わざわざ軽いラケットを買い,加重すると性能がずば抜ける!(テニスラケット)
2022年1月18日テニスラケットを買うとき、わざわざ通常モデルより軽いラケットを選び、それをカスタム(重りを付ける)することによって、同じ重量でもラケットの性能が通常モデルより高くなります。
この手法は、ジョコビッチや大坂なおみ選手が意図的に行っている手法で、意図的な位置に適切な荷重をすることができるため、強打した時の安定性や、ラケットヘッドの操作性を高次元で両立できるようになります(通常は両立しない)。
ラケットの操作性を上げるカスタム
テニスラケットの操作性を決める要素は、「空気抵抗」・「静止重量(モーメント)」・「スイングウェイト(慣性モーメント)」・「遠心力」の4つです。
「空気抵抗」に関しては基本的にはどうにもならないのでここでは触れません。また「遠心力」については、遠心力が働きラケットが体から離れるほどラケットだけではなく腕も含めたスイングウェイトが増えるのですが、あまり重要ではないのでこちらも触れません。
次に、テニスラケットの「スイングウェイト」ですが、大きくなればなるほど反発力は強くなりますが、操作性が落ちます。物理用語で「慣性」と言い、基本的には、重量が重くなればなるほど、加減速が遅くなり、逆に軽ければ軽いほど加減速が速くなります。もっと簡単に言えば、F1カーと20トンのトラック加減速の速さです。もちろんF1の方が車重が軽いため、加速も減速も速いです。テニスで当てはめると、スイングウェイトが大きいほど、ラケットの加速が遅くなるため、振り遅れやすいです。(※「軽いほうが操作性が良いから軽ければいい」とはならないです。)
最後に操作性を語る上で一番重要な「静止重量(モーメント)」です。シーソーを思い浮かべてみてください(今はほとんど見ないかな?)。体重差があっても乗る場所を変えることによって、シーソーが成り立つと思います。シーソーが分からない・イメージできない方は、洗濯者干しでイメージすると分かりやすいかもしれません。同じ重量の洗濯者でも端に干すと洗濯物干しが大きく傾き、中央付近に干すと少しは傾きますが大きくは傾かないはずです。つまり、同じ重量でも支点から遠くなればなるほど、下向きの力が強く働くのです。そこで、支点の逆側に荷重をすることによってその下向きの力を相殺できます。
まずモーメントの計算は、距離×重量です。このことを踏まえて、この図で説明すると、支点から左側のモーメントは、5×10=50(単位は無視で)で、右側の?に荷重がない場合は、棒が左回転します。この回転を押さえるには、?の位置を手で、5×10=20×?なので?=50/20=2.5の力で押す必要があります。
しかし、?に1.5のおもりを掛けると、左回転に50の力がかかっているのに対し、右回転に30の力がかかっているため、棒は左回転方向に50-30=20の力がかかります。そうすると棒の長さが20mなので、20(力)/20(棒の長さ)=1となり、回転を止めるための力は1で良くなります。
この原理をテニスラケットに当てはめると、男性の場合グリップエンドから4㎝の位置あたりが支点となるため、グリップエンドに荷重することによってラケットヘッドのモーメントが軽くなります。その結果、操作性が上がっているのです。
操作性に難が無ければ、以下で述べるコントロール性&安定性&スイートエリアの広さ&反発性を上げるカスタムもできるようになるので、よりテニスのパフォーマンスが上がります。
ただ、操作性を上げるためにグリップエンドにめちゃくちゃ荷重すれば良いということにはなりません。ラケットのモーメントの重要性も確かなのですが、体からラケットヘッドのモーメントも大切です。グリップエンドが重すぎる場合腕が上がらなくなるため、バランスも重要です。だいたいバランスポイントが305~325㎜の範囲内がいいと思います。男性の場合310~315が一番扱いやすいと思います。女性の場合は315~320が一番扱いやすいと思いますボレー中心の方や片手バックの方は少しトップライト(バランスポイントが小さめ)がおすすめで、ストロークプレイヤーはトップヘビー気味(315や320)がおすすめです。(下記のコントロール性安定性を上げるカスタムを含むバランスポイント)
