遠すぎて左手が使えない場合もあります。
持ち方としては、親指と残りの指4本でスロート部分を挟む握り方(フェデラーなど)や、親指と小指側から3本の指でスロートを挟み、人差し指はストリング(振動止めの下)に当てる握り方(ティエムなど)があります。どちらを選ぶかはやってみて決めてください。人差し指を当てた方が握りのずれは少なくなります。ラケットの操作性は当てない方です。
おまけ
握る位置
ラケットを握る位置は基本的にグリップエンドです。上級者になればなるほどボールがきついコースにくるのでリーチの長さは必須です。
ただ、ラケットの操作性がつらい場合や、手首の筋力が少なくラケットが弾かれパンチのあるボレーが打てない場合は別です。少しだけ短く握ることにより、ラケットが弾かれにくかったり、操作性が良くなったりします。両手バックの時は左てだけ少し短めに持つと良いです。
したがって、リーチとボレーのしやすさの整合性を取ってみてください。
ボレーに適したラケット
グリップの握りではないですが、おまけなのでお許しください。
「ボレーに適したラケット」と「ストロークに適したラケット」は、すべてが違うということはないですが、別物です。ボレーは相手が打ってから自分が打つまでの時間がないため、ラケットの操作性が重要です。
ラケットの操作性は、スイングウェイトだったり空気抵抗だったりといろんな要素がありますが、一番は「モーメント」と呼ばれるものです。
テニスラケットは握ったときの手のひらのど真ん中(グリップエンド側で握った場合グリップエンドっから約5㎝の位置)を支点として、シーソー状態になっています。グリップエンドに荷重することでラケット先端の重さを実質的に軽減できるためボレーがしやすくなります。逆にグリップエンド付近の荷重をなくすと実質的にラケットヘッドが重くなるため、ラケットヘッドを動かすにはより大きな力が必要となり、操作が難しくなります。(詳しくは別記します)
つまり、リーチが長い片手でボレーを打ちたいけど安定しないから両手にしてる場合、グリップエンドに荷重することで片手でもボレーがしやすくなります。両手の場合も操作性が上がります。
「振り抜きがつらい」からこそ荷重することで非常に使いやすいラケットに変えることができます。正直に言ってかなり変わります。
特に軽いラケットは、ラケットヘッド側の総重量が重いためかなり効果があります。ただ、バランスポイント(32.0㎝など)と操作性はリンクしません。あくまで支点からの左右の重量バランスです。
また、薄ラケなどコントロール性が高いラケットの方が、伸びや繊細なコントロール・安定感が高いです。ダブルスの名手ブライアン兄弟も95インチのストリングが18×20本のコントロール系ラケットです。コントロール系ラケットは確かに飛ばないですが、高反発ラケットはコントロール性が良くなくより多くの余力が必要なため、コントロール系ラケットでもボールスピードはそこまで下がりません。
逆にピュアドライブなど高反発ラケットは、伸びや繊細なコントロール・安定感は高くはありませんが、当てるだけで返るので、壁になれます。体力的には圧倒的に楽ですし。
まとめ
ボレー時のグリップは基本的に、片手バックの場合は、コンチネンタルグリップで、ボレーのパンチが欲しい場合は少しイースタン寄りのコンチネンタルグリップ・両手バックの場合は、リーチが短いですがパンチが出せるため右手がイースタングリップ、左手がセミウエスタングリップがおすすめです。
余裕があるときは、ストロークと同じ握りにグリップチェンジして、攻撃力の高いドライブボレーを打つと良いです。