コントロール性&安定性を上げるカスタム
テニスラケットのフェイスの3時&9時側の荷重は、慣性モーメント(スイングウェイトとは別の)によって面ブレを防ぐ効果があります。
その証拠に、ジョコビッチや大坂なおみ選手が重りテープを使い意図的に荷重をしています。また、フェデラーや錦織選手のラケットについているPWS(周辺加重機構)が付いていますし、黄金スペックなどのフレーム厚が23-26-23㎜と真ん中だけ膨らんでいるのもその慣性モーメントが必要とされている証拠です。※黄金スペックのラケットは、面ブレを防ぐ慣性モーメントが大きいが、スナップバック量が多いため荷重が多くても面ブレが起きやすく、コントロール性が低い。
面ブレを防ぐ慣性モーメントは、「距離の2乗×重量」です。重量が同じでも距離が1.2倍になれば、面ブレ抑制効果は1.44倍ですつまり、ラケットのど真ん中からできるだけ遠くに重りテープを貼ったほうが効果が高いのです。ラケット内に注入されているウレタンだと、意図的に外側に荷重できないため、ジョコビッチや大坂なおみ選手(2人とも特注)は、わざわざ軽いラケットを作らせ、重りテープで面ブレを抑制する慣性モーメントを上げているのです。もちろんめちゃくちゃ重いラケットにすれば慣性モーメントが大きくなり面ブレがしなくなりますが、振り抜けません。重りテープを使う方が重量対効果が高いのです。
荷重によってどれくらい効果があるかですが、0.5gを前後左右の4か所計2gだけでも(スイングウェイトは10位あがってしまう)、繊細な人にとってはかなり大きいですし、分からない人も多いと思います。一般的には「なんとなく良くなった?」が多いのではないでしょうか。個人的には2連続しか打てなかったショットが5本6本連続で入るようになりました。分からなくても間違いなく、コントロール性や安定性が上がっています。
その他のメリット
「コントロール性&安定性を上げるカスタム」は自動的にスイングウェイトが上がるため反発力が上がります。
また、面ブレも抑制できるので、オフセンターショットをしてしまっても、「飛ばない」やアウト&ネットが少なくなります。つまりスイートエリアも広がっているのです。
振り抜きに関してですが、2gの荷重でもスイングウェイトが10位上がってしまい、操作性が少し落ちます。ただ、ラケットのコントロール性や安定性が上がると、余力を少なくしても問題ないため、意外と重いラケットでも使えたりします。
また、飛びも強くなっている上コントロール性&安定性も高くなっているため、丁寧に打ったり、脱力して打ったりでき、その結果、繊細なコントロールができたり、けが防止にもなります。
備考
重りテープを2時&10時や12時側に貼る
重りテープを2時&10時や12時側に貼ることについては、あまり推奨しません。理由としては反発力が増えてもコントロール性が少なければ、その反発性を生かせないからです。
ただ、3時&9時の位置とグリップエンドに荷重してみて、どうしても「静止荷重を上げずに飛びだけ欲しい」という方には、12時側に貼る方が良いです。妥協案的ですが。
重りテープをグリップ全体に貼る
「操作性を上げるためにグリップ部に荷重をする」という方に多いのがグリップ全体(元グリの内側)に多量の重りテープを貼ることですが、確かにグリップ部が重いことによって、慣性(静止している物体は静止し続けるという性質)が働き、遠心力によってラケットが体から離れていく現象は、軽減されます。ただ、モーメントや静止重量が増えることによる操作性の低下が起こるため、できるだけグリップエンドに荷重をすることをお勧めしています。
まとめ
具体的な調整方法ですが、基本的には「どっちかからやる」ということをしても、後に行う方のカスタムによって前に行ったカスタムの間隔が変わる場合が多いため、基本的には同時です。グリップエンドの荷重は硬貨をセロテープでグリップエンドキャップに付け、コントロール安定性を上げるカスタムは、直接重りを付けていきます。
具体的な調整方法以下のリンク先をご覧ください。
また、現在使っているラケットも、カスタムすることでパフォーマンスが上がる場合も多いです。見た目的にカスタムが嫌な方も多いですが、結構パフォーマンスが変わるため、行ってみると面白いです